今日も僕はいつものように朝のランニングをしている。


どうして始めたかといえば、自分を鍛えるためにやっている。


けど、一番の理由はこのきれいな朝焼けを見るためだった。


この瞬間が一番好きだ。自分が生きている感じがするから。


おっと、もうこんな時間だ。早く帰らないと朝ご飯の準備が間に合わなくなってしまう。


そうしたら、同居人に何を言われるか。


さて、早く帰って朝ご飯の準備だ。



R・E・I
第1話・〜僕の守護天使!?〜



「ただいまー。」


少しボリュームを下げたシンジの声が静まり返った家に響く。


そのままキッチンに移動し朝ご飯を作り始める。


トン トン トン


ぐつ ぐつ ぐつ


ちり ちり ちり


(いつからかなこんな風に誰かに料理を作ってあげたりするのが楽しいなって思えるようになったのは・・・。
たぶんここに来てからだな。)


そして、おかずなどが8割ぐらいできたところにいつもどうり同居人が起きてきた。


「おふぁゃう、シンちゃん。」


「おはようございます、ミサトさん。」


彼女の名前は葛城ミサト。第三新東京市立第2中学校の社会科教師をしている。


外見は20代後半とはおもえないようなナイスバディなのだが、中身はおやじというものすごい女性である。


彼女はシンジの両親が自分の父親の古い友人で、その縁もあってシンジを預かることになった。


なぜシンジが朝食を作っているかといえば、彼女自身は女性とは思えないほど生活力が無いのである。また、彼女の作る料理はシンジを危うく三途の川をわたらせる寸前まで追い込み彼を恐怖に陥れるほどものすごいものであった。


そのため、料理はもちろんその他家事一般はすべてシンジがおこなうようになったいた。


「シぃンちぃゃん、今日の朝ご飯のめにゅぅはなぁにぃ?」


頭がまだ半分寝ているらしい。舌が回っていない。


「きょうは、ほうれん草のお浸しのとろろかけにサンマの塩焼き、あと味噌汁にオカカのふりかけですよ。」


シンジは和食派で母親のユイにもそちらの方を主に習っていた。だが、和食だけでもなく洋食のほうもかなり出来るのでレパートリーには困らなかった。


「いつもながらすごい朝食ね。シンちゃんのお嫁さんになるひとは幸せね〜。」


と、言いながらミサトはいつものように牛乳をパックで飲み始めた。


「ミサトさんこれぐらい出来ないと加持さんと結婚してから苦労しますよ。」


ぶぅっ〜〜〜!


ミサトは、急に加持の名前を出されたため飲んでいた牛乳を吹いてしまう。


「なっ、なんで加持の名前が出てくるのよー!!!第一ね、な・ん・で!あいつと結婚しなきゃいけないのよ!」


「加地さん以外嫁の貰い手なんてないと思いますよ。あと、ミサトさん鼻から牛乳を垂らしながら言っても説得力無いですよ。」


案外さらっと言ってしまうシンジ。


ミサトは鼻を拭きながら、


「もう、ったくそんなきぃっついこと平然と言うし。でも…、シンジ君変ったよね。」


「そうですか?自分では実感無いですけどね。」


「私はとても変ったと思うわよ。ここにきた時なんかおどおどして、頼り無さそうでそんな感じしかしなかったもの。けど、このごろのシンジ君は生き生きしていて前より明るくなったわよ。」


ミサトに言われて事も何となくは分かる。昔は人付き合いも悪くおどおどしていて何も自発的にはやらなかった。そうなった理由も自分では分かっている。けど、前はそんなことを気にも留めていなかった。けど、ここに来てからは状況が変わった。

自分の知る人もほとんど居ないし、前に住んでいた場所とも環境が違う、だから何でも自分で行動しなければならなかった。そのため、シンジは今までとは違い積極的に友達をつくろうともしたし、色々な活動にも活発に参加するようになっていた。

また同年代の子供よりも少し体格の小さい彼は、昔合気道の道場に5年間通っていたこともあり、半年前から家の近くの古武術の道場に通い体を鍛えたりするようになった。


「そういわれてもやっぱり実感ありませんよ。でも、ミサトさんが言うんだったら間違いないと思いますけど・・・。」


急にしんみりし始めたのでミサトがそれを吹き飛ばすように、


「さー、こんなしんみりしないで今日もパーっと行きましょう!!!」


「そうですね、朝からこんなんじゃ今日1日がもったいないですからね。」


「そうよ、シンちゃん。さあ、今日も張り切っていきましょう!」


ぐぅ〜〜〜


「まっ、まあその前に腹越しらえね。」


おなかがなったことを隠そうとするかのようにミサトが言った。


「そうですね。ミサトさんのおなかもそう言ってることだし。」


しっかり聞こえていた。


かちゃかちゃ


もぐもぐ



食事を終えて、後片付けを始めるとシンジが思い出したようにミサトに、


「じゃあミサトさん、今日は道場に行く日なんで少し遅くなりますから、いつも通り7:00ごろにしますね。」


「オッケー!じゃあ、あたし今日は教員講習があって学校にいかなければならないから戸締まりとかよろしくね!」


「わかりました。あっ、ミサトさんそろそろ時間ですよ。」


「やば、そろそろ行かないと。行ってきますシンちゃん!」


「行ってらっしゃいミサトさん!」


そしていつものようにシンジはごみの分別、部屋の掃除、風呂掃除などを始めた。


あらかた片付いて時計を見ればだいぶお昼に近い時間帯になっていた。


「はやいけど、お昼にしよう。」


シンジは昼食を済ませると、少し早いが今日の目的である古武術の道場に向かった。








一方そのころ・・・









人界西方面境界線付近





所変わって、ここは人界の境界線の中でもっとも危険な区域、西方面である。


この区域は天使達にとってもっとも守り通さなければならないところである。それは、ここが人界に入るためにはもっとも最短のルートだからである。天使達ならまだしも、魔物達がこの区域を悪用した場合における人界の被害は想像を絶するものとなろう。
そのためここには聖光界の四方護天使実力ナンバー2である【風の天使 レイ】がその守りをしていた。


ところがこの日はいつもと違っていた。


いつものようにこの境界線の守りをしていたところ、レイにディルマインド(緊急思考波)が送られてきた。


「誰、どうしたの?」


「レイ様!こちら第9哨戒隊隊長セディスと申します!緊急事態が起きました!我々の哨戒していた南西境界線付近に突如敵の大軍が現れ戦闘状態となりました。すぐに他の部隊を呼びなんとか三分の二は撃退しましたが、残りがそちらのほうに向かっています。数は大体100体ぐらいです。至急迎撃態勢を整えてください。こちらからもすぐに追撃いたします。あと、そちらに一番近い第2戦闘部隊に援軍の要請をしました。まもなく到着すると思います。」


「そう、わかったわ。第2戦闘部隊がこちらに到着しだい態勢を整えて敵を迎撃します。あなたがたも気をつけて。死んではだめよ。」


「ありがとうございます。それではレイ様もお気をつけて。」


珍しいことである。今まで魔物は聖光界に攻撃を仕掛けてきたことはあったが、境界線のしかも1番守りの堅いこの西方面に現れたのはここ最近では今回が初めてだった。さっきの哨戒部隊のセディスの焦りようもよくわかる。それだけ緊急の事態なのだ。


レイは考えもそこそこに自分の思考中に到着した戦闘第2部隊の隊長アルテナに詳細を説明し、部隊に対して的確な指示を与えていった。


「敵は大きな部隊で動いている以上大半は戦闘魔軍の魔物が多いでしょう、また機操魔軍の魔伝導騎も混ざっている可能性があるので対巨大兵器用の兵器も用意してください。あと、知賢魔軍の精神攻撃や妨害の可能性もあります。そのためこちらの部隊の一部をスキャニング(索敵)にあてます。敵の妨害を察知し次第撃破してください。最後に、みんな死んではだめよ。」


レイがナンバー2である理由は、彼女の恐ろしいまでの現状分析能力とそれを基とした作戦の立案である。
戦闘能力においても四方護天使中では一二を争うのにそれに加えてこの能力である。そのため、レイがナンバー2なのは聖光界の誰もが黙認していることなのである。


そして、迎撃態勢が9割ぐらい整ったところへ敵の部隊が進行してきた。


レイは敵の数を見て勝てると思った。あいての部隊100体ぐらいであった。案の定、魔伝導騎も混ざっている。こちらの部隊の数は戦天使が25、異能天使が3、そして四方護天使である私がいる。これだけの戦力があればまず負けることはないだろうと思った。


ところが、今回の敵は違っていた。まず、敵の形がほとんど一緒のものが多いことであった。これは今までの経験からいってまずありえないことだった。魔物達はそれぞれがまったく違う生き物なので同じ種類のものがいたとしても大体2種類ぐらいである。ところが今回は100のうちの80ぐらいがそうであった。さらに、敵の行動が今までと違っているのである。敵は戦闘を仕掛けるどころか一斉に境界線を越えようと突っ込んでいく。迎撃態勢は万全だったが、なんせ勢いが違った。天使達の部隊は何とかもってはいるがかなりきつい状態であった。そして、とうとう敵は天使達の間を擦り抜け境界線へと向かっていった。


その事態によってレイは重い決断をした。


「私がEVAを使います。あなたがたは人界境界線ぎりぎりまでの巨大なA・Tフィールドを作成して下さい。
もちろん中に私を入れた状態で作成して下さい。そして、その中に入った敵を私がEVAの力で一掃します。
ですが、EVAはあまりに強力です。そのため、EVAによって発生したエネルギーを閉じ込めることはそのA・Tフィールドのコントロールしているもの全員に恐ろしいほどのダメージを与える可能性があります。
ですから、私がEVAの力を解放し、2分たったらフィールドを開放して下さい。私は1分半で敵をせん滅し、そして残りの30秒でEVAで発生したエネルギーを押え込みます。そうすればあなたたちに与えられるダメージを少しは緩和できるはずです。では、後の指揮はアルテナあなたにまかせます。いいですね?」


アルテナは無言で頷いた。結局この状況になってしまっては自分達の力は無に等しい。そのため四方護天使であるレイがEVAを使うことになるのは誰でも予想がついた。結局自分達にはA・Tフィールドを張ること以外することは無かったのである。


それを了解の合図だと察しレイは敵を追撃しだした。


「レイ様、どうかご無事で・・・。」


アルテナの呟きは誰にも聞かれることはなかった。


「全員、思念集中!」


アルテナの掛け声とともに全員の思念が1ヵ所に集まりだす。


そしてあっという間にパワーソース(A・Tフィールドなどを発生させるエネルギーの元)を作成させた。


「いくぞ!A・Tフィールド!!!


そして、アルテナの最後の掛け声とともに一気にパワーソースが別のエネルギーへと変換され、人界境界線までの巨大なA・Tフィールドを作り上げた。


「ちゃんとやってくれたようね。ありがとうみなさん。ここからのわたしのしごとね。」


レイはそう言うと自分の精神を集中させていった。EVAとは天使の中でも高天使以上の天使の中でもごく僅かの者しかつかえない強力な戦闘能力であった。具体的には自分の精神力を具現化して自分にあった装備を生成する能力である。聞けば単純に聞こえるかもしれないがこれほど恐ろしい能力はない。なにせ、精神力をもとに生成するのでその強度や威力はほぼ限界が無い。しかも、この世に存在する物質で構成されているわけではないので重さも無いに等しく、さらに自由自在に形を変えることが出来る。つまり、EVAとはこの世に存在する最強の武装なのである。


先ほどこのA・Tフィールドに閉じ込められた魔物は出口を探していたが、出れないことが分かるとこのフィールドの中央に存在する大きな力を持つ存在へと目標を変えた。そして、魔物達がその存在に攻撃を加えようとした瞬間レイのEVAが発動した。


「EVA00発動!!!」


次の瞬間彼女からものすごい光が発生し、周りに近づいていた魔物が数体消し飛んだ。


だんだん光がおさまっていく。そこには人界の空のように澄んだ青の鎧をまっとたレイの姿があった。


ストームセイザー!!!


彼女の声とともに右手に風が収束していく。そして瞬く間にそれは完成された。いま、彼女の右手には一振の剣が握られていた。
その剣は透き通った緑色をしておりその刀身の部分は向かいが透けて見えるほど薄いものだった。


「はっ!」


ズバッ


彼女はその剣を右横に薙ぎ手近な魔物を真っ二つにした。


ウォォォーーーン!


斬られた魔物は断末魔の悲鳴を残し消滅した。


そしてそれが開始の合図となり次々敵を切り裂いていく。とにかく自分の視界に入ったものは次々塵になっていった。だが、最後の5匹は他の魔物と違い体格も大きく下手に攻撃を仕掛けることが出来ない。だが、時間は刻々と迫っている。


「フィールド開放まで後20秒しかない。どうしたら・・・。」


一瞬の思考の後レイは最後の賭けに出た。それは、EVAによって生成されたこの剣に光力(天使達の力の源。ファンタジーで言う魔力のようなもの。)を込め増幅し、それを媒体にしてラヴァス(天使の使う魔法のようなもの。効果は多種多様。)として打ち出すことである。

だが、これは大きなリスクを伴う。まず第1に集中が遅ければ敵に攻撃されてやられてしまう。第2にラヴァスは普通に使っても強力なものだ。それを更に増幅して使うなどしたことはなかった。この2つがこれを行ううえでおうリスクだった。

そんなことを気にもとめずレイは集中を開始した。その集中は本人からすれば1分にも3分にでも感じられただろうが、魔物達にとってはほんの数秒にも満たない時間であった。そして、魔物達が一斉に攻撃を仕掛けた瞬間それは発動した。


サイゼムストーム!!!


レイのラヴァスの発動と同時にものすごい気体の収束がおこり、その収束された気体は最大収束された瞬間に弾け大きな嵐となってA・Tフィールド内を暴れまわった。さすがに巨大だった敵もこの攻撃の前には無力に等しかった。そして、次々と嵐に飲み込まれていった・・・。


しばらくして嵐は治まり、ちょうどA・Tフィールドの開放時刻となった。


だが、レイや他の天使達も思いもしなかったことが起こった。


レイはEVAとラヴァスの併用した場合の体力の消耗を考えていなかったのである。確かにとっさの判断でしたこととはいえ、普通に考えたら大体察しがつくようなものである。レイは体力が切れ浮力を失いものすごい速さで落下していった。


「レイ様ー!!!」


あとには、アルテナのむなしい叫びと第2戦闘部隊だけが残された。










場所を人界へ戻し





シンジは昼食を摂ってから、稽古に来ていた。それは、今まで半年間続けてきたことであり、またこれからも続けていくであろう習慣となっている。実際には今日は休日なので普通なら稽古をしないのだが、シンジが1ヶ月半ぐらい前から師匠に頼んで使わせてもらっていた。


はぁーはいっ!


いつもの通り呼吸法から入り、型の練習へと移り一通り終わらせる。


次に、基本の拳(パンチ)の練習と蹴(キック)の練習を並行して行う。


はっ! はっ! はっ!!!はっ! はっ! はっ!!!


はいっ! はいっ! はいっ!!!はいっ! はいっ! はいっ!!!


そして次々にメニューをこなしていく。連続攻撃、反衝(カウンター)、投げへと移り終わらせた。そして、少しの休憩に入る。


この道場に入ったばっかりは体力が落ちていて基本の型を終わったら体力は少しも残っていなかった。おかげで、道場の先輩達に何度家まで送られたことか。だが、昔やっていた合気道のこともあって腕前はめきめきと上達し、今では道場の師範代クラスの実力である。もしかすれば師範代よりも強いかもしれなかった。


そして、休憩が終わるとシンジは今日の目的のものの練習へと移った。まず、自分の前方5メートルにローソクを立てて火を灯す。そして元の位置に戻って呼吸法を取り始める。


はぁぁーはぁーはぁぁーはぁー。 」


まずは慎重に呼吸を整えていく。この段階で失敗すれば何もできないのだ。しばらくするとシンジの呼吸が穏やかなものになり部屋の空気がだんだんと張り詰めていく。さらに、シンジの前方5メートル先にあるローソクの炎が揺らぎ始めた。それは、シンジの体に気が溜まり込んできた証拠であった。気の固まりが空間に存在するときには周りの空気の密度まで変わるのである。そして、何度目かの呼吸の後シンジの気が開放される。


はっ!!!!!!


次の瞬間シンジの5メートル先のローソクの炎が消し飛んだ。これは、今シンジのやっている天人(あまと)流古武術の奥義の一つ 『気竜』と言い、自分自身を気の貯蔵するための器とし、その器が満たされると同時に気を開放するものである。なぜこの 『気竜』という名前がついているかと言うと口伝ではそれを極めたものは金色の竜を放つようになるためだそうだ。でも、シンジにとってはここまでできただけでも十分満足している。口伝の謎よりも達成感のほうが大きいようだ。


そして、今日のノルマを達成したためシンジは帰り支度を始める。いつものように神棚へ構えを取って礼をしそれから道場の掃除をする。家でやっている掃除とは違うが何回もやっているため簡単に終わってしまう。最後に着替えをしてから道場を出て行く。あと、外に出てから道場に向かって、


「ありがとうございました!」


と言い帰宅した。


シンジはいつものように暗くなった道をゆっくりと歩いて行く。家までは大体10分ぐらいなので走れば簡単についてしまうがシンジはいつもこうしている。そして、5分ぐらい歩いただろうか。ふと近くの茂みのあたりが明かるいのに気がついた。


いつもあんな所に明かりはついていなかったし、第一とても不自然であった。シンジは、何の明かりなのか興味半分で見てみることにした。


そろり、そろり、・・・


だんだん距離が近くなって行く、 3メートル、 2メートル、 1メートル、 そして茂みのところまできた。


シンジは覚悟を決めるとその中を覗いてみた。


そこには全裸の女性が横たわっていた。髪は空のように澄んでいて体は薄いクリームのような色だった。シンジは彼女を凝視しているのに気づいて顔を真っ赤にしてしまった。だが、もう一度視線を戻すと彼女は明らかに苦しそうに息をしている。シンジはそのことに気づいて彼女に自分の羽織っているものを袖を通して着せて前をとめてしばらく様子を見た。3分ぐらいたっただろうか、シンジは彼女の容体がよくならないのでどうしようか迷っていた。ところが、シンジは他のことにも気づいてしまった。夜にこんな茂みで上をほとんど着ていない男と、半裸の女性が一緒にいたらどういう風に思われるか。一瞬、真っ青になるとシンジは慌てて彼女を家に連れて行く準備をし始めた。を


まず、彼女に自分のはいているズボンをはかせた。自分はショートパンツのようなものを下にはいているので問題ない。そして、服をきっちり直すと彼女を負ぶった。


彼女を負ぶってまず思ったことは、{柔らかい・・・}ということだった。彼女は着やせするタイプなのかもしれないが、シンジはその柔らかい感触でどきどきした。それに、言い匂いがする。なんだか母親を思わせるような匂いだった。


しばらくその感触に耐えながらシンジは無事家に到着した。ミサトはいつもどおり帰って来てなかったので彼女を自分の部屋に連れて行った。そして、布団の上に寝かせ自分の使っているパジャマに着替えさせた。


「どうしてこんなに動かない人を着替えさせるのは手間がかかるのだろう。」


そう思いながらも、またその女の子の裸を見てしまいどきどきするのであった。


「よし、後は熱があるようだからタオルで冷やそう。」


そして、風邪のときに使うタオルや氷枕を持ってきて氷枕を後頭部へ置き、濡らタオルをおでこへととのせた。状況が一段落したのでとりあえず夕食の準備を始める。


「今日は何を作ろうかな?」


こんな時でもシンジはやはり主夫であった。


そのころレイは目を覚ましていた。2、3度目を瞬きさせると自分の知らない場所であることが分かった。レイは状況を理解しようと今までのことを思い出してみた。


[確か、戦闘状態となり撃退が難しくなって私が第2戦闘部隊の生成したA・Tフィールド内でEVAを使用して敵を撃退して・・・。そうだわ、その後極限の消耗状態となって気絶したんだ・・・。]


さらにレイは大変なことを思い出す。


[ということはその後そのまま落下したことになるのよね。つまりここは・・・。]


そこまで考えて顔の血の気が一気に引くような気がした。今まで、ほとんどの者が人界に干渉しないように守りについていた自分が人界に干渉してしまうとは・・・。しかも、ちょっとした干渉ではなく完全干渉である。レイは自分の体が明らかに今までとは違うことに気がついていた。意識を集中しても光力が体に集まらない。集まっても大体20%くらいのものである。いつものように体にみなぎるものがないのである。


[でも現状を知るには情報が少なすぎる。]


レイはそう思って布団から起き上がろうとしてあることに気がついた。


[これは誰がしてくれたの?]


それはシンジがレイの熱っぽいのを気にしておでこにのっけた濡れタオルである。さらに自分の頭の下がひんやりするのにも気がついた。


[気持ち良い・・・]


レイはそのひんやりした感じがとても心地よかった。いろいろなことを考えすぎて自分のすぐ側の感じに気がついていなかったのである。それは、ひさしく味わっていなかった母の感じに似ていたのだった。


・・・・・・・・・


レイはしばらくその心地よさを味わっていたがやはり現状を調べなければならないと思い早速行動を起こした。


ガバッ

・・・・・・

てく てく

くらっ



「あっ!」


レイは勢いよく起きようとしたのだが、急に立ち眩みがして倒れそうになった。近くのものにやっとの思いでしがみついて倒れるのを防いだ。


「やはり体力を消耗している・・・。」


もし、レイがここで魔物に襲われればどうすることもできないのである。体力は消耗し、しかも通常の20%の力しか出せないのである。どう見ても勝ち目は薄いのである。そのため、レイはここがどこなのかを調べる必要があると思い目の前の扉のようなものを開けた。


扉を開けるとすぐに左のほうから何か物音がする。レイは警戒しつつその音のする方向へと向かった。


そこには自分の背丈より少し大きい男の子が何かをしている。レイは何をしているか確かめようとその方向に近づこうとした瞬間、近くに立てかけていたものを倒してしまった。


どたん!!!


その瞬間、レイは殺されると思った。これだけ消耗すれば誰にだった殺せる。自分の命は風前の灯火だと思った。そして、レイはゆっくりと目を瞑った。


次の瞬間自分をゆするものに気がついた。


ねえだいじょうぶ?しっかりしてよ!死んじゃだめだよ!


男の子は泣いていた。自分が痛いわけでもないのに泣いていたのである。それは自分を心配して泣いているのは状況からして明らかだ。レイはその泣いている男の子に対して、


「泣かないで、私は生きてるわ・・・。」 と、


弱々しくも言った。


「よかった生きてるんだね。本当に死んだと思ったよ・・・。」


レイは心配そうに自分を見ている男の子に、


「ここはどこなの?」と、


聞いた。


「ここは僕の家で、コンフォート17というマンションだよ。」


「そうではなくて、ここは何という界なの?」


シンジは女の子の質問に首をかしげながらも、


「世界というものの中の日本という国だよ。」と、


子供にも分かるように説明した。


「やはりここは、


レイが言いかけた瞬間また目眩がした。シンジは、


「とりあえず休んだほうが良いよ。今から何か作ってあげるから!」と言い、


満面の笑みを浮かべた。


レイは少年の笑顔がとても心地よかった。その心地よさがあの濡れた布のようなものや冷んやりとした袋のようなものから感じられたものと一緒だった。


「私の額にのっていたものや頭の下に敷いていたものは貴方がしてくれたの?」


「そうだよ。とても熱があったから冷やさなきゃと思って。」


レイはこの少年が自分に危害を与える者ではないことに気がついた。あかの他人にここまでよくしてくれる人が魔物の手先や魔物であるはずがないと思ったからだ。そして、そのことに気がついた直後、


「じゃあ部屋まで行こう。僕が肩を貸してあげるから。」


「ありがとう。優しいのね貴方は。」


「そうでもないと思うけど、苦しそうにしている人がいたら助けるのが普通だと思うよ。
それに、それが君みたいにかわいい子だったらなおさらだよ。」


そう言うと少年顔を真っ赤にしながらレイに肩を貸した。


そのまま言葉もなく二人は部屋へと向かった。


レイは少年の肩を借りながら考えていた。


[私がかわいい・・・。仲間の天使達にもそう思われたことはなかった。あくまで私は他の天使達の崇拝の対象ではあっても好意の対象とは言いがたい。この少年はこんな私がかわいいと言う。わからない・・・。]


少年はレイを連れて部屋に入ると彼女を布団に寝かせた。そして、さっきレイが下に落としていった濡れタオルをもう一度濡らし水をよく切ってそのタオルをレイのおでこにのせた。そのあと少年は唐突に話を始めた。


「そう言えば、君の名前を聞いてなかったね。名前はなんて言うの?」


レイは先ほどから少年の態度や人柄を見てこの少年なら何を話しても良いと思いすべてを話してみることにした。


「私の名前はレイ。聖光界と呼ばれるところからここにきました。正確にはバストーナと呼ばれるところの人界境界線から落下してきました。」


シンジは首をかしげた。この少女が嘘をついているようには思えない。だが、それを信じるような要素も何もないのである。そのためシンジの頭の上には?マークがたくさん浮かび上がっていた。


「急に信じてくださいといっても無理だと思います。私もここが人界であるとは最初は思いませんでした。ですが、貴方にあって話を聞いてここが人界であると確信しました。」


「じゃあ、この世界以外の世界が外の空間にあるの?」


「そうです。ここのほかにも2つの世界があります。」


そしてレイは語り始めた。実際人間たちのいる世界は一つの世界でしかなく、他にも聖光界や魔洸界があることを・・・。そして、それら3つあわせてバストーナと呼ぶことも・・・。天使や魔物についてもちょっとしたことを話した。


「つまり、君は天使の中でもかなり偉い人でこの世界に(人界)に魔物とか言うものが入ってこないように守っていたんだね。」


「ええ、そうよ。けど、ついさっきの戦いで体力を使い果たしこの人界に墜落したの。」


「そうそれは大変だったね。ああ!それじゃ住むところや食べ物とかも全然ないんでしょ。それだったらしばらく家にいても良いよ。君の食事とか部屋とかは何とかするから。」


「いいえ貴方にはご迷惑をかけたくありません。もしここに私がいれば侵入した魔物が襲ってくる可能性があります。そんな危険な目に貴方をあわせたくはないんです。私の命の恩人に迷惑はかけたくないんです・・・。」


最後の語尾は弱々しかった。人界に来て数時間しかたっていないのにこんなに心を開いてくれた人がいるのがとてもうれしかった。だが、この人に迷惑をかけることはできない。ここにいたら魔物は確実に私をねらってくる。この少年がそのあおりを受けることは間違いないのである。だからレイは出て行かなければならなかった。


そんなことを考えているとレイの両腕をつかむようにして少年がしゃべり始めた。


「迷惑じゃないんだ。君を見てからなんだか落ち着かないんだ。理由は分からないんだけど、とにかく迷惑じゃないよ。それに、君を守りたいんだ!この世界のいろいろなものから!」


レイははっとして少年の顔を見た。


少年は涙を流していた。自分にはその理由が分からなかった。けどその涙は自分のために流してくれているのだけはわかった。そして、少年は涙を流しながら言葉を紡ぎ出す。


「この世界は君の思っているよりも過酷なところなんだ。自分だけの力ではどうにもならない時だってあるんだよ。今の君がそうなんだよ。もし病気になっても看病してくれるほかの人がいなければ苦しむしかないんだ。けど、君には僕がついていてあげるから早く病気を治して。」


そういう少年はレイに笑顔を向けた。その笑顔は眩しくてとても心地良いものだった。


[この少年の笑顔を見ていると心があったかくなる。この笑顔をずっと見ていたい。今だけでもいいからそばに居たい・・・。]


そう考えたとき少年はレイが驚くようなことを言った。


「それにね、なぜか君を見るとどきどきするんだ。他の女の子を見たときは何ともないのに君を見るとどきどきするんだ。多分君のことが好きなのかな?やっぱりよくわかんないや。けど、君がそばに居て欲しいと思っているのは本当だよ。君が天使だとかそんな事はぜんぜん関係ないんだよ。それに、何かあったら僕が守ってあげる!」


少年はそう言うと真剣な眼差しでレイを見つめた。最後の辺りは荒々しいような言い方だった。それでも少年が自分を大事にしてくれるのがはっきりと分かったのである。


「私ここに居て良いのですか?迷惑ではないのですか?」


レイは涙を流しながら言った。この界に来て始めてあった人がこんなにも自分を必要としてくれる。しかも、自分が天使であるとかを抜きにしていってくれるのである。それに、レイ自身よりも力が無い人間であるにも関わらず守ってくれるという。その言葉の深さと優しさに涙があふれてとまらなかった。


「迷惑ではないよ。だから泣かないで、君を守ってあげるから。どこにもいかないで・・・。」


そういうと、少年はレイを抱きしめていた。その抱擁はとても暖かく心地よかった。その少年の優しさがあふれてくるような感じがしたのだ。それに、その抱擁からお互いが必要な存在であるのがひしひしと感じられた。


しばらくの抱擁の後、お互いに恥ずかしくなって急に離れてしまった。しばらくその状態が続いた後、レイが顔を上げて少年に言い始めた。


「ありがとうございます。 それでは、 しばらくの間わたくし 四方護天使 一人 【風の天使レイ】 はあなたのお世話になりたいと思います。」


そういうと、少年はうつむいた状態から正面を向き、さっき見せてくれた眩しいばかりの笑顔をレイに向けた。


「ありがとう。君が居てくれれば僕も嬉しいよ。」


レイはその言葉を聞いてまた心が温かくなるのを感じた。


[やはりこの少年のことが好きになりかけているのかもしれない。]


とそこまで考えたところで大事なことに気がついたのである。


「そういえば、私あなたの名前を聞いていませんでした。良かったら名前をお聞かせくださいませんか?」


「僕の名前は碇シンジ、碇シンジだよ。よろしくね。」


「碇シンジ様ですね。よろしくお願いします。」


「様なんて付けないでほしいな。それにそんな硬い言い方じゃなくてもいいよ。」


「それではどう呼べばよろしいのですか?」


「シンジでいいよ。僕もレイさんて呼んで良いかい?」


[彼を呼び捨てになんて出来ない・・・。どう呼べば良いのでしょうか・・・。


・・・・・・


!!!]


「シンジさん・・・。シンジさんとお呼びしてもよろしいですか?」


シンジは顔を真っ赤にしていた。自分と同い年ぐらいの女の子に シンジさん と呼ばれたのである。女の子にまったく抵抗力の無いシンジはその言葉をもろに受けてしまった。


「なんかちょっと恥ずかしいな、けど今はそれで良いよ。他に呼びようが無いからね。僕の呼び方はそれで良いけど言葉をもっと柔らかくして良いよ。」


「わかったわ、シンジさん。」


「そう、そんな感じで良いよ。」


そしてその雰囲気のまま自分達の自己紹介などをしてお互いのことを良く知り合った。あらかた自己紹介が終わってからレイがシンジに向かって真剣な眼差しで何か言おうとしていた。


「どうしたのレイさん?真剣な顔をしているけど?」


レイは覚悟を決めてシンジに言った。


「わたしは、実際にこの界にはいてはいけない存在なのです。ですから、この界と結びつきをつくらなければなりません。」


「じゃあ、どうするの?僕には結びつきについては分からないから。」


レイはしばらく考えてから意を決して言った。


「わたくし四方護天使が一人 【風の天使 レイ】 は今をもってあなたの 守護天使 となります。」


「そう、僕の守護天使になってくれるんだ。


・ ・ ・


・ ・ ・


・ ・ ・


えっっっーーー! 僕の守護天使!?


「そうです。シンジさんの守護天使になります。そうすればあなたが必要としなくなるまでここに居ることが出来ますから。」


そういうとレイは少しうつむいて震えていた。それを見てシンジはレイがどれだけの勇気を出してこの決断をしたのかは容易に想像できた。 「あなたが必要としなくなるまで」 その言葉を聞いたシンジはレイを抱きしめてレイの耳元で囁いた。


「大丈夫だよ、僕がついてる。君の気持ちが嬉しいから。君が必要でなくなることなんて無いよ。レイ!絶対君を守ってみせる!」


「ありがとう、シンジさん・・・。ありがとう・・・。」


二人は満ち足りた気分のまま抱き合っていた。しばらくすると強烈な眠気が襲ってきた。その眠気に二人は身を任せて眠りに落ちていった。


つづくかも!?




あと書きゅ!(作者とキャラの雑談パート1)


:どうもW’Yです。

:こんにちわ碇シンジです。

:それにしても君良いとこ取りすぎだよ。

:そうですか?自分では何ともないですけど。

:つまり私が君のオリジナルにかなり手を加えたわけさ!

:どおりでオリジナルが言ったこともない台詞をバンバンはいてるわけですね。

:そういうこと!けど君には君自身が知らない秘密がたくさんあるんだ。今は第1話が終わったばかりだからなんとも言えないけど、これからいろいろ大変なことが起きるんだよ。だから、君にはしばらく秘密を教えることはできないんだよ。

:そうですか、それは残念。それはそうと、W’Yさんこの小説のジャンルは何になるんですか?

:読む人によりけりだと思うけど、多分ファンタジー+ラブコメのLRSだと思うけど自身はありません。これからも書く気はあるんですけど。(シュンとなる)

:大丈夫ですよ。何とか連載できますよ。僕も手伝ってあげますから。

:ありがとうシンジくん。私の味方は君だけだよ。(涙を流して喜んでいる。)

:そんなおおげさな。あ、W’Yさんそろそろ時間みたいですよ。

:むむ、もう時間か。いたしかたないな。それでは感想のメールお待ちしています。

:誤字脱字や読みにくい部分の苦情のメールも受け付けております。

W・シ :それでは皆さん



また第2話の後書きで会いましょう!!!




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