ギター弦の振動シミュレーション(固定端編)

はじめに

「レスポール独特の倍音豊かなマホガニーの暖かい音色」とか、 「バスウッドのギターは、音に腰がない」とか、 「フロイドローズ&ロックナットのギターは金属的な音がする」とか、 WEB上には、ギターの材質と音色に関していろーーーんな言説があります。

材の質がギターの音色に影響を及ぼすって、ホンマかいな?と思ったわけです。 いえ、疑いなく、影響は及ぼすと思いますが、それを聴きわけてるって凄いな・・・と。 音楽って、結構微妙なニュアンスの世界なんで、たぶん、本当に聴けてるんだと思うんですが、 私自身は、そんなに音楽のセンスないもんで、違う音であることぐらいはわかっても、 何がどう違うって、言えないなぁ・・・と感じるのです。 そもそも、堅い音、柔らかい音っていうイメージが、なんかよくわからない。

聴いてもイメージできないなら、数字にして、グラフにして、 ビジュアルなところからなら、なんかイメージできるかな? と、いうのが、そもそもの発端です。

この固定端編は、そういう意味では、目的を達成できていません。 弦の両端を動かないものと仮定してしまっているので、 ギター材の堅さ・柔らかさがどう音に効くののかっていう話はできていません。 弦の両端を動くようにするには、ネックやボディ側の力学(板バネとみなせるだろうか?) を解かないといけないので、もうひと手間かかります。

今のところは、とりあえず、弦の方の動きだけを解いてあげて、 究極的に堅い材で作ったギターってのは、 どんな風に音ができるのか?ピックアップの位置によって、音はどう変わるのか? というあたりを中心にお話してみます。


シミュレーションの基本設計と各種設定

基本的な計算の仕方は以下の通り、
  1. 弦を適当な質点に分割して、それぞれの点の動きを計算する。
  2. 初期のみ弦の任意の一点に、弦に対して直角に外力を与える。
  3. 各質点にかかる力は弦の張力のみを考慮する。
  4. 弦の両端は固定端とする。(←次の課題?)
  5. 弦の伸びによる張力の変化を無視する。(本当は何とかしたいが・・・)
  6. 弦の曲がりによる力(剛性)を無視する。
  7. 摩擦などその他の力を無視する。

設定すべきパラメタは、 一応、現実っぽくということで以下のように設定してみました。

length=0.648  弦長(m):0.648m≒25.5インチ
g_mass=0.0005 弦の質量(kg):0.0005kg=0.5グラム
tension=50.0  張力(N):50N≒5キログラム重

hit_pos=0.08   弾く位置(m)
s_pos1=0.03    ピックアップ1の位置(m)
s_pos2=0.15    ピックアップ2の位置(m)

imax=100       弦の分割数:100分割≒約6mm間隔
dt=0.000000025 計算刻み時間(sec):25ナノ秒=50MHz
ピックアップの位置はかなり適当。ちょっと手元に本物がなかったもので・・・
なお、計算する弦は1本だけです。

ピッキングについて

さて、どうやって、弦をはじこうか? シミュレーション的にいうと、弦の初期状態をどうやって作ろうか?

ピッキングする位置からナットへの直線と、テールピースへの直線を引いたところから始めてもいいかな? とも思った。つまり、こんな感じ

図1:弦全体の初期形状ケース0(クリックすると大きくなります)
横軸が弦と並行な方向(0がテールブリッジで、100がネック)、縦軸が直角方向への距離(単位はメートルだから、一番上のところで2ミリです)

しかし、ギター初心者向けの解説だと、「ピックは軽くつまむだけで、なるべく力をいれない」 というようなことがよく書いてある。 初心者レッスンの動画をみてると、なんとなくだけど、 上の図のようにはならないようなイメージがする。 なので、とりあえずケース0としておいて、別の方法も考える。

さて、どうするか?・・・ちゃんと弾くところも外力として力を与えてやってみましょう。 というわけで、基本設計の2番目のような形になっています。 ピッキングの時に加わる力の時間変化なんてわからないので、ひとまず、外力は一定とせざるを得ません。 で、弦に押し戻されて支えきれなくなったところで、力を与えるのをやめる。 これでどうかな?と、与える力の大きさを試行錯誤。 だいたい100グラムの力だと、1.7ミリぐらい、はじけるみたい。これをケース1としてみる。 そんで、約1.4ミリ(8割)の位置まで押し戻されたところで、はじくのをやめる。 (というか、ピックが弦から外れるというようなイメージ) はじいてる時間は、だいたい、0.004秒間になりました。(これって、どんなもんなのかな?) この時、弦全体の状態は、上の図とはだいぶ違います。 テール側から8センチのところを弾いたときは、こんな感じ

図2:弦全体の初期形状ケース1(クリックすると大きくなります)
横軸が弦と並行な方向(0がテールブリッジで、100がネック)、縦軸が直角方向への距離(一番上のところで1.8ミリ)

たぶん、じわぁ〜っとピッキングした場合が、ケース0に近くて、 ピンッと、瞬間的にピッキングした場合が、ケース1に近いんじゃないかなと思いますが、 さて、どっちが現実に近いのでしょうねぇ?


ピッキング直後の弦全体の形状変化

ケース0
左の図:赤(0)→緑(0.0005秒)→青(0.001秒)→紫(0.002秒)→水色(0.003秒)、 右の図:赤(0.003秒)→緑(0.004秒)→青(0.005秒)→紫(0.006秒)という風に弦の形状が変化します。
最初のピッキング部分のとんがりは弦の張力によって引き戻されて、 反対方向へのふくらみになりつつ、ネック側へ移動して、また戻ってきます。 しばらく、この往復運動がつづくようなイメージです。一往復にだいたい0.005秒強(200Hz弱)でしょうか。

ケース1
左の図:赤(0.004秒)→緑(0.0045秒)→青(0.005秒)→紫(0.006秒)→水色(0.007秒)、 右の図:赤(0.007秒)→緑(0.0075秒)→青(0.008秒)→紫(0.085秒)→水色(0.09秒) →茶色(0.095秒)→黄(0.1秒)という風に弦の形状が変化します。
ピッキングによるふくらみはテール側に戻って、反対側へのふくらみを作ったのちに、 ネック側へ移動していき、ネックに到着すると、また膨らみを反転させて、 テール側に戻ってきます。やや形を乱しながら、何回かこの往復運動を続けます。 一往復は、やはり0.005秒強(200Hz弱)ぐらいのようです。

この設定の弦の持ついわゆる(n=1の)固有振動ってのが200Hz弱なのだろうと思います。


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by(ひ)