今日は雨・・・午後から、突然降り出した雨・・・

放課後の学校の玄関。少女は、空を見上げて、立ち尽くす。蒼銀の短い髪が水
分を含んだ空気に包まれて、しっとりと垂れる。少女は、傘もささずに、一歩、
玄関から、足を踏み出す。
 
「あ、綾波・・」
「・・・なに?」

少年に呼びとめられ、少女は、振り返る。
 
「そ、その・・・雨だよ」
「・・そうね・・それで、なに?」

少女は、なぜ、少年が話しかけて来たのか理解できずに、無表情のまま、少年
に、問いかける。少年は、頬を赤く染めて、緊張したように、少女に話しかけ
る。
 
「なにって・・綾波は傘もってきたの?」
「ないわ」
 
「じゃ、じゃあさ。よかったら、僕の傘を・・」
 
少年は、少女に傘を差し出す。少女は少し戸惑ったような表情で傘を見つめ、
そして、少年の顔に視線を移す。
 
「あなたは、どうするの?」
「ぼ、僕は、いいんだよ。その・・走って帰るから・・」

少年は、顔を耳まで、真っ赤に染めて、そういうと、うつむいて、黙りこむ。
少女は、少年の態度を不思議そうな表情で、見つめる。少年の口から、微かな
言葉が洩れる。
 
「その・・・綾波は、女の子だから・・・」
 
「女の子・・・」

「じゃ、じゃあ、明日返してくれればいいからね」
 
少年は、少女に傘を押しつけるように手渡すと、少女に背を向けて走り出す少
女は、少年の背中を見つめながら・・・
 
「女の子・・・わたし・・・」
 
「・・・碇・・くん・・・」
 
少女の瞳から、ひと粒の涙が・・・
 

    ◇  ◇  ◇
 
 
「碇くん・・・」
「う、うん」
 
翌日の放課後、少女は少年に傘を返す。少年は、照れた表情で、傘を受け取る。

「あの・・・」
「・・・なに?」
 
「う、うん・・その・・」
 
少年は、少女になにか話かけようとして、口ごもる。
 
少女が口を開く
 
「わたしは・・・女の子」
「え?」
 
「どういうこと?」
「う、うん」
 
「弱い存在ということ?・・・だから、傘をかしたの?」
「・・・・」
 
少女は、淡々と少年に質問する。少年は、再び黙りこむ。少女の瞳の奥が、悲
しみを含んだように、揺れる。
 
「そういうことなのね・・・・」
「ち、違うんだ!」

少年は、慌てたように答え、そして、うつむく。
 
「わたし・・・わからないから・・・」
「それは・・その・・・ひとつ、言葉が抜けたんだ」
 
「・・・・」
 
「僕の好きなって・・・」
 
「好きなんだ・・・綾波が・・・」
 
少年は、顔をあげる。少女の瞳には、やはり涙が・・・
 
「だめかな?ぼくじゃぁ・・・綾波をまもれないかな?」
 
少年の問いに、少女は、無言で涙を流す。
 
「ごめん・・でも、守りたいんだ。綾波を・・・」
「・・・・」
 
「お願い、もう、泣かないで」
「わたし・・・泣いてる・・・でも、わからないから・・」
 
「いいんだよ。わからなくても」
「碇君・・・」
 
「守らせてくれるね。綾波」
 
少女は、黙って、少年の問いにコクンと、小さくうなづく
 
「ありがとう、綾波・・・」
 
いつのまにか、少年の瞳にも涙が浮かぶ・・

少年は、少女をひきよせ、強く強く抱きしめた少女は、一瞬からだをこわばら
せたが、少年の暖かい温もりを感じて安らかな気持ちで、少年の腕の中に身を
ゆだねる
 
少女の瞳には、やはり、涙が・・・
 
「綾波・・・また、雨が・・・」

つづく


あとがき

はい、筆者です。

本編系レイとシンジの純愛・・・いいですねぇ・・

実は、ほとんど、掲示板への書き込みなんだけど、
なんだか、気にいっちゃったので、ちょっと、書き足して、
短編にしちゃいました。

最後にまた、雨が・・・このあと、ふたりは・・・
想像するだけで、たのしいですね。

というわけで、物語は、つづきますけど、書きません。
そして、背景も書きません。

なんだか、いい感じ・・・それだけで、いいのかもしれないと思うから・・・

久しぶりに、感傷に浸っています。

皆様にも、そんな雰囲気が伝われば、いいなと思うのですが・・・

それから、カヲル♪さんへ、

すいません。なんだか、使い回しを、贈っちゃって(笑)
でも、気に入って戴ければ、いいなぁと思います。

これからも、投稿させてもらいますから、よろしくねぇ♪

それでは、

もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、
そして、もしかして、筆者の他の作品も読んで下さるとして、

また、どこかで、お会いしましょう。


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