登校〜レイ〜

「…いってきます」

 誰もいない部屋に返事をして、学校に急ぎ足で向かう。

 走る、走る、走る。

「ふーー」

 両手を膝におき一息つくレイ。遅刻しない距離についたため歩く、歩く、歩く。

「碇クン、もう学校に着いているかな?たまには一緒に登校したい…」

 気が重くなる。学校に行けば会えるが、アスカみたいにシンジと登校してみたいと神様に祈ってみた。

(どうか碇クンと一緒に登校させてください)

 日頃は神様を信じないレイであったが、祈った。

 ゴッツン!!

 祈りながら歩いていたレイは交差点で、飛び出してきた人とぶつかりその場にしりもちをついた。

 クラ☆クラ☆クラ☆クラ、目の前が暗くなり星が飛び交う。ぶつかった人物が謝ってきた、聞き憶えがある声。

「いったー。すっすいません」

「……痛い…グスン」

「あっ綾波じゃないか!大丈夫?」

「あっ碇クン、うん大丈夫」 (ズキ、ズキ かなった!!)

 レイにぶつかったのは偶然にもシンジだった。祈りが通じたのか?神様に感謝した。

(神様ありがとう)

「綾波、立てる?」

 シンジは心配そうに尋ねた。レイは頭をさすりながらまだ座り込んでいるのだ。

「う、うん」 (あっあれ?)

 しかし、レイは立てない。偶然シンジに出会い、ぶつかり腰をぬかしたのだ。

「手、貸そうか?」

「うん」 (ドキ、ドキ)

 シンジが手をさしのべ、手を握ると、レイは顔が赤くなる。

「あっありがとう」 (ポッ)

 レイは立ちあがったが、手を離さない。シンジは困っている。

「あのー綾波、手を離して…」

「ごめんなさい、碇クン。歩けないの」

「えーー?」

 戸惑うシンジ、レイはしっかり握っている、赤くなりながら。

「どっどうしよう」

「…このまま、行きましょう」 (神様がくれたチャンスよ!レイ、ガンバッテ)

 偶然の出来事が神様がくれたチャンスになっている。

「えー?」

 大胆なレイに、暑くもないのに汗がでる。

「私、一人じゃ歩けない…」 

「そっそう?それじゃ校門までだよ」

「うん」 (え?教室までがいい)

 シンジは承諾したが、校門までなのは、誰かに見られたらどうなることかと、考えてのことだった。レイはこのまま教室へ行き皆を驚かせたいと、思っていた。

「綾波、走れる?」

「無理みたい」

 レイの手を取り遅刻が気になるが状態を見て、もはや遅刻だ!と心で泣いた。

(はー、遅刻か。まあ仕方ないか)

(ドキ、ドキ、碇クンと手をつないでいる。ウレシイ)

 レイの速度にシンジが合わせ、しっかり手をつないで学校に向かう。

「珍しいね、綾波が遅刻しそうになるなんて、どうしたの?」

「えっ、それは…」

 質問に戸惑いうつむくレイ。

「… … …」

「?何」

「…… ……」

「小さくて聞こえないよ」

 レイは顔を赤くしながら、聞こえる様に言った。

「碇クンの事を考えていたら、その…遅くなって……」 (ポッ・ポッ) 

「え?あ?そっそうなの」 (ポッ)

 レイの答えにシンジは驚く。 

「……」

「……」

「……」

「……」

 二人は顔がトマトのようになり、一言も喋らなくなった。しっかり手をつないだまま…。

 授業開始まで、あと五分…学校では。

遅い!あのバカシンジは、なにしてんのかしら

 アスカが荒れていた。

このことは登校〜アスカ〜編で

 通学路、授業開始3分前。

「…」

「…」

「…」

「…」

 二人は沈黙を守ったまま、まるで初々しいカップルの様に手をつないでいた。ふとレイはシンジの顔を見ると頬に、手形が付いていた。

「?碇クン、頬に手形がついてる。どうしたの?」

「あっこっこれは、そのー…」

 シンジは言いにくそうだ。レイは手形の跡をみて予想はついていた。

「どうしたの?」 (まさか?)

 レイの紅い瞳に見つめられ、シンジは渋々話す。

「はっはは、ちょっと今朝アスカに叩かれて」

「そうなの」 (やっぱり、どうして乱暴なのかしら)

 さすり、さすり、さすり

「これで大丈夫」 (ポッ)

!!あっ綾波

 レイは赤くなりながらシンジの頬をさすった。シンジはレイの突然の行動に赤くなり驚く。

 キ―ンコーン! カーンコーン!!

 チャイムが鳴り響く。

(遅刻だ…)

 チャイムが聞こえシンジは肩を落としたが、レイは落ち込んでいる姿を勘違いし頬をさする。

 さすり、さすり、さすり (ポッ・ポッ)

(碇クンが落ち込んでいる…アスカ…許せない…)

 レイの紅い瞳が、一層深みを増す。

「あっ綾波!もういいよ。大丈夫だから」

「ダメ!」

 さすり、さすり、さすり (ジュー)

 シンジの頬をさすっていることで、レイは頭から湯気をだしながら別の世界に飛びだっており3分間がたった。さすがのシンジも大きな声で。

綾波!わかったから!!

「はっ!碇クン。ごめんなさい」

 レイはシンジの声でようやく帰ってきた。授業は始まっている。

「もう、授業が始まっているから、早く!」

「うっうん」 (シクシク)

 レイの手を握りしめシンジは、少しでも早く行きたいが走ることができないので、早歩きした。

(碇クンが私の手を…) (ポッ・ポッ・ポッ・ジュー)

 オーバーヒート!世界が違うレイ。そんなことに気づかないシンジ。

 遅刻をし地獄が待ち受けているの知るよしはなかった。

 シンジがまだ着いていない教室ではアスカが回りの席の生徒を怯えさせながら、到着を待っていた。

(シンジ、どうなるか楽しみにまっていなさいよ)

「ふふふふ」

 不気味な笑いが、クラス中を震えあがらせる。

 クラスメイトはシンジが何をしたのか知らないが最期の別れと思った。

 やっと到着したレイ達は校門でとまった。

「じゃあ綾波、ここまでだから」

「え?」

 レイの手をシンジは離そうとする。がレイはいやがって離さない。

「綾波、まずいよ」

「…イヤ」 (教室まで)

「そんな、こんなとこ誰かにみられたら…」

 レイは涙を浮かべ。シンジは困っている。

「せめて下駄箱まで、…シクシク」

「えー?」 

 シンジは冷や汗をかいているが。レイの涙姿をみたら覚悟をきめて。

「わっわかったよ。下駄箱までだよ」

「うん」 (ウレシイ、残念だけど)

 満面の笑みを浮かべ、握る手も次第に強くなる。そんなレイにシンジは赤くなる。

 コソコソ、見つからない様に校庭を歩く。

「見つかりません様に」

(碇クンと…)

 そんな中、一人の少年が。

(あーあ、退屈だな)

 授業が退屈な少年は相田ケンスケ、あくびをしながら、ふと外を見ると。

!!!!!!」(あれはシンジと綾波、手をつないでいる)

 眠気が一気に吹っ飛び、歩く二人を観察している。

(シンジの奴、綾波と…しかしこんなとこ惣流に見つかったら地獄だぞ)

 ケンスケはアスカを盗み見たが退屈そうで寝そべっている。

(ひとまず安心だな。シンジめ!惣流がいるのに綾波なんかと……!!)

 何か思いついたのかケンスケの眼鏡が、妖しく光る。机からデジタルカメラを取り出し、二人の姿を盗みとる。

(そろそろ新しい機材がほしいとこだったからな、シンジに見せれば高くかってくれるだろう)

 音がしないデジタルカメラで何枚もとっていく。眼鏡が妖しい。

(シンジ悪く思うなよ)

「じゃあここまで」

「うん」 (グス)

 下駄箱につき、上履きに履き替える。

「僕は先に行っているから」

「え?」

「そうしないと、みんなに何を言われるかわからないよ」

「…わかった、碇クン。先に行って」 (…一緒にいきたい)

 シンジは教室に走っていく。後ろ姿を見つめ、レイは少し間をあけた。

(神様ありがとう、碇クンとの楽しい登校をかなえてくれて、今度もおねがいします)

(それから、また手をつなげますように)

(それから、一緒にお昼が食べられますように)

(それから、一緒に帰れますように)

(それから、一緒に夕ご飯を食べられますように)

(それから、…アスカに天罰がおちますように)

(それから、…………………

(それから、…………………

 レイの願いは果てしなく続く、ドリームワールド発生(レイの別世界)

 キーンコーン!! カーンコーン!!!

 一時間目、終了。

「はっ」

 チャイムに世界が戻る。

(いけない!早くいかないと)

 レイは30分以上、下駄箱で神様に祈り続けたのであった。


 一応、朝〜レイ〜の続編です。

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 登校 〜レイ〜