昼休みも終わり、シンジ達が教室に入った時、既に先生は来ていた。

幸いな事に国語だったので先生は担任のミサトだった。

「あら、シンジ君達遅いわよ。どこで何をやっていたのかな〜?」

ミサトはからかい口調でシンジ達に問い掛けた。

そして、その遅れてきたメンバーを見まわしてミサトは少し驚いた。

「あら、洞木さんまで一緒に遅刻するなんて珍しいわね」

「・・・・・・・・」

ヒカリはなにも言えなかった。

ミサトはふうっと息をついて言った。

「さあ、早く席に着いて。授業を始めるわよ」

「・・・はい」

シンジ達はミサトの言葉通り自分達の席についた。

レイも自分の席に戻ろうとしていた時だった。

「綾波さん、綾波さん」

ミサトはレイの肩をつつきながら小声でレイを呼んだ。

「なんですか?」

その声にレイが気付きミサトにたずねた。ミサトは他のみんなには聞えないぐらいの小さな声で    レイにささやきかけた。

「綾波さん。あまりシンジ君を独占すると、他の女子(一部の男子)が怖いわよ」

「え?」

そう言ってみんなに気付かれないようにみんなを見ると、女子のほとんどがレイの方を見ていた。

いや、見るというよりにらむと言った方が適切だろうと感じる。

レイは背筋にぞっという氷の流れるような感覚が走ったのでミサトにお礼を言うと急いで自分の席へと戻った。

授業中レイがふっと隣の席のシンジの方を見ると困った顔をしながら指を動かしていた。 

そう。メールの嵐がシンジを襲っていた。


            『想いよ届け』

               第2話   ユイの知人とその娘  


 

             キーン  コーン  カーン  コーン

6限目の終了を告げるチャイムが鳴り、生徒はようやく解放されたかのように            帰り支度をしている。もちろんシンジもそうだった。

シンジが帰り支度をしているとトウジとケンスケがこっちに来た。

「ようシンジ。一緒に帰ろうやないか?」

「うん、いいよ」

「久しぶりだしゲーセンに寄って行こうよトウジ」

「おー、いいなー。どや? シンジも来るやろ?」

「うん、行くよ」

「よっしゃきまりや。ほな、いこか」

トウジが振り向いた時、トウジの目の前には一人の少女が少しきつい目をして立っていた。      ヒカリであった。

「鈴原! 今週の週番はあなたと相田君よ。掃除が残ってるわ!」

トウジはそのヒカリに声を耳をふさいでいた。

「あー、もう、うるさいなぁー。教室なんて掃除せぇへんでも綺麗やないか」

「ダ・メ! さぁ、早く。ごめんね碇君。鈴原達今週週番なの。先帰っててね」

「あ、う、うん・・・」

「スマンなーシンジ」

「また今度ゲーセンいこうぜ」

「うん、分かったよ」

シンジがフリーになったことを知り、数人の女子達はシンジに何とか声をかけようとしていた。    シンジと一緒に帰るのが目的らしい。

そんな時だった。隣の席のレイが立ちあがり、シンジの方を振り向いた。

「ねぇ、碇君。一緒に帰ろう」

一瞬彼女達の動きが止まった。それもそのはず、レイはここにいる女子達が言えないでいた台詞を  あっさりと言ったのだから。

「うん、いいよ」

シンジはレイに返事を返し、レイと一緒に教室を出て行った。その様子を見ていた女子生徒達は    ただ、呆然と立ち尽くしていた。                                そして、トウジとケンスケとヒカリもその中に入っていた。

「あのふたり、けっこいいんとちゃうかな」

「・・・どう思う、委員長?」

「うーん、いい感じね」

そんな事を話していた・

 

学校の帰り道、シンジはレイと帰っていた。

「ねえ、そう言えば碇君の家ってどこなの?」

隣で歩いていたレイが話のついでに言った。

「あ、まだ言ってなかったっけ。コンフォートマンションだよ。ほら、               つい最近出来たばっかりの・・・」

そこまで言うとレイは驚いたような顔をしていた。

「あの高級マンション?」

「ううん、高級じゃないよ。普通のマンションとほとんど同じ料金だし・・・」

「そうなんだ。でも、部屋の数が普通のマンションより多いんでしょ?」

「うん。確かに普通のマンションよりは多いね。そう言う綾波さんはどうなの?」

「私は一軒家よ。碇君の住んでいるコンフォートマンションから、                 徒歩で5分くらいのところにあるわ」

「へー、一軒家か。いいなぁ・・・」

「でも、碇君の家も良いなぁ。ねえ、今度遊びにいっていい?」

「はは、部屋が片付いたらね」

冗談まじりにシンジは笑った。レイもそれを聞いて笑う。

「ふふふ。そんなに片付けてないの?」

「うん、大体僕が片付けてるんだけど、あとすこし・・・ね」

「へえ、お母さんはあ? 確か一緒に住んでいるのよね?」

「うん。だけど仕事で昼間は家にいないんだ。父さんはドイツに行ってるし・・・」

「そうなんだ。私の家もお母さんは昼間仕事なの」

「お父さんは?」

シンジからその言葉が出て来た時。一瞬、レイの表情が曇った気がした。

「いないわ」

「え?」

「お父さんはいないの。私が生まれる前に別れたらしいの」

「・・・そ、なんだ・・・。ごめん、変なこと聞いたりして」

「ううん、別に私は気にしてないわ。それにお母さんと二人の生活が当たり前だしね。        別に碇君は謝らなくても良いわ」

明るい声でレイはシンジに言った。シンジに心配をかけさせないためであろう。           その表情を見てシンジは少し安心した。

そしてシンジは他の話へとそらしながらレイと話しながら歩いて帰った。

そして、シンジとレイは今朝お互いがぶつかった所に来た。

「じゃあ、僕こっちだから・・・」

「うん、それじゃあまた明日、学校でね、碇君」

「うん、じゃあね」

「バイバーイ」

シンジはレイと別れ、一人でコンフォートマンションに向かって歩いた。              そう、これから訪れる訪問者の事も知らずに・・・。

 

「ただいまー」

誰もいないはずの家に声をかけるシンジ。誰に話しかけるわけでもなく、              ただ、いつもの日課になっているからだった。ユイはいつもこの時間帯は家にいないが、       いつもどうしてか言ってしまうのだった。そして、言った後、返事のしない家の中にと入っていく   が、今日は違った。

「おかえりー」

居間の方からユイの声がした。シンジが居間に行くと、そこには母親のユイの姿があった。

「あれ、母さん。仕事はどうしたのさ?」

ユイはシンジの方に体を向けた。

「今日はお休み。それよりシンジ、急いでここ片付けるわよ」

「え? なんで?」

「今日はお母さんの友達が家に来るから」

「ふーん、ってそれじゃあ、急がなきゃいけないじゃないか。                   それで母さん、その友達っていつ来るのさ?」

「えーっと、5時には来るわね」

「えー! あと、1時間しかないじゃないか! 急がなきゃ!」

シンジはそう言うと慌てて自分の部屋に戻ると急いで着替えを済まして、              居間においてあったダンボールから中身を出しては片付けていった。                ユイも他の部屋に積んである物を片付けていた。

 

その頃綾波家では・・・・・・

 

「ただいまー」

玄関を開ける音の後にレイの声が玄関に響いた。そして、その声に反応するように居間から声がした。

「おかえりー」

レナの声だった。レイは居間に上がると、ソファーでくつろいでいるレナを見つけた。

「あれ、お母さん仕事は?」

レナはいつも5時くらいまで仕事で帰ってこない。だが、今日はまだ4時になる頃だった。

レイが聞くと、レナは顔だけをレイの方に向けた。

「今日は仕事早めに終わらせて来たの。早めに終わらせて帰って来てたって行っても         ついさっきだけどね」

「へぇー」

レイがテーブルの上にあったせんべいをくわえながらそう言うと、レナは手元に注いでおいた     コーヒーに手を伸ばした。

「そうそう、レイ。今日はお母さんの友達のところにいくから準備してね」

「え? 私も行くの」

「当たり前じゃない」

「・・・いつ行くの?」

レイはあきらめたようにそう言った。明らかに自分が行かないといっても              今日は無理やりつれて行かれるだろうなぁ、と悟ったからだった。

レナは時計を見ながら「そうねー」と言っていた。

「5時くらいかな」

「で、どこに行くの?」

レイがそう言うとレナはふふっと笑った。

「行けば分かるわよ」

「?」

レイは疑問に思ったがそのまませんべいをくわえて部屋に戻ると着替えを始めた。

シンジの家とは違い、レイの家はただ向こう側にお邪魔しに行くだけなので準備も何もない。     着替え終わるとレイはレナのいる居間に行くと、コーヒーを飲んだりせんべいを食べたりと      のんびりしていた。

そして、4時50分になったときレナはレイに声をかけた。

「レイ、そろそろ行くわよ」

「うん」

レイはTシャツにハーフパンツという服装で、レナの後について家を出た。

レイはレナの隣を歩いていた。一体どこに行くんだろうと思いつつ、レナとたわいもない話をして   歩いていた。そして、レイが気が付いたとき、レイたちはつい最近出来た              コンフォートマンションの前に来ていた。

「・・・・ここ?」

レイが聞くとレナは「そうよ」、と言った。

「レイ、こっちよ」

レイが声のした方を見ると、レナはエレベーターのドアを開けて待っていた。            レイは急いでレナのいるエレベーターへと入った。

「えっと・・・確か5階だったわね」

レナはレイが乗ったことを確認すると、5階のボタンを押した。エレベーターの扉はすうっと閉まると上へと上がっていった。

5階につき、エレベーターのドアが開く。レナが先に降りて、レイが後に続いた。

5階には部屋が2つしかなかった。そのうちの近くにあったほうの表札には何もかかれていなかった。 まだ誰も住んでいないんだろう。

「ここよ」

レイが立ち止まって表札を見ていたときに、レナはもう一つのドアの前にいた。           レイは慌ててレナの方に向かった。

「ここ?」

レイはレナにそう聞いてから、表札を見た。そこには「碇」とかかれていた。

(碇って、もしかして碇君の家? そう言えば確か碇君コンフォートマンションに住んでるって    言ってたわよね。でも、もしそうだとしたらうちのお母さんって碇君の家とどんな関係があるの?)

レイは混乱していた。そんな事おかまいなしにレナはインターフォンを鳴らしていた。        家の中でピンポーンと鳴っているのが分かる。2、3秒ののち、ドアが開いて、           そこから一人の女性が出て来た。

「!」

レイはその女性を見てびっくりした。それもそのはず、出て来た女性は自分の母親、レナと      よく似ていたからだった。

「レナ、いらっしゃーい」

出て来た女性はこっちを見てにこっと笑った。

「久しぶりね、ユイ」

「さあ、あがってあがって」

ユイはそう言うと居間へと姿を消した。

「それじゃ、お邪魔します」

レナはそう言うと靴を脱ぎ、さっきユイが向かった場所へと移動した。レイもそんなレナを見て、   急いで靴を脱ぐとレナの後を追った。

レイが居間に上がると、ユイとレナはもうソファーに座って話をしていた。

「レイ、こっちにいらっしゃい」

レイはレナに呼ばれたとおりレナの横に行き、ソファーに腰を下ろした。

「レイちゃんね。はじめまして」

目の前に座っていたレナと良く似ているユイと呼ばれた女性は笑って言った。

「あ、は、初めまして。綾波レイといいます」

レイは丁寧に頭を下げた。レナはそのような自分の娘を顔をにやけながら見ていた。なぜかと言うと  普段のレイの態度からはめったに見ることが出来ない応対だったからだった。

レナの顔に気付き、ユイは大体を理解した。

「いいのよ、レイちゃん。そんなにかたくならなくても」

だが、そう言われても、「はいそうですね」と緊張を一気に解き放つのは無理である。

「あら、ユイ。あなたの息子さんは?」

レナは部屋を見まわしながら言った。

「ああ、今自分の部屋にいるわ。さっきまでここら辺急いで片付けてたみたいだから部屋で休むって。 今呼んで来るわね」

ユイはそう言って席をはずした。レイはユイが部屋から出て行ったのを見ると、           緊張の糸がほどけたのか、「ふう」、といってソファーに体を預けた。                そんなレイの様子を見てレナはレイに話しかけた。

「どうしたのレイ? なにかすごく緊張してたみたいだったけど?」

「だって、あの人お母さんとすっごくよくにてるじゃない。                    なんかお母さんが二人いるような感じがしてさ・・・」

「そう?」

「ねえねえ、お母さん。あの人とはどんな関係なの? 姉妹かなにか?」

「それはユイの息子さんが来てから言うわ。そんなにたいしたことじゃないんだけど、        ユイの息子さんがどう言う反応するか楽しみで」

レナはそう言うと口に手をやって笑っていた。                          レイはその姿を見て、さっきの人もこんな性格なのかな? と思っていた。

レイがそんな事を考えているとユイが部屋に戻って来た。                     レイはその姿を見ると慌てて座りなおした。

「今呼んだからすぐ来ると思うわ」

「そう。たのしみね、レイ」

「え、えっと・・・」

レイはしどろもどろしながら答えた。自分の母親が自分の心をよんでいるような気がしたからだ。   だが、それは全くの誤解だった。                                レイはもしかしたらその男の子がシンジかもしれないと思っており、                レナの方は、ユイの息子が息子がシンジと言う事は知っていた。が、                レイがシンジの事を知ってるとは思っていなかった。                       レナはただ、レイがこの男に対してどんな反応するか楽しみなだけであった。

「そう言えばゲンドウさんは? また出張?」

「そうなのよ。今度はドイツ。いつ帰ってくるのか分からないんだって。               まあ、仕事なんだからしょうがないけど」

ユイがふうっと息を吐いてそう言ったときだった。                        居間のドアが開いて、そこから一人の男の子が入って来た。                    レイはレナの影にいたので、その少年が入って来た事に気が付かなかった。             その少年もレナの奥に座っているレイの事に気が付かなかった。

「さあ、挨拶しなさい」

ユイがそう言うと、少年はレナの方を向いた。

「初めまして、碇シンジと言います」

その声を聞いて、レイは慌ててユイの影から頭を出し、その少年を見た。              少年もレナの方から顔を出した少女に気付き、そちらに目がいった。                そして、お互いが相手を確認すると、二人とも目を丸くした。

「あ、綾波さん!?」

「い、碇君!?」

 そんな様子を見ていたユイがシンジに声をかけた。

「ほら、シンジ。いつまでたってるの。こっちに座りなさい」

「あ、うん」

シンジはユイに言われたとおりユイの隣のソファーに座った。                   シンジの目の前には未だ驚いた表情をしているレイがいる。

「シンジ君。シンジ君はレイと会った事があるのかしら?」

「は、はい。学校で今同じクラスで、席も隣で・・・」

シンジは少し困ったように返答した。                              そしてシンジがレナの方を見たとき、開いた口がふさがらなくなった。

「あ、あれ・・・。母さんが二人?」

ユイとレナは笑っていた。シンジはその二人の様子をあっけに取られたように見ていた。

「ふふ、シンジ君。私達、よくにているでしょう?」

「は、はい。一瞬母さんが二人いるかと思いました。                       良く似てますけど、母さんとは姉妹ですか?」

レナはくすくす笑いだした。その様子をどうしたんだろうと言う目でシンジは見ていた。

「シンジ君、レイと同じこといってるわね」

「え?」

レイの方を見ると、こくんとレイはうなずいた。

「ふふ。私達は他人よ。他人の空似ってヤツかしら」

「私とレナが出会ったのは大学の時よ。その時、私もびっくりしたわ。               自分がもう一人いるとか思ってね。しかも歳も同じなのよねー」

ユイはくすくす笑いながら言った。

「あ、シンジ。まだレナ達にお茶出してなかったからお茶出して」

「紅茶でいいよね?」

「いいわ」

シンジは席を立ちあがりダイニングへと向かおうとした。                     その様子を見てレイも立ちあがった。

「あ、私も手伝うわ」

「いいよ。綾波さんはお客なんだから。それに僕いつもやってる事だし。              座って待っていてくれればいいよ」

シンジはそう言って、レイに微笑みかけた。レイはまたもやその微笑みに魅入ってしまう。

「じゃあ、まっててね」

シンジはそう言い残すとダイニングへと向かって行った。                     レイはまだぼーっと立ち尽くしていた。                               

「シンジ君っていい顔して笑うのね。レイ、いつまでたってるつもり」

レナに言われてようやく我に帰ると慌てたようにソファーに座った。

「それにしてもユイ。シンジ君大きくなったわね。顔立ちも良くなって・・・」

「・・・そうね、大きくなったわね」

ユイはシンジの出て行った方を見てそう言った。                         どことなくその目はさみしそうな感じをしていた。

「どうしたのユイ。まさかシンジ君・・・」

レナがそう言うとユイはゆっくりうなずいた。

「そう。やっぱりまだ直ってなかったのね・・・」

「・・・それどころか、ひどくなってるわ」

ユイは辛そうな声で言った。レナも暗い顔をしている。                      もちろん、レイには何を言っているかわからなかった。

「ねえ、お母さん。碇君ってどうかなってるの?」

レイがそう言うとレナはユイの方を見た。

「ううん、そうじゃないわよ。ただね・・・」

「?」

ますますレイには分からなくなった。そんな時、ユイが口を開いた。

「ねえ、レイちゃん。さっき話してたことだけど、シンジには言わないでほしいの・・・」

「どうしてですか?」

「・・・理由はもう少し先になったら話せると思うわ。お願い」

「・・・分かりました」

「ありがとうレイちゃん」

ユイの表情が多少和らいだ。それについで、レナの表情も和らいだ。                多分シンジには何かあるんだろうなと思ったが、ユイとレナのさっきの表情を見ると、        深追いしては行けない気がした。                                それにもう少し先になったら話してくれるって言ってたし。

「それよりレイちゃん。シンジの事どう思う?」

「え?」

いきなりの質問だったのでレイは反応できなかった。                       気が付くと、ユイは瞳を妖しく輝かしていた。

「え、えっと、優しくて、いい人ですよ・・・ね」

レイは戸惑いながら答えた。顔にはほんの少し赤みがさしていた。                 その様子を見てユイとレナはふふっと笑った。

「そうじゃなくて、好きか嫌いかよ」

「え?」

「だ・か・ら。シンジのことを好きか嫌いかってことよ」

語尾の後にはハートがついていた。

ユイがそんな質問をしたときだった。シンジがダイニングから戻って来た。

「はい、レナさんに綾波さん。それと母さん」

シンジはここでさっきまで自分の事について話題にされていたのも知らず、いつも通りの顔をして   レナとレイ、ユイにカップを配っていた。                            そして、最後に自分の分を取ると自分の場所へと座った。

「あれ、どうしたの?」

シンジは先ほどとは雰囲気が違うことに気が付いた。それにレイは顔を赤くしてうつむいているし。

「シンジ。よかったわねー、レイちゃんシンジの事嫌いじゃないみたいよ」

ユイは小悪魔のような瞳をしてシンジを見た。

「あ、か、母さん。何てこと聞いてんだよ!」

シンジの顔は一瞬にして赤くなった。                              チラッとレイの方を見ると、レイも顔を赤くしてうつむいていた。

「もう母さん、綾波さんが困ってるだろ。                            そ、そうだ。レナさん達は夕ご飯ここで食べますよね。                      母さん、スーパーに行って材料を買ってくるよ」

シンジは何とかこの場を切抜けようとしていた。                         そこで、レナ達が夕ご飯を食べるには材料が足りない事に気付いたシンジはそれを口実にしたのだった。

「そうね。それじゃ、よろしく頼んだわよ、シンジ」

「ありがとうシンジ君。ほら、レイも一緒に行きなさい」

「はーい」

レイはまだ少し赤みのある顔で返事をしてたちあがった。

「じゃあ、行ってくるよ」

シンジとレイは一緒に玄関を出た。

「・・・そう言えば、レイちゃん大きくなったわね」

「まあね。ユイが見たのは、レイがまだ2歳ぐらいのころだったでしょ」

「それぐらいね。あ〜あ、うちもあんな風にかわいい女の子がほしいなあ」

「あら、それじゃ、うちのレイはどう?                             シンジ君と結婚すればあなたの娘になるわね。                          まあ、その時は私も一緒についてくるけどねー」

「あら、いいかもしれないわね」

残った部屋の中ではユイとレナが冗談半分でいろいろな話をして盛り上がっていた。

 

シンジとレイはコンフォートマンションを出たところを二人で歩いていた。

「ごめんね綾波さん。母さんが変な事聞いちゃったみたいだけど・・・」

「ううん、別にいいのよ」

「そう? ならいいけど・・・」

レイは先ほどユイに聞かれたことを考えていた。

『シンジの事どう思う?』

『好きか嫌いかよ』

(・・・私はどう思ってるのかな、碇君の事。                           嫌いじゃないって事はわかるんだけど・・・。                          一緒にいると安心するし・・・。                                好き・・・なのかな? うーんわかんない。                           まあ、時間をかけて、私が碇君の事どう思っているか考えればいいかな)

これがレイの出た答えだった。

(そう、焦らなくてもいいんだ)

そして、レイが気が付いた時、シンジが横でレイの方を見ていた。

「大丈夫? 綾波さん。何かぼーとしてたみたいだけど・・・」

シンジの顔はまさしく心配していますと言った表情だった。

「あ、ごめんね。ちょっと考え事してたんだ」

レイはにこっと笑って答えた。

「それならいいけど・・・。じゃあ、時間もないし、行こうか」

「うん!」

シンジとレイはその後二人でいろいろなことを話して近所のスーパーへと向かった。         もちろんレイはユイに言われたとおり、約束を守った。

 

時刻は6時をさしていた。

家に残っているユイとレナは相変わらず紅茶を飲みながら話をしていた。

「そう言えば、シンジ君達いつ帰ってくるのかしらね。                      もう1時間になるんじゃないかしら?」

レナは少し心配なのか紅茶を飲んでいた手をひざの上に置いた。                  レナが心配していたのは、レイがシンジにさっきの事を話していないかどうかだった。        ユイもレナの表情からそれを読み取った。

「大丈夫よ。レイちゃんは優しい子でしょ。だったらシンジを苦しめる事はしないわ。        もう6時だし、もうそろそろ帰ってくるわよ」

ユイがそう言って紅茶を自分の口に持って行った時だった。                    玄関の方からドアの開く音がした。

「「ただいまー」」

そして、ドアの後にはシンジとレイの声が部屋中を満たした。

「ほらね」

ユイは紅茶を離すとウインクして言った。

「ごめん、遅くなっちゃった。今から急いで作るから。                      あ、綾波さんも休んでていいよ」

シンジはそう言うと買って来たものを両腕で抱えると、                      急いだ足取りでダイニングの方へと姿を消した。

「あ、碇君。私も・・・」

レイがシンジの後についていこうとしたときだった。後ろからユイに呼びとめられた。

「レイちゃん、シンジの料理の腕を見てやってほしいの。                     あの子の作ったものすごくおいしいのよ」

レイはその言葉に立ち止まった。                                確かに碇君の料理を食べてみたい。だけど手伝わなきゃわるいし。                 そんな事が頭の中をぐるぐる回っていた。                            が、結局はユイとシンジの言葉に甘えることにした。

「碇君はよく料理を作るんですか?」

レイは紅茶の入ったポットを取り、自分のカップに注ぎながら聞いた。

「そうね〜・・・。月曜日から金曜日までの夕食はシンジが作ってるわね」

「そうなんですか!?」

「ユイが勝手に作らせてるだけじゃないの〜?」

「違うわ。私は仕事から帰ってくるともう7時だもの。                      私が家に帰って来ると、もう、夕ご飯の準備は終わってるもの」

「いーわねー、シンジ君優しくて。                               うちも帰ってきたら、もう夕ご飯がつくってあったらいいなぁー(チラッ)」

レナはそう言うと意味ありげな視線をレイに向けた。レイもそれに気付いた。

「だ、だってお母さん帰ってくるの5時じゃない。碇君の家のお母さんとは違うじゃない」

「それはそうだけー・・・。                                  よし、それじゃあこれから月曜日と木曜日の夕食は、レイ、あなたが作る事に決定!」

「えー!」

レイは冗談でしょと思った。だが、反対しても無駄だとも思った。                 レイは仕方なくそれにしたがうことにしてしまった。

「あら、レイちゃん。ちゃんと料理が出来ないと将来不便よ。                   まあ、でも料理ができる人と一緒になれればいいかもしれないけど・・・」

料理ができる人? とっさにレイはシンジを思い浮かべてしまって顔を赤くした。          ユイとレナはその様子を見て小悪魔のような瞳になり、その瞳を輝かせた。

「あら、ユイ。そう言えばシンジ君って確か料理がうまいんじゃなかったかしら?」

「そう言えばそうだったわー」

ユイとレナは明らかに不自然にレイに向けて言った。                       レイはますます顔を赤くしてしまった。

「んもうー、レイちゃんったら冗談よ、じょ・う・だ・ん。気にしないで」

それでもレイは顔を赤くしたままだった。

「んー、でもレイちゃんみたいにかわいい娘だったらシンジは喜ぶわねー。             それにかわいい娘ができると私もうれしいしね」

ユイは持っていた紅茶の入ったカップをテーブルに置くとレイの方を見た。             レイは相変わらず顔を赤くしたままだった。                           結局その後、レイはそのまま考え事をしていたのでユイとレナの会話には入らなかった。

 

そしてそのまま話しが続いていた時だった。

「母さん、ご飯で来たよ。レナさん達もどうぞ」

ユイ達は話に夢中で気が付かなかったが、                            いつのまにかキッチンで夕ご飯を作っていたシンジがそこにいた。

「もうそんな時間?」

ユイが時計を見ると時計の針は7時10分をさしていた。                     そして4人はダイニングへと向かった。

そして、そこでレナとレイは夕ご飯を見て目を丸くして固まってしまった。             それもそのはず、そこにはフルコース並の料理の品々が並べてあった。               そして、一人一つずつあるグラスにはワインが注がれていた。

「す、すごい・・・」

「こ、これ、シンジ君一人で作ったのよね・・・」

レナは口をぱくぱくさせながら聞いた。

「はい、そうですけど・・・?」

「シンジ、またすごいの作ったわね・・・」

ユイも内心驚いていた。

「はは、そうだね。そうそう、ワイン注いどいたけど一杯ぐらいだったら僕達もいいよね。      さあ、席はどこでもいいよ」

シンジがみんなに席をすすめると、レイ、レナ、ユイはそれぞれ適当に席についた。         そしてシンジも余った席へついた。                               長方形のテーブルだったのでシンジの隣にレイ、シンジの前にユイ、その隣にレナと言う席順になった。

「じゃあ、冷めないうちに食べようよ」

「そうね。・・・それじゃ、いただきます」

「「いただきます」」

ユイの言葉に続いてレナとレイが続いて食べ始める。                       シンジはそんな三人の様子を心配そうな目で見ていた。

「・・・・どうかな?」

「ねぇ、碇君・・・。これ・・・」

「え? なにか味がおかしかった?」

シンジの顔は一瞬にして不安の色に染まった。

「何でこんなにおいしく作れるのぉー?」

「・・・これはおいしいわ」

レイは苦悩し、レナは深々と感心していた。                           シンジはというと、レイとレナのそんな感想を聞き、ほっと胸をなでおろしていた。

「よかった・・・」

「ねぇシンジ君。この料理って誰かに教えてもらったの?」

「教えてもらったって言うか、前に本で出ていたのでそれを覚えておいたんですよ。         それで本通りだと工夫も何もないから、自分なりに少しアレンジしてみたんですけど・・・」

レナはまたまた感心していた。

「へぇー、それにしてもおいしいわこれ」

「ありがとうございます」

「ユイ、いいわねー、毎日おいしい料理が食べられて・・・」

レナは隣に座っているユイの方を見た。

「うらやましい?」

「もちろんよ!」

レナは今度はレイの方を見た。                                 その目は先ほどの会話の続きを訴えていた。                           レイもそれに気付き、思い出したように顔を赤くした。                      そんな自分の娘の様子を見てレナはシンジの方に視線を移した。

「シンジ君、レイをよろしく頼むわね」

「は、はぁ・・・」

シンジは全くと言っていいほど話を理解していなかった。

「そうだシンジ君。この料理のレシピを教えてもらえるかしら?                  あと、なにか普段作るような料理のレシピも一緒に・・さ。ね?」

「え? 別にいいですけど。ちょっと時間がかかりますよ」

「別に構わないわよ。ありがとう。                               うちもちょっと本当に料理を教えなきゃいけない人がいるもんでね」

レナはそう言って目をレイの方向に移した。

「お母さん、それって私の事でしょ。                              まあいいけどさ、本当の事だし。ちゃんと料理覚えなきゃいけない見たいだしね。          ごめんね碇君。変なお願いしちゃって・・・」

「ううん、大丈夫だよ」

シンジはレイに笑いかけた。レイもシンジの顔を見て笑った。                   そんな二人の様子を見て、前に座っている二人の親、ユイとレナも意味ありげに笑った。       そしてシンジ達4人は、楽しい夕食のひとときを過ごした。


 あとがき

こんにちわRei-Sinziです。

第1話。ちょっと改行が変な風になっていました。心から謝罪いたします。

もう直したのでじっくり見てやってください。(でも1箇所直らなかったとこが・・・)。

今回の作品。自分では何とかうまくまとまったかなって感じがしますね。

レイも今回は自分の思ってたようにかけました。

さてさて、どっちが主人公なのやら・・・。

多分両方ですね(笑)。

さて、楽しい夕食時を過ごしている4人。ワインを飲んでもいいのか!?(お酒は二十歳になってから)。

次回も楽しみに待っててください。

感想とかも送ってほしいです。

それでは、第3話で会いましょう。


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