シンジがけだるい眠りから目を覚ますと、眼前には広大な天井が広がっていた。 「・・知らない天井だ・・」 白い天井を眺めながら、昨日の出来事を追憶する。 「・・とれないや、血の匂い・・」 何の血かは、置いといて・・。 シンジは取り合えずシャワーを浴びるため、起き上がろうとした。だが―― 『ん? なんだ、これ?』 何やら柔らかくボリュームのある物が、シンジのからだを拘束している。 「? ! う、うわーー!」 それを確かめようと横を見やると、そこには青い髪の少女がくっついていた。 すうすうと穏やかな寝息を立てて、幸せそうな表情で眠っている。 「な、なんで綾波がここに・・」 昨日は確かに一人で眠りについたはずだ・・だがいつの間にやらとなりにレイ がいる。 「綾波、起きて・・はうっ!」 レイを起こそうと手をかけたシンジだったが、その時初めてレイの現在の格好 に気が付いてしまった。 「は・・はだか・・」 シンジの右腕にしがみついているレイは、衣服を一切身につけていなかった。 プッと鼻血を拭きそうになる。 昨日散々見たとはいえ、見飽きるわけもない多感な14歳のシンジ君であった。 『ま、まずい、このままでは・・』 またしても暴走してしまうかもしれない。すでに身体の一部にビッグバン的大 異変が起きかけていた。 とにかく離れよう・・そう考え、何とかレイを引き離そうとする。 だが、シンジが離れようとすると、レイは不安げに眉根をよせて、まるでいや いやをするかのように頭をシンジの腕にこすり付けた。 「か・・可愛い・・」 そんなレイの様子を見て、シンジは再び理性に羽が生えはじめる。肩がぷるぷ ると小刻みに震え出すシンジ。彼の右手は、いつものにぎにぎ運動を開始して いた。 「僕は・・僕は・・僕は・・僕は・・僕はっ!」 何回かの開閉運動・・そしてついにっ! その拳が、ぐぐぐっと力強く握り締め られた! 「綾波――!」がばちょっ
◇ ◇ ◇ 「シンジ君、再起動!」 発令所でモニターを眺めていたマヤが、緊迫した声で状況を伝えた。 「朝だからねぇ」 ミサトがにやりと笑い、手に持ったえびちゅをぐびびっと飲む。彼女の足元に は、すでに数個の空缶が転がっていた。 「シンジ君とレイのシンクロ率、90を超えています! 現在なおも上昇中!」 「昨日10回もシてこの数値か・・」 「シンクロ誤差は0、2%以内・・すごいわね」 押さえ気味ながらも感嘆したような声を出すリツコ。 「しかしあんなに疲れ果ててたのに、よくまた乗る気になりましたね、シンジ 君」 感心したような声を出すマヤ嬢。 「己の欲望に忠実に従う、それが彼の秘められた本性なのよ」 「いや、それ以前にわっかいからじゃないのぉーー?」 ミサトは朝からビールをかっくらってご機嫌だった。 「確かに・・回復力、そしてハリと大きさは父親以上ね・・(ぽっ)」 頬を染めながらモニターを観察するリツコ。いったいなにを思い出しているの か・・。 「先輩! 不潔ですぅ」 マヤが涙目で抗議の声を上げる。だがリツコは聞いちゃあいなかった。 「問題は持久力か・・」 ぽつりと呟く彼女の目が、薄い光を放った。 ◇ ◇ ◇ そのころ司令室では・・ 「始まったな・・」 「ああ、すべてはこれからだ・・」 お決まりのゲンドウポーズをとってはいたが、脇に立つ冬月だけが彼の鼻から 鼻血が垂れているのを確認していた。 『この私ですらユイとシンクロするのに7ヶ月もかかったというのに・・もは や父を超えたか、シンジ』 ゲンドウは息子の性・・じゃなかった、成長に感涙していた。 「思えば長かった・・」 感極まった声でしみじみと語り出すゲンドウ。 「ユイを失ってから苦節10年・・シンジにも逃げられて、その寂しさを紛ら わすために科学者親子をどんぶり食いしたりもしたが・・」 なんとも外道なおやぢである。 「約束の日は近い・・。順調に行けば11ヶ月後ぐらいだな」 今度はにへらーと笑うゲンドウ。相変わらず驚異的な不気味さだ。 『おじいちゃん、なんて言われた日にゃーこんちくしょうめ!』 どうやらその数年後までシミュレートしたらしい。またしてもトランス状態に 入ってしまったゲンドウ。彼はラリった目でよだれを垂らしていた。 「そっ,そういえば『人類補完計画』の方はどうなってるんだ? 碇」 いっひっひっという不気味な笑い声に少し引きながら、冬月が思い出したよう に尋ねた。 「ふっ、問題無い。予定通り2%も進んでいない」 胸を張って自信たっぷりに答える。 「・・それってまずくない?」 「・・やっぱりそう思う?」 両の頬に人差し指を当てて、てへっと笑うゲンドウ。迂闊な事に冬月先生は、 その仕種にときめいてしまった。 『ユイ君、こいつの可愛いところって、こんなところかね?』 この男に一生ついていこう・・あらためて冬月先生はそう決心した。 ◇ ◇ ◇ こちらは現在会議中のゼーレの老人たち。 「ネルフ、そもそも我らゼーレの実行機関として結成されし組織」 「我らのシナリオを実践するために用意されたもの」 「だが、今は一個人の占有機関と成り果てている」 「かなり私的に使われちゃってるよね」 「左様」 「我らの手に取り戻さねばならぬ」 「そろそろ本腰入れないとまずいって」 アドリブを随所に加えつつも、手元にある台本通りセリフがかぶらないよう慎 重に言葉を紡いでいく老人たち。さすがにイメージカラーまで決まっている方 々は一味t違う。 「それにしても、何を考えているのだ、碇の奴・・」 「我らに協力すると見せかけていたのが、まさか己の老後のためだったとは・・」 不意にキールがぽつりと呟いた。 「ゲンドウだけに、言動不一致・・・・・・ぶっひゃっひゃっひゃっひゃ」 『うわっ、センス、イケてねぇーーっ!』 議員たちのつっこみが、心の中で唱和した。 「そ、そもそもあの男にネルフを任せたのが間違いではなかったのか?」 何とか立て直しを図る老人たち。 「てゆーか誰よ、あいつに任せちゃったの?」 急にインフォーマルになる眼鏡じじい。 その言葉に、一同の視線がキールを射抜いた。 「キール議長、なぜあのような男に・・?」 「奴に何かされたのかね?」 「はうっ! そ、それは・・・・」 『いーじゃんかよう、俺にくれよう、秘密組織の一つや二つ。ああーーん?』 じょりじょりじょりじょりじょりじょりじょりじょりじょりじょりじょりじょり 『ぎゃあーーっ! やめろ碇いぃぃーーーーーっ!』 「ひ、髭が・・髭があぁぁぁーーーーーっ!」 何やら突然トラウマってしまったキール議長。どうやら思い出したくない話題 に触れられたらしい。手元にあった般若心経を3回ほど暗誦して、何とか落ち 着きを取り戻す。 「色即是空、空即是色・・ふうー。い、今はそんな事を議論している場合では ない。何としても奴の計画を頓挫させなければならぬ」 「・・なんで?」 「悔しいから」 きっぱりと言い切る。あまりに己の心に正直なキール議長。その簡潔明瞭、か つ男らしい態度に、老人たちは涙を流して感動した。 「とりあえずは碇の息子とその相手の少女との仲を引き裂くのだ」 錆びた鋼のような声で、重々しく口を開くキール。 「だがどうやって?」 「まさか待機中の『SAL』を使うのか?」 「いや、『SAL』ではまだ実践(実戦にあらず)に耐えんだろう。ここはア レを投入する」 「なっ!? アレを使うのか? あまりに危険だぞ」 「そうだ、リスクが高すぎる」 口々に異議を唱えるメンバー達。だが――― 「うるさい、うるさぁーい!」バシュー
キールのバイザーが怪光線を発した。慌てて沈黙する老人達。以前10ヒット コンボを食らってしまった苦い経験を、みな忘れていなかった。 「あの外道と、その外道の息子に対抗するには、や○い機関を搭載したアレし かないっ!」 口から泡を飛ばして力説する。ついでに入れ歯まで飛んでしまったのはご愛敬 である。 『ふっふっふ、待っておれよ、碇。はっはっはっは』 もごもごと口を動かす。彼は喋れなくなったため、心の中だけで高笑いを上げ ていた。 ◇ ◇ ◇ とある部屋の中。一人の銀髪の少年が、その身を悶えさせていた。 「ああ、待っていてねシンジ君。僕と身体も身体も身体も身体も身体も身体も 身体も身体も身体も身体も身体も身体も身体も身体も身体も身体もおまけに心 もひとつになるその日を・・」 陶酔しきった表情で、くねくねと身体をくねらす。どこからどう見ても、ただ の危ない奴だった。 なにやら怪しげな生物に狙われているらしいシンジ。 彼の運命やいかに・・。
それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。