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     16 路上の同窓会
      

呆然とするシンジの前に、ニコニコしながら立っているユイ。余りに突然な母親の出現にシンジは何を言って良いのか解らない。本当ならユイはニューヨークにいる筈なのだ。

「どうしたの?シンちゃん、私の顔忘れちゃったの?」

「なななななんで、かか母さんが日本にいるのさ?」

パニック状態のシンジはそれだけ言うのが精一杯だった。

「久しぶりに会った母さんに、『お帰り』って言ってくれないの?母さん悲しいわ。」

ユイはそう言うと『よよよ』とワザトらしい嘘泣きを始める。

「あ、ご、ごめん。お帰り母さん………………って、そうじゃなくて!どうして母さんが日本にいるのって聞いてるんだよ!」

シンジ本人にしてみれば、真剣なのかも知れないが、廻りで見ているものには親子漫才にしか見えない。元々、ユイを始めてみるヒカリ達はユイがレイの家にいること自体にショックはない。ヒカリがアスカの後から袖を引いて聞いた。

「ねぇ。アスカ、あの人が碇君のお母さん?」

「え?ええ、そう。」

「綺麗な人ね。」

「ホンマやで。シンジのお袋さんてメッチャ別嬪やな!」

「ホントホント!とても中学生の子供がいるなんて信じられない!」

ヒカリの言葉にトウジも頷く。ケンスケなどはシッカリとカメラで撮影をしていた。勿論ユイを。

ヒカリ達の言葉が聞こえたのか、シンジの問いかけを無視するように、シンジの後に立っているヒカリ達を見て、ニッコリと笑うユイ。

そのまま視線をアスカに向けると、やはり微笑みながら話しかける。

「アスカちゃん。」

「は、はい。」

「もう少しすればキョウコもここに来るわ。」

「ママが?」

自分の母親もココに来ると言われ、驚いたような声を出す。それを見てニッコリと笑いながら頷くユイ。シンジはシンジでユイに無視され続け、半分いじけている。

レイはそれを見て、かえって落ち着いたのか、そんなシンジを見て、苦笑していた。

「でも、どうしてママが来るんですか?」

「私とレナとキョウコは親友だもの。久しぶりに会う機会の場を設けたって可笑しくないでしょ?」

「まぁ、それはそうですけど………でも、おばさまがなんで日本にいらっしゃるんですか?シンジに聞いたらまだ、ニューヨークにいるはずだって………そうでしょ?シンジ………って、あら、シンジは?」

アスカはシンジを探した。そして、隅の方で背中を丸めて地面に『のの字』を書いてるシンジを見つける。完全にいじけてしまった様だ。

ユイはそんなシンジを見て苦笑している。レイも何とも情けない顔をしていた。そしてアスカは………こめかみに青筋が浮いていた。

情けないシンジの姿を見た一同は、言葉をなくしていた。静まり返った為、シンジの呟きが聞こえてくる。

「良いんだ………どうせ僕はいらない子なんだ………誰も僕なんか構ってくれないんだ………」

アスカはシンジの後に立つと背中を叩いた。シンジが振り向くとそこには、青筋を浮かべ憤怒の形相のアスカが立っていた。

「う、うわぁ〜〜!」

恐ろしさの余り尻餅をついて、そのまま後づさる。

「アンタってホンット〜〜〜〜〜〜〜〜に成長してないわね!こんなトコでいじけてたって恥ずかしいだけでしょ!」

立ち上がるのも忘れ、鬼のような(爆)形相のアスカをじっと見つめるシンジ。

「わかったの?」

「………(コクコクコク)」

「だったらさっさと立つ!」

もそもそと立ち上がるシンジ。側ではアスカが腕を組んでシンジを睨んでいた。



そんな2人を見てニコニコ笑っているユイが小さく呟く。

「懐かしいわね。小さい時を思いだすわね。」

そう言ってにこにこしているユイにレイの母親が近づいて聞いた。

「ねえ、ユイ。あの子がアスカちゃん?」

「ええ。キョウコに似てるでしょ?」

「流石にキョウコの娘ね………外見だけでなく性格までそっくりだわ(ため息)………………で、シンジ君は誰に似たのかしらね?ユイとゲンドウさんの子供だったらあそこまで大人しくないでしょうに♪」

「あら、失礼ね。私にソックリじゃないの。」

「そうかしら。」

「そうよ。貴方達の子供にしては大人しいじゃない?」

「そうね〜〜、ちょっと頼りないかなぁ〜〜〜〜〜」

自分の母親とシンジの母親の会話を聞いていたレイが、それを聞いて口を挟んだ。

「そんな事ないもん!碇君はシッカリしてるよ!」

「あら、アリガトウ、レイちゃん♪」

そう言ってユイはニッコリと微笑むと、意地の悪そうな顔をしてレナに言う。

「貴方の子供こそ、母親に似ないで良い子じゃない?」

「まっ、自分の事を棚に上げてよく言うわよ。」

「お互いさまでしょ?」

ユイとレナは顔を見合わせて笑い出していた。そんな2人にシンジを引っ張ってきたアスカが話しかける。

「おばさま、さっきの話しの続きですけど………どうしておばさまが日本にいらっしゃるんですか?おじさまはどうしたんです?」

「え?ああ、支部の開設準備も大体終わったし、後はあの人だけでも大丈夫みたいだったから帰ってきたの。尤も私が行く必要なんて最初からなかったんだけどね。」

「はぁ。」

「あの人って昔から、1人じゃな〜〜〜〜んにも出来ないでしょ?それに………」

「それに?」

「『偶には2人っきりになって、新婚当時を思い出したい』なんて可愛い事言うし♪」

「………………」

何の事はない。シッカリと惚気られたアスカは喋る言葉を失ってしまった。それはレイも決して例外ではなかった。2人の目の前で少し照れた様子を見せているのは、年齢よりは若く見えるとは言え中学生の子供を持つ女性なのだから………………

「バカな事を子供の言ってるんじゃないわよ。まったくそう言った処も昔のまんまね。」

レナは呆れたような声を出しながらユイの後頭部を小突く。苦笑いしているユイを、これまた苦笑しながら見た後、視線をアスカに移すレナ。

「初めまして、アスカちゃん。私はレイの母親でレナ。ヨロシクね。貴方のママのキョウコとはユイと同様、昔からの親友なの。」

簡単な自己紹介をするレナを見て、シンジが初めてレイの家に訪れた時と同じような感想を持った。

「あ、初めまして。惣流・アスカ・ラングレーです。こちらこそ宜しくお願いします。あの………………」

「なあに?」

「レナさんとユイおばさまって何か繋がりがあるんですか?その………親戚とか………」

「いいえ、そんな事は無いわよ。」

「そうなんですか?」

「やっぱり似てるかしら?」

「はい。」

答えながらアスカは、レイを初めて見た時に、一目で気に入った理由が何となく理解できた。

(そっか〜〜〜〜レイがおばさまに似てたからなのね。)

「この前、シンジ君が来た時にも言ったんだけど、ユイとは外見だけじゃなくて、性格とか好みも似てたのよ。で、ゲンちゃんを3人で誰が射止めるかって競走してたの。結局、ユイに取られて私とキョウコは振られちゃったけど。」

言わなくても良い事まで口を滑らすレナ。アスカは自分の母親の昔の事を聞いて少なからずショックを受けていた。

ユイの事は大好きだが、流石にゲンドウの顔を思い出すと、自分の母親が決して良い趣味していたとは言い切れない気がしてくる。

(おじさまの事が好きだったって………………じゃあ、どうしてパパと結婚したの?)

まるで共通点が見出せないゲンドウと自分の父親。

(良かった………アタシのパパが今のパパで………………)

アスカもバカではないし、言って良い事と悪い事の判断は出来るから、心でホッとしても口には出さない。

………………実際は危ないところだったが………………(笑)

「でも、アスカちゃんて昔のキョウコソックリね。外見は数倍も可愛いけど♪」

あっちの世界に行っていたアスカも、突然話しを振られて現世に復帰してきた。

「え?そ、そうですか?」

「ええ、ユイもそう思うでしょ?」

「そうね。似てるわね。大きくなって外見はキョウコなんかより、ず〜〜〜っと綺麗になったけど♪」

「さっき、シンジ君を叱り付けた所なんか、キョウコを見ている気になったわ。」

「うんうん、わかるわかる。」

「キョウコって、ちょっと見ると大人しそうに見えるけど、怒る時は容赦無かったわよね。」

「そうそう。あ、あれ憶えてる?キョウコに言い寄った男の子がゲンちゃんの悪口を言った時の事?」

「憶えてる憶えてる♪凄かったわよね〜〜〜〜〜」

「あの時のキョウコ、流石に私達も怖かったわ。」

「うんうん、『ゲンちゃんの事を悪く言うけど、貴方こそ私にふさわしいと思ってるの?鏡は見た事有るの?あるんだったら私が良い眼科を紹介してあげるわ』ってのから始まって、罵詈雑言のオンパレード。最後のほうは相手の男の子が泣き出しちゃって。」

「そうそう♪あの後、暫くはキョウコが通ると人垣が割れたもの。」

アスカにとっては聞いた事がない、自分の母親の話。興味は尽きない。だが、悪口ばかりでは流石に良い気持ちはしないが、文句を言うにも相手が悪過ぎる。いくら何でもユイには面と向かって言いようがない。

ユイとレナは本人が居ない事を良い事に、こき下ろしている親友の娘が聞いている事も忘れたのか、それとも気にしていないのか、止まる様子をみせていなかった。

レイはアスカの矛先がシンジに向かわないかとヒヤヒヤしていたし、シンジもアスカの顔色を恐々と伺っていた。

トウジやケンスケといった直接関係ない者達は唖然としている。ヒカリも例外ではなかった。

只1人、カヲルだけが何時もと同じように楽しそうに笑っていた。が、内心では………………ジックリ観察してみると、微かにだがコメカミに汗をかいているようだった。

「あっ………」

何かに気付いたシンジが小さく声を出した。その小さな声に気付いたのは側にいたレイとアスカだった。
留まる所知らない、ユイとレナの背後に影が揺らめいた。

そう認識した瞬間――――

ゴンッ、ゴンッ

「「痛った〜〜〜い!」」

頭を押さえながら下を向いてる状態では、自分達に痛い思いをさせた犯人の足元しか見えない。そのままでは文句も言えないので、眼に涙を溜めて、突然の闖入者に抗議をしようと顔を上げる。

そこで2人が見たものは………………

「「………オニ?………」」

ゴンッ、ゴンッ

「「キャ〜〜〜〜!」」

「子供達の前でくだらない事を言ってるんじゃないわよ!!」

「「キョ、キョウコ………………何時からそこに………………」」

「殆ど最初から!あれだけ大きい声で言ってればイヤでも聞こえてくるわ!」

「「………はははは……はは………」」

すっかりユニゾンしているユイとレナ。そんな2人を呆れたように見ているキョウコ。アスカが自分の母親に声をかける。が、その後、何を言ったら良いのか思いつかない。

「ママ!………」

「アスカちゃん、こんな大人になっちゃダメだからね。」

「「あら、私達は本当の事を言っただけよ!」」

キョウコの言い様に、ちょっと反発してしまう2人。ユニゾンは崩れていなかった。

「そんな事を言うと、貴方達の事も暴露するわよ!子供達の前で!」

「「………………………やめましょう………」」

言った後、それならばと返されたらどうしようかと思ったが、ユイとレナが折れた事に内心ホッとするキョウコだった。

「ともかく家に入りましょう。これ以上注目を集める事もないわ。」

促すキョウコの視線をたどると、クスクスと笑いながら見ている、ご近所の方々の視線が集まっていた。(笑)

当分の間、肩身が狭く成る事を覚悟するレナだった………………自業自得ではあったが………………






  コメント      |]_・)ソォーッ………ほんとにお待たせしました………………待っててくれたよね?      前回の更新から………………………(A^^ゞ      月日を数えるのは止めましょう………ははは………      今回は少し視点を変えてみました。シンジ達よりも親にスポットを当てて。      キャラの性格付け(特にユイ・レナ・キョウコの)をしたかったので………………      少し中途半端な話になってるし………短いけど………………      次回の更新はもっと早くします!      ………最近、何故か仕事が忙しいけど、「これ」がEVAの処女作ですからね。      今回はコメントも短いですか、ご容赦下さい。m(_ _)m
……苦情、罵倒、悪口、感想等なんでも受け付けしています。(必ずお返事は致します。) 次回『-IF- 17 ―未定―』でお会いしましょう。
   では、また。v(^^)/~~