レイが好き!増刊号
第六号
青き衣

ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は
数百年のうちに全世界に広まり
巨大産業社会を形成するに至った

大地の富をうばいとり大気をけがし
生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は
1000年後に絶頂期に達し
やがて急激な衰退をむかえることになった

「火の7日間」と呼ばれる戦争によって
都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し
複雑高度化した技術体系も失われ
地表のほとんどは不毛の地と化したのである

その後産業文明は再建されることなく
永いたそがれの時代を人類は生きることになった



滅亡した過去の文明に汚染された不毛と化した大地に生まれた新しい生態系の
世界・・・・腐海・・・・蟲たちのみが生きる有毒のショウ気を発する巨大な
菌類の森にいま地表は静かに覆われようとしていた。

巨大産業文明の群が時の闇の彼方に去ってより千年・セラミック時代終末期風
の谷は海から吹きぬける風によってわずかに腐海の毒から守られる辺境の土地
であった。


    ◇  ◇  ◇


この重々しいナレーションとは、対照的に、美しい菌類の森・・・・腐海・・・・
そして、そこへ、凧・・・・メーヴェという・・・・にのって現れ、胞子を採
取する少女。

そして、少女は、腐海の主、巨大な王蟲の抜けガラを発見する。そのうえに横
になり、まるで雪のように降る胞子を見ながら、少女は考える。

『王蟲はこんな眼を14ももって・・・どんなふうに世界をみているのだろう・・・』

『きっとこの黒い森をなつかしくあたたかい世界と思ってるんだわ』

『私たちがマスクをつけずに入ったら5分で肺が腐ってしまう死の森なのに・・・』

そんなところから・・・・この・・・・『風の谷のナウシカ』は始まる。そし
て、この少女・・・・風の谷の族長・ジルの娘・・・・ナウシカの物語が始ま
る。

ナウシカは、採取した胞子を地下室で育て、そして、清浄な土と水で育てた木
々はショウ気をださないことに気づく・・・・腐海の謎・・・・

「汚れているのは土なんです・・・・」

人類は大地を汚し・・・・そして・・・・滅亡していく運命なの?もう、誰も
傷つけたくないのに・・・・そんな、思いの中・・・トルメキア・・・・東方
の大国・・・・戦役が勃発する。

族長の娘として・・・・古い盟約のため・・・・谷の自治のため・・・・ガン
シップの戦士として、ナウシカは、トルメキア戦役に参戦する。

腐海の勢力が、ほとんど及んでいない大国・トルメキア。そして、腐海に飲み
込まれつつある大国・土鬼(ドルク)。その2大国の争いに、辺境の国々は巻き
込まれていく。

そんな中、ナウシカは、辺境の工房都市・ペジテの王族の少年・アスベルに出
会う。アスベルは、ガンシップを駆って、トルメキアの編隊へ攻撃を仕掛ける。
トルメキア軍は甚大な被害を被りながらも、ガンシップを撃沈。アスベルは、
そのまま、ガンシップごと、腐海へ落ちていく。

ナウシカも、トルメキア編隊の一部であった。アスベルの攻撃によって、バー
ジとの牽引が切れ、仲間を救出するため、ナウシカも腐海へと下降する。

蟲たちの心からアスベルが生きていることをしったナウシカは、仲間を救出す
ると、メーヴェを取り出し、一人、腐海へと消える。

迫り来る蟲たちと格闘するアスベル・・・・そんな、アスベルを、ナウシカは
必死に救出する。

「君は殺しすぎた・・・・もう、光弾も蟲笛もきかない」

そんな状況の中、二人をのせたメーヴェは必死に逃げる。

眼の前に巨大な王蟲が現れる。避けきれない!必死で、急上昇するナウシカ。
しかし・・・・・

落ちていくナウシカを、王蟲の蝕手がキャッチする。そして、静かに地面へと
ナウシカを下ろす。アスベルは、ナウシカにかけより、マスクを・・・・ナウ
シカのマスクはさっきの衝撃で外れてしまったので・・・・自分のマスクを外
して、ナウシカにつけさせる。ナウシカは気を失ったまま・・・・

「キケ・・・キケ侵略者ヨ」

『王蟲がしゃべっている・・・・』

「ソノ小サキ者ハ死ナナイ・・・オマエハタクサン殺シタ・・・・ダガ小サキ
者ガ殺スナトネガッテイルカラ・・・・オマエヲ殺サヌ・・・・タチ去レ侵略
者ヨ」

「小サキ者・・・・ワガ一族ハ、オマエヲ昔カラ知ッテイルヨ・・・・ワガ一
族ハ個ニシテ全、全ニシテ個、時空ヲ超エテ心ヲ伝エユクノダカラ・・・コノ
森ハモハヤワレラヲ必要トシテイナイ・・・・遠イ南ノ森ガ救イヲ求メテイル
・・・・行カネバナラナイ・・・・サラバ、小サキ者・・・」

王蟲は、それだけ、悲しげにイメージを伝えると去って行く。

ナウシカは、夢を見ている。幼い頃の思い出を・・・・

「王蟲の妖生だ・・・やはり・・・蟲にとりつかれていた・・・こっちへわた
しなさい」
『イヤッ!なにも悪いことしてないのに!!』

「蟲と人とは同じ世界にはすめないのだよ」
『イヤイヤ!!』

「殺さないで!!・・・・おねがいい・・・・」


    ◇  ◇  ◇


眼を覚さます・・・・ここはどこかしら?・・・・ふしぎなところ・・・・・
そこは、腐海の底。綺麗な水がながれ、生命を全うした木々が石になった世界。

『石になった木が砂になって降りつもってるんだ・・・・きれい・・・・なぜ
かしら、とても、安らかな気持ちになってる』

ナウシカは砂の上にうつぶせになって大地に頬をあわせる。

「・・・・泣いてるの?」
「うん・・・・嬉しいの」

心配そうに問いかけるアスベルに、顔だけむけて答えるナウシカ・・・

『森は世界を守ってる・・・・でも・・・・私たちが汚れそのものだとしたら・・・』


    ◇  ◇  ◇


腐海から脱出。しかし、土鬼の浮砲台に発見され捕虜となるふたり。木で出来
た船・・・それに・・・まるで、難民船のよう・・・そう・・・王蟲は南へと
いった・・・・南には土鬼諸国が・・・・

土鬼は、辺境の難民をつれて・・・占領した土地を植民地に・・・・風の谷も・・・・
ナウシカは、戦争というものの恐ろしさに・・・・そして、自分の無力さに・・・・
唇を噛みしめる。

ナウシカは、さらに恐ろしい作戦が遂行されていることを知る。

「わたしを行かせて!!・・・・こんなバカげた戦争はやめなきゃ・・・」

アスベルの助けもあり、ナウシカはひとりで・・・メーヴェにのって脱出・・・・
一路、酸の湖へ・・・・途中で、ガンシップと合流。

宿営地へ向かう王蟲の大群・・・

「土鬼の罠ってこれかしら・・・でもなぜ王蟲が!?」
「姫さま、前方!!・・・土鬼の飛行ガメです」

王蟲の子・・・・飛行ガメからは、なぶり殺しにされた王蟲の子が・・・ナウ
シカは、ガンシップから離脱すると、メーヴェをあやつって、ひとり、飛行ガ
メへたちむかう。

「あななたちはみんなにしらせて!」
「姫さまーっ」

王蟲の子を助けに単独で攻撃するナウシカ。

飛行ガメが落ちる。

王蟲の子に駆け寄るナウシカ。

「いい子だから動かないで!体液が流れてしまう」

それでも、仲間のところへ帰ろうと懸命に動く王蟲。あちこちから、真っ青な
体液が吹き出す。必死でそれを止めるナウシカ。

ナウシカの服が真っ青に染まっていく。

「ごめん・・・・ごめんね。何もしてあげられない・・・せめて・・・」

両手で顔をおおって、泣きだすナウシカ・・・・そんな、ナウシカのこころが
わかるように、ナウシカに優しく蝕手をのばす王蟲。

『ありがとう・・・・王蟲』


    ◇  ◇  ◇


せめて、群へ返してあげたい・・・・もう、ムダなのは分かってるけど・・・
ナウシカは、トルメキアの軍船の力をかりて、王蟲の子とともに、王蟲の大群
の中へ降り立つ。

『さよなら・・・・』

王蟲の子とお別れ・・・・蝕手と握手・・・・でも、もう・・・・

すると、王蟲の大群からもスルスルと蝕手が伸び、ナウシカのからだを支えて
上空へ持ち上げはじめた。上から、巨大な王蟲を見下ろすナウシカ。

『なんて、立派な王蟲・・・まるで森・・・・』

あちこちから、蝕手が昇って来る。光の粉を振りまきながら・・・・ナウシカ
を包み込むように・・・・

『ありがとう・・・・ありがとう・・・・』

遠くてよく見えない・・・・青い服を来ている。
王蟲の血を浴びたように真っ青な服を・・・・
蝕手が風になびく・・・金色の草のよう・・・
まるで、黄昏の草原を歩いているみたい・・・

その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし・・・・
失われし大地との絆を結び・・・人々を清浄の地へと導かん・・・

ああ、あのいい伝えは、まことであったのだ・・・・

ナウシカは、両手を広げ、バランスをとるように、遥か遠くを見つめながら、
歩き続ける。

その瞳は・・・優しさに満ち溢れて・・・きっと、人々を清浄の地へ・・・・

つづく?

あとがき あの、著者です。 その・・・・つまり、「レイが好き!」第14話「お散歩」の捕捉 のはずだったんですが・・・・どこから、こんな風に・・・・・ だから、もう、3年もたったんです。完結してから。 連載開始からだと、16年になります。 ホント、ながらく待たされた連載マンガだったんです。 だって、映画作り出しちゃうと休載なんだもん・・・ だから、きっと、知らない人も多いんだろうなと思って・・・・ で、解説のつもりで書いたんです。 というか、せめて、どういう物語なのか知って欲しくて、 筆者は、とても、好きだから・・・・ で、『風の谷のナウシカ』ってのは、10数年前に一世を風靡した アニメ映画なんです。あの、宮崎駿さんが原作・監督したんです。 映画の内容とアニメージュに連載してたマンガの内容は大分違うんです。 それで、上述の話は、マンガの方の話で書いてみました。 ところどころ、映画の方のセリフも入ってますが・・・・ で、上のは2巻の途中までの話なんです。 全部で7巻ありますから、まだまだ、話は終わってないんです。 このつづきをこの場で書くことはないと思いますんで、 面白そうだなと思った方は、買って読んで下さい。 (アニメージュ・コミックス ワイド版 徳間書店) レンタルビデオもあると思いますし・・・ 何回か、テレビでもやってるんで、友達が持ってるかも知れませんね。 ところで、この話、ナウシカとアスベルのらぶらぶ話というわけじゃ ないんですよ。もっと、もっと、深いんです。 お互いにそんな気もあるのかもしれないけど、 とにかく、背負うものが大きすぎるのか、それどころじゃないって感じです。 それから、本文中の『ショウ気』とう単語について、 本当は、『ショウ』は、病垂れに章って書くんです。 でも、出せなかったんです。とりあえず、筆者の環境で、簡単には・・・・ そういうわけで、頭の中でその字を思い浮かべながら読んで下さい。 で、本当に・・・・筆者が最初にハマったアニメ作品だったんです。 だから・・・あの場面をどうしても、「レイが好き!」にいれたかったんです。 これだけは、いっておきたいんです。 決して、単なるパロディーのつもりで気軽に書いた訳じゃなくて・・・・ あの光景が・・・良かったんです。筆者の心の中では・・・・いまも・・・ それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、他の作品も読んで下さるとして、 って、この話は・・・・・なんですけど、 とにかく、「レイが好き!」とか、そっちの方で、 また、どこかで、お会いしましょう。 注:本作品中の多くの記述は、アニメージュ・コミックス ワイド版『風の谷の ナウシカ』より、拝借致しました。なるべく、原作のイメージを損なわないよ うにと気をつけたのですが、不本意ながら、いたらない点も数多くあることと 思います。まことに、勝手ではありますが、関係者の皆様がたの寛容な御処置 を期待して、ここに公開させて戴いております。

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