未来少女レイ
第五話
再会
「とにかく、これから、どうするか・・ね」
深夜の闇に紛れて、第三新東京港からエンジン音を消しながら、ゆっくりと出港
したバラクーダ号の船室の中、リツコさん、ミサトさん、アスカさん、僕の4人
が、船室の中央に置かれた机を囲んで、顔を突き合せる。まずは、リツコさんが
今後の方針を相談すべく、口を開く。
「なにか、意見、ある?」
「・・・・」
勢いに任せて、反逆の狼煙とともに、脱走を決行してみはしたものの、やはり、
思い付きでの行動という感はいなめないな・・・
「まぁ、まぁ、そんなに深刻にならないでさぁ〜、こういうときは、プアぁ〜っ
と」
気楽なのは、先程からビール片手に、すっかり出来上がってるミサトさんだけ・・
「はぁ、アンタは気楽でいいわねぇ」
「いいでしょ?別に。まだ、追手が迫ってるわけでもないんだし」
「それも、時間の問題ね」
「・・・やっぱり来るわよね?」
「そりゃあね、こっちには、シンジ君がいるんだもの」
「気づかれるまでに、どこまで離せるかが勝負ね。まっ、アスカ様の操舵術、み
せてあげるわ」
「期待してるわよ、アスカ」
「まっかせておいて、ひとまず、例の島に向かえばいいんでしょ?」
「そうね、ひとまず、その女の子とも、合流しておかないと、危険だわ、その子
が・・・」
「え?危険?」
「そうよ。私が局長なら、その子を人質にして、アナタを取り戻すわ」
「そんな!レイさんを人質になんて!」
「大丈夫、そんなことは、私たちがさせないわ」
「そうよ。ふたりは、私たちの希望だもの」
「え?」
希望って?僕が疑問に思っている間もなく、アスカさんがスクッと立ち上がる。
「さて、じゃあ、とりあえず、アタシは、操舵室に戻るわ。細かい戦略は任せた
からね。あ、シンジ!アンタは、ちょっと、こっちを手伝いなさい」
「え?う、うん。わかった」
◇ ◇ ◇
「さて、どうするの?」
船室に残ったのは、リツコとミサトのふたり。リツコがミサトに話し掛ける。
「そうね」
「逃げ回る?」
「それじゃ、勝ちはないわね」
「じゃ、やるのね?」
「それしかないっしょっ?」
「まーね。でも、勝算は?」
リツコはそういうとミサトから受け取ったビールの缶にひとくち、口をつける。
「・・・あるわけないか」
「まーね」
ミサトは、ビール缶を口にくわえたまま答える。
ガタッ
「誰?!」
「いやぁ、とんでもない船に乗りあわせちまったな・・・沈みゆく船か・・・」
「加持くん!」
「・・・アナタ、なんでこんなとこいるのよ?」
「そりゃあ、ご挨拶だな、ミサト。俺たちゃあ夫婦だぜ?とも白髪まで、とは・・・
どうもなれそうにないがな」
「・・・それで、後つけてきたってわけね?」
「まーな。だって、自分とこの奥さんが夜中に、こそこそ、どっかに行くんだぜ?
ひっじょうぉ〜に、気になったものでね。ほら、俺って、やきもち焼きだからさ」
「はぁ・・・コイツは、なにをいってるんだか・・」
「あは・・はは・・ははは・・えと・・私、お邪魔かしらね。ちょっと、席はず
すわね」
「リ、リツコ、いいのよ。こんな奴」
慌てて引き止めるミサトの言葉に、リツコはニコリと微笑んで席を外す。ミサト
は、仕方なしといったそぶりで、その突然現れた愛する密航者に向き直る。
「・・・・で、どうしろっていうの?」
「別に、どうもいわないさ。葛城の好きにすればいい。ただし、俺もついていく。
それだけさ」
最後に、にやりとニヒルな笑みを向けて、加持が答える。
「はぁ〜、わーったわよ。んじゃあ、聞かせてよ、アンタの考えを・・・」
◇ ◇ ◇
話の都合上、この辺で、登場人物の紹介をしておこう。もちろん、第壱話から、
しっかりと読んでおられる懸命な読者諸兄には、ある程度、明らかなこともある
が、ひとまず、復習ということで・・・
まず、このお話の主人公「レイさん」。名字は不明、あるいは無し。14歳。
大異変によって独り"残され島"に取り残された科学者によって生み出された人工
生命体。性別は、ひとまずは女。残され島に漂流してきたシンジに出会い、自分
の中に生まれたシンジへの恋心に戸惑いながらも、生みの親の死後もひたすらシ
ンジの帰りを待ちつづける。
実は、サードインパクトの鍵を握っている少女か?!
シンジを想う強いココロが彼女の秘めた能力を引き出すのか?!
次に、碇シンジ。大異変のあと、人類の復興を目指した"人類補完計画"の要とな
る人造人間"エヴァンゲリオン"の唯一のパイロット適格者。14歳。
厳しい起動実験に耐え切れず、海上での運用実験中、逃亡を図り、残され島にて
レイと出会うも、カヲル率いる追跡隊に逮捕され、連れ戻される。その後、リツ
コ、ミサト、アスカとともに、再び脱走、反逆を企てる。
惣流アスカ。輸送船バラクーダ号の船長。24歳。エヴァの海上実験用の臨時ドッ
クとしてバラクーダを操るも、シンジ逃亡の責任を取らされ、現在無期限謹慎中。
渚カヲル。第三新東京市行政局次長。24歳。クローン技術によって生み出された
人工生命体。シンジ追跡隊の隊長として、シンジを逮捕するも、シンジとレイの
愛のチカラを目の当たりにし、困惑する。
葛城ミサト。人類補完計画作戦部長。シンジの直属の上官。実は、優秀な戦略戦
術参謀。29歳。
赤木リツコ。エヴァの誕生に関わった科学者。29歳。
加持リョウジ。第三新東京市行政局局長付きの諜報機関所属。29歳。ミサトとは
夫婦。(なお、当時は夫婦別姓が一般的)
母さん。シンジの母親。
ドンゴロス。バラクーダ号下士官。アスカの頼りになる相棒(つっこみ担当)
局長。第三新東京市行政局局長。謎の黒幕。
おじい。大異変の際、残され島に取り残された科学者。レイの製造者。不発弾の
誤爆により死亡。
と、このくらいが、おそらくここまでの主な登場人物である。一部、本文では書
ききれなかった内容もあるが、ひとまず、そういうことなのである。さて、これ
で、筆者もだんだんと話を思い出してきたところで、本文に戻ることにしよう。
◇ ◇ ◇
リツコが席をはずし、加持とミサトは真剣な顔で密談を始めた。その内容は、お
いおい、明らかにするとして、ここは甲板の上である。
「うわぁ〜・・・とっとっとっと・・・」
つづく
あとがき
ども、筆者です。
第五話、再開・・・も、もとい、再会をお届けしました。
いやぁ、いったい、いつ以来でしょう?
第四話のあとがきでは、なんか、
「申し訳ないけど、1カ月ほど、間があいちゃった」
なんて、ほざいてますねぇ〜・・・いやぁ、若かった(笑)
・・というわけで、今回は、多分、1年以上、間が開いちゃってます(^^;
だって、戦争なんて、書けないんだも〜ん♪(ヲイヲイ)
それでは、
もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、
そして、もしかして、筆者の他の作品も読んで下さるとして、
また、どこかで、お会いしましょう。