バレンタイン特別企画&「LRS×LAK製作委員会」結成記念

偽作「まごころを君に」after another story
バレンタインデー

by秋月





最終決戦から1年がすぎ、集光ビルの必要なくなった剥き出しのジオフロントも急速に復興に向かいつつあった。太陽の光が直接に地底湖に差し込み豊富な緑を際だたせていた。

2月14日、僅かに落ち着きを見せ始めたネルフ内でチルドレン達に僅かな細波のたった出来事が起こった。その発端を担ったのは誰あろう、伊吹マヤ女史である。彼女が律儀にも身近な男性職員に義理チョコを配っていた場面を今は仲良くなったレイとアスカの二人が目撃したことが一つの原因となった。

「何をしているんですか?」

このごろレイも周りの状況に関心を示すようになっていた。そしてそれは普段行われないような珍しものであればなおさらである。

「あら、レイちゃん、アスカちゃん。」

マヤは小首を傾げて不思議そうな顔をしている。レイの問いかけの意味が分からなかったらしい。レイはもう一度問いかける。

「それは何ですか?伊吹二尉。」

「もう、私のことはマヤって呼んでくれていいのよ。あ、これね、これはチョコレートよ。今日はバレンタインデーだから。」

「バレンタインデー?」

マヤの答えを聞いて不思議そうな顔をするレイにマヤとアスカは怪訝そうな表情を見せたが二人は見事なユニゾンによって大声を張り上げた。余談であるがレイの表情もこのころには見慣れた者になら僅かな変化ぐらいは見分けられるようになっていた。まだほんの僅かなもので注意をしなければ見逃しそうな変化でしかなかったが。

「アンタ、バレンタインデーも知らないの?」
「レイちゃん、バレンタインデーのこと知らなかったの?」

「・・・はい。」

レイは二人の様子に僅かにひるみつつも正直に頷く。その様子を見てアスカとマヤの二人はお互いに顔を見合わせて溜息をついた。
アスカはバレンタインデーの習慣は知っていたが、今まで自分には全く関係ないと言えたのでそれを特に意識したことはなかった、そして今も大したことだとは思えなかったためにどちらかというと投げやりな言葉を呟いた。

「まあ、いいんじゃないの。バレンタインデーぐらい知らなくても。」

しかし、そんなアスカの様子とは異なりマヤはとてつもなく真剣な表情をしてレイに詰め寄る。

「駄目よ。シンジ君が可哀想だわ。」

その言葉に今度はレイとアスカが不思議そうな顔をする。

「何でそんなに真剣になってんのよ?」

「あら、アスカちゃんはカヲル君にあげたんじゃないの?」

「なにをよ?」

「チョコレートだけど?」

今一つ噛み合わない会話がしばらく続く、やがてマヤは何かに気づいたように二人を交互に見つめると一寸もったい付けながらも微笑みを浮かべて言った。

「日本ではね。今日は女の子にとって特別な日なの。好きな男の子にチョコレートを送って自分の正直な気持ちを相手に伝える日なのよ。」

「・・・な、何よ、それ!!私がどうしてカヲルなんかにあげないといけないのよ。」

「・・・・・・」

大声を上げるアスカに黙り込むレイ、好対照に思えるがマヤの目にはあまりにもそっくりの反応を二人は行っていた。どちらも顔を赤らめてどこか落ち着きなげに視線が左右に泳いでいたのだ。思わずその様子に吹き出しそうになったマヤだが、そんなことをすればアスカの機嫌が悪化することが明白だったので何とか耐える。
しかし、僅かに失敗したようでアスカは不機嫌そうにマヤを睨み付けていた。

「あ、そ、そうよ。二人とも用意していないんでしょ。まだ時間はあるし、どこかで買ってくれば。」

あわてて誤魔化そうとするマヤにアスカは声を荒げて言う。

「だから、必要ないって言ってるでしょ!!」

確かにまだ昼にもなっていない時間であるマヤの言うとおり時間はたっぷりとある。しかし、今一つ素直になりきれないアスカにはマヤのその言葉に素直に従う気にはなれない。また、どこか自分の気持ちを認めるのは照れくさい気がするのだ。そんなアスカの横でレイは何かを考えているようだった。やがて、マヤの方へと普段以上に小さな声で何事かを呟く。

「・・・・・・」

「何?レイちゃん。」

マヤは聞き取ることが出来なくて身を僅かに屈めるようにしながらレイの方へと問いかけた。

「・・・碇君は、喜んでくれる?」

レイは上目遣いにマヤの方を見ながら問いかけてくる。透き通るような白い肌がその上気した頬をいっそう引き立て同性であるマヤでさえも抱きしめたくなるほど愛らしい風情を醸し出す。
マヤは思わず僅かに頬を染め、誤魔化すように笑いながら言う。

「き、きっと喜んでくれるわよ。」

「・・・そう。」

そんなマヤの言葉にレイは素っ気ないとも思える答えを返す。しかし、その表情はどこか嬉しそうに二人の目には写った。

「じゃあ、一緒に買いに行きましょうか?」

「・・・いいんですか?」

「いいのよ。今日は急ぎの仕事はないし。アスカちゃんはどうする?」

マヤは恐縮しているレイに優しく返事をすると傍らで呆然としていたアスカの方にも問いかけた。

「えっ、ア、アタシは・・・そ、そうね、レイがシンジにあげるんだったらあいつだけもらえないなんて可哀想よね。ぎ、義理チョコぐらいならあげてもいいわよ・・・」

アスカは赤い顔でどもりながらも自分に言い聞かせるように呟いている、マヤはほんとに素直じゃないわね、と思いながらもその様子が微笑ましく思えた。
自然と笑顔になり二人を連れてスーパーへと向かう。今、ジオフロントの食料品を扱っているのはそこただ一軒しかない。中に入ると数は少ないものの色とりどりの包装紙に包まれたチョコレートがおいてある。マヤは自分も選ぶふりをして二人の少女の様子をこっそりと覗いていた。

アスカは割合悩みつつも決められたようで2,3個の箱を手に持っている。しかしレイの方はいくつもの箱を手に取り、また戻すという作業を永遠と繰り返している。アスカもその様子に気づいたらしくレイの方へと呼びかける。

「さっさと決めなさいよ、それぐらい。とろいわね、アンタも。・・・」

その声にレイはアスカの方へと顔を向ける。その瞳を見てアスカは続けようとした言葉を飲み込んだ。まるで迷子になった子供のような瞳が自分に注がれているのだ、下手に文句を付けることもできない。

「・・・どうしたっていうのよ?」

「・・・分からないの。」

「何がよ、いったい?」

アスカの怪訝そうな言葉にレイは縋り付くような瞳を向ける。

「・・・どれにすればいいの?どれを選んだら碇君は喜んでくれるの?」

「「・・・・・」」

どうやらそれだけを考えて選ぼうとしたらしいがいかんせんレイにはそれらを選び出す基準に欠けていた。チョコレートなど口にしたこともないレイに他人の好むものなど分かろうはずもない。それに思い至りマヤもアスカも思わず天を仰ぐ。
マヤはそっと時間を確認するとある袋を買って二人を自分の家へと連れていった。


☆☆☆☆



レイとアスカがマヤの家にいた頃、シンジとカヲルはネルフの女子職員達に囲まれていた。貰ったチョコレートが持ちきれないために購入した袋がすでに一杯になっている。二人の数を比べてみるとカヲルへのものの方が若干多いだろう。これらが彼らの今日の成果だった。今朝4人で家を出るときには全く予想しなかったことである。シンジもカヲルも今思い返すと今朝方妙に機嫌の良かったミサトの様子が思い返される、あれはおそらくこれのことだったのだろう。

思わず溜息が漏れ出る。それが自分たちの保護者であり、今のこの組織での最高責任者の一人なのだから。
やがて二人はレイとアスカを捜すのを諦め先に帰ることにした。家へと帰る途中にカヲルは何かを思いついたかのようにシンジに言ってくる。

「シンジ君、先に帰っていてくれるかな。僕は用事を思いついたんだ。」

「うん、いいよ。」

「で、これも持っていってもらえるとありがたいんだけど。」

そういってカヲルが出したのは彼が貰ったチョコレートの詰まった大きな袋であった。

「ただいま。」

一人で家に帰ってきたシンジはリビングの隅にカヲルと自分の分の大量に詰まった袋を置くとまずは部屋に向かいラフな格好に着替えた。リビングに来て、周りを見渡すとひどく寂しい思いがする。普段はここに一人でいることなどなかったのだ。大抵は誰かと一緒にいた、レイかアスカかカヲルか。それが今は誰もいない。広々としたリビングに耐えられずシンジはかなり早いが夕食の準備を進めることにした。



☆☆☆☆



「ただいま。」

一通りの食事の支度が終わったころにカヲルが帰ってきた。シンジはエプロンをつけたまま出迎える。

「お帰り、カヲル君。」

そういって微笑み合う二人はもし、彼らが同性でなければ結婚したばかりの夫婦のようである。二人はそのままリビングへと向かい、すぐにキッチンの中へと戻ろうとしたシンジをカヲルが呼び止めた。

「シンジ君。」

「何?カヲル君。」

少し不思議そうな顔をしながらシンジはカヲルの方へと向き直る、その目の前に赤い小さな包みが差し出された。シンジはいっそう不思議そうな顔をしてカヲルに尋ねる。

「何、これ?カヲル君。」

「チョコレートだよ。」

「・・・・えっ!」

いつもの微笑みを浮かべてカヲルはさらりと言ってのけた。シンジは何を言われたのか分からなかったがその視線がリビングの隅に置かれた袋へと向かい裏返った声をあげた。シンジの視線は袋とカヲルの顔へと何度となく交互に向けられる。そんなシンジの様子にカヲルはまだ微笑んだまま続ける。

「今日はバレンタインデーなんだってね。だから僕の心を込めたチョコだよ。」

シンジの顔が明らかに引きつったのを見てカヲルは悲しそうな顔をして言う。

「・・・・迷惑だったかな?」

「そ、そんなことはないよ。あ、ありがたくいただいておくよ。」

シンジは冷や汗を流しながらも愛想笑いを浮かべる。カヲルは心底嬉しそうに微笑み返した。シンジはその笑顔を見て酷い自己嫌悪にさいなまれた。

(カ、カヲル君はきっとバレンタインデーの意味を勘違いしているんだ。きっとそうだ!)

そう言い聞かせるシンジの耳に痛いほどの罵声が突き刺さる。

「ア、アンタたちなにしてんのよ!!」

シンジはその声に怯んだようにそちらに顔を向ける。そこには怒りで顔を赤く染めたアスカとどこか沈んだ顔をしているレイの姿があった。二人の視線はシンジの持つ赤い包みに向けられていた。

「ア、アスカ、綾波。こ、これはちがうんだ・・・そ、その・・・・」

狼狽えるシンジとは別にカヲルは涼しい顔でアスカ達に声をかける。

「やあ、お帰り、二人とも。」

「「・・・・・・」」

しかし、返事はない。重苦しい空気がその場を支配している。シンジだけがその空気に潰されるような重圧を感じていた。アスカがゆっくりと歩を進め、カヲルへと近づく。それを表面上は悠然と見つめるカヲルとおろおろするしかできないシンジ。もっともシンジはもう一人の様子の方が気になっていたのだが、そちらには動きがない。それが余計にシンジの不安を掻き立てるが、手に持った包みを離すこともできない。

カヲルのすぐ鼻の先まで来たアスカがいきなり右手を振り上げ、勢いよく振り下ろす。そこに手加減は一切入っていなかった。まっすぐに繰り出されたアスカの強烈なビンタは、しかし、あっさりと空を切る。カヲルは僅かな戸惑いをその顔に浮かべたままアスカに問いかける。

「どうしたんだい、僕が何か怒らせたかな?」

その冷静な言葉が逆にアスカの怒りに火をつけた。無言で二度三度と繰り返されるアスカの手をことごとくカヲルは避けきる。やがて息を切らせながら俯いたアスカの方にカヲルが手を伸ばそうとしたときアスカは押し殺したような声を出した。

「・・・何でよ?何でシンジにチョコレートなんかをあげてんのよ!」

カヲルはいっそう戸惑う。アスカの声の中に怒りだけではなく、どこか悲しそうな響きを聞きつけたからだ。アスカの怒りが爆発することはよくあった、あの戦いの時のショックからかアスカには精神的に不安定なところがまだ残っていたのだ。しかしこのところ随分と落ち着いてきていた。いきなり爆発するとは思えないほどに。

「バカッ!!!」

アスカは大声でそう叫ぶと何かをカヲルの顔に向かって投げつけ、家から飛び出していく。三人は呆然とその様子を見つめることしか出来なかった。まさかここまでアスカが爆発するとは思っていなかったのだ。一番ドアの近くにいたレイでさえも隣を走り抜けるアスカを止めることが出来なかった。
珍しく呆然と立ちつくすカヲルの前に落ちた箱にシンジは気づき、取り上げて怪訝そうな表情を浮かべた。それは不器用ながらも丁寧に赤い紙で包装された掌ぐらいの箱であった。しばらくの沈黙の後、レイがカヲルへとその紅い瞳を向け、言葉を紡ぐ。

「・・・それはアスカから、あなたへ。」

カヲルがはっとしたような顔でレイの方を見た。そしてそっと俯くと唇を噛みしめる。シンジはその箱をそっと差し出し、カヲルへ微笑みかける。

「行ってあげてよ、カヲル君。アスカの行き場所、分かるよね?」

カヲルはしばらくの逡巡の後にゆっくりと顔を上げた。すでにその赤い瞳には迷いの色はない。一つ頷くとその箱を受け取り、外へと走り出していく。
シンジとレイはその姿を見送り、そっと溜息をついた。そして同時に行ったその行為が可笑しくてひとしきり二人で笑い合う。すでに気まずい雰囲気はそこにはなかった。
そっと微笑みながらレイはシンジへと今まで大切に持っていた小さな青い箱を差し出す。シンジはそれを受け取るとレイの方へと驚いた顔を向ける。

「こ、これって・・・」

レイは僅かに俯き、微かに上擦った声で答えた。

「・・・・貰ってもらえる?」

「うん、ありがとう、綾波。開けていいかな?」

シンジは照れながらも心底嬉しそうな笑顔をレイへと向ける。レイもそんなシンジの様子に頬を染めて頷く。

「・・・ええ、でも、うまくできたか分からないの。その、初めてだったから。」

「えっ、もしかして手作りなの?」

言われてい見ればその箱は綺麗に包装されているが、よく見るといくつか皺のようなものが入っている場所があった、おそらく何度も包み直したのだろう。そう思うとシンジはいっそうそれが大切なもののように思われた。
レイは俯いているので表情は分からないが蒼銀の髪から僅かにのぞく小さな耳たぶが薄くピンク色に染まっているをシンジにも見て取ることが出来た。

「お茶入れるね。」

そういってキッチンへ入ろうとしたシンジの服をレイの小さな手がそっと掴んだ。

「どうしたの?」

優しく問いかけるシンジにレイは俯いたまま答える。

「・・・私が入れてくる。碇君はそこに座っていて。」

「で、でも・・・」

シンジが何か言おうとするのを無視するかのようにレイはさっさとキッチンへと入っていった。シンジはレイの背中を見送るとテーブルに座ってカヲルから貰った箱を隅に置くと先ほど貰ったばかりの青い箱から赤いリボンを解き、丁寧に包装を剥がしていく。何故か分からないながらも震える手を箱に伸ばすとまるで壊れ物を扱うかのような細心の注意を持って蓋を開ける。

そこにはシンプルなハート型のチョコレートが一つだけ入っていた。他にはメッセージも何も入っていない。それがシンジには何ともレイらしい気がして、思わず微笑みが浮かぶ。そこにレイがお茶を持って帰って来た。

「何が可笑しいの?」

その声にはどこか不機嫌そうだ。シンジの笑みに馬鹿にされたと思ったのかもしれない。シンジは慌てて言葉を紡ぐ。

「ち、違うよ。その、綾波らしいな、と思って。」

「・・・そう?」

どうやら機嫌は直ったようだが、シンジの言った意味は分からないらしい。僅かに小首を傾げている。シンジは一寸もったいないような気がしたがそのチョコを口へと運び一口かじる。チョコレート独特の甘みが口の中に広がり、シンジの味覚を満たす。自分が食べるところをじっと見つめていたレイの様子に気づき気恥ずかしくなりながらもシンジはレイへと心を込めて言う、彼にとって精一杯の言葉を。

「美味しいよ、綾波。」

何の飾りもないありきたりな言葉であったが、レイは自分の労力が報われたような気がした。そして本当に嬉しそうに微笑んでシンジへとお茶を差し出した。

「はい、碇君。」

「うん、ありがとう。」

シンジはレイからお茶を受け取り、チョコレートを美味しそうに食べ続けた。そんなシンジの様子をレイも嬉しそうに見つめ続ける。小さなチョコレートがなくなるのにそれほどの時間がかかるはずがないが、二人はその時間が何時までも続いてくれることを祈らざる得なかった。



☆☆☆☆



カヲルは公園の片隅のベンチに座り込んでいるアスカを見つけた。沈みゆく太陽がジオフロント内のこの公園をも照らしていた。夕方と言うには少し早い時間であるが、盆地と言うにはあまりにも深いジオフロントでは空が赤く染まろうとするころには太陽は見えなくなっている。

すでに太陽は半分ほど見えなくなり、そろそろ空が茜に染まろうという時間となっていた。空の色は透き通るような青から、僅かに光彩の欠いた紫へと変わっている。
アスカは太陽と対面するように向き、項垂れたように座っている。カヲルはそっとその後ろに近づくとベンチの背もたれごしに無言のままアスカを抱きしめた。その瞬間アスカは体を堅くしたが、もう暴れることはなかった。

「・・・・離してよ。」

ただ、弱々しい声でただ一言だけ呟く。小さな声だったがカヲルの耳にはその声は届いていた。しかし、カヲルは腕を放さない、それどころか僅かに抱きしめる力を加えた。

「・・・私、嫌な女ね。何を怒ってんのか・・・ホントに嫌になるわ。」

「・・・・」

しばらくしてアスカはぽっつりと呟く。カヲルはまだ無言のままだ。

「アンタもそう思ったんでしょ。いいのよ、こんな我が儘なアタシなんてそのうち誰にも相手にされなくなって。いつか一人になるのよ、また。」

「でも、今までだって一人で生きて来たんだから。これからだって・・・・」

「君は強いからね。」

カヲルは悲しみを込めてアスカに囁く。

「そ、そうよ。アタシは強いの、一人で生きていけるのよ!」

アスカの強がりはまだ続くのだろう、そのか細い躯は僅かに震えている。それは怒りか、興奮か、寂しさか、それとも恐怖か。

「僕はもう一人は嫌だよ。一人は寂しいし、辛い。」

カヲルの言葉は淡々としたものだったが、それだけに彼自身の実感がこもっていた。

「ア、アタシは、アタシは・・・・・アタシは・・・・・」

カヲルの言葉に抵抗するかのように発せられた言葉は、しかし、きちんとした意味をなさず、ただ繰り返される。それはやがて嗚咽と変わった。それを隠そうとするかのようにアスカは顔を両手で強く覆い、唇を噛む。カヲルはただ抱きしめるだけで何も言わない。しばらく沈黙が続いた。風が二人の周りを吹き抜け、お互いの温もりをひどく意識させる。アスカは包まれている暖かさに安らぎと僅かな居心地の悪さを感じていた。

「チョコレート、ありがとう。」

不意にカヲルは後ろから抱きしめたままアスカの耳元でそっと囁く。あまりに関係ない言葉にアスカは唖然とした表情で振り返りカヲルを見上げる。そこにはひどく真剣な赤い瞳が自分を見つめていた。まるで全てを見通すかのように、まるで全てを包み込むかのように。やがて、涙をたたえたままアスカはカヲルに微笑みかけた。それはいつもどうりの勝ち気な微笑みだった。

「あれは義理なんだからね。自惚れるんじゃないわよ。」







委員長就任の挨拶

「どうも、秋月です。この度、「LRS×LAK製作委員会」が結成されました。僕はこれの言い出した当事者ということで名誉ある委員長の座をいただいたわけですが。」
「ああ!!うるさい、うるさい。挨拶が長いのよ!!もっとびっしとしなさいよ、びっしと。」
「いきなりですね。」(汗)
「どうも読んでくださった方々ありがとうございます。」
「ありがとう、楽しんでくれた?そう、よかった。」
「メンバーの皆さん、どうだったかな?秋月さんもいちよう頑張ったみたいだけど。珍しく一日で書き上げたそうだしね。」
「本当に、「魂の真偽」以来だなぁ。」
「アンタはとろいのよ!!書こうと思えば書けるんでしょう。」
「書けるときは書ける、ですよ。(笑)証拠に今「波間に−」の方が停滞していますし。」
「『朧の刻』もね。」
「うっ・・・ま、まあ、せっかく結成された委員会ですし、この委員会の目標は「シンジ、レイ、カヲル、アスカを幸せにする」ですから。精一杯頑張っていきましょう。入会者はいくらでも歓迎します。(笑)」
「まあ、それはいいわよ。しかし何よ、これ?」
「えっ、これは偽作の空白の18ヶ月の間に起こったかもしれない出来事の一つの可能性です。」
「しかし、当初の目的と方向性が異なってないかい?」
「う〜〜ん、僕も不思議なんですよね。当初これはかなり明るい話になるはずだったのに。何故こうなったんだろう?」
「僕たちは秋月さんにははじめての”明るい甘々バレンタインもの”って聞いてましたけど。」
「べたべたものの間違いじゃないの?」
「思いどうりに書けないのね。未熟な証拠だわ。」
「うっ、これぐらいで切り上げましょう。落ち込んでくるので。」
「逃げるのね。」
「辛かったら逃げてもいいんだ。(きっぱり)」(だぁ〜〜)
「じゃあ、作者は逃げてしまったけど、感想、批評、意見、叱責のメール待っているよ。気楽に送ってくれていいよ。作者はきちんと返事は書くそうだから。もし書かないって言っても僕たちがきちんと書かせるからね。」

「「「「「では、また。」」」」」