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13 告白

「碇君、おっ待たせ〜〜。」

 シンジは綾波の家に行くため待ち合わせをしていた。
 レイの声がする方を向いた。

 レイの出で立ちは洗いざらしのちょっと大きめのシャツに、
 ホットパンツと言う軽快な服装だった。
 走って来たのだろうか、額に少し汗が浮いていた。
 軽く微笑んでいるレイの顔に浮いた汗が、光の加減で輝いて見え、
 一層神秘的に見えた。

「・・・・・綺麗だ・・・・・」

 シンジは思わず呟いた。が、すぐに我にかえり焦ってしまう。
 レイにも聞こえたらしく、顔を赤くして俯いている。
 それを見てシンジは余計に焦り、シドロモドロになった。

「あっ・・・・・いや・・・・・その・・・・・違うんだ、じゃなくて・・・・・
・・・・・え〜と・・・・・ゴ、ゴメン。」

 シンジが謝った事に少しムッとするレイ。

「どうして謝るの?」

「えっ・・・・・・・・・・」

 レイの言葉の中に怒りの因子が含まれている事に、
 気づいたシンジは何も言えなかった。

 困ったように俯くシンジを見て、レイが呟く。

「碇君に綺麗って言ってもらえて嬉しかったのに・・・・・
謝られたら、違うみたいじゃない・・・・・」

 拗ねたようにレイが言った。
 シンジはレイが言った事に、何に対して怒ったのかわかった。
 相変わらず、鈍いシンジだった。

「あ、そうか。ゴメン。そう言う意味じゃないんだ。
何て行ったら良いのかな〜・・・・・」

「わかってるわよ。碇君が優しいのは。」

「そ、そう?・・・・・良かった。」

 そう言って、照れくさそうに笑った。

「お母さんが待ってるから、そろそろ行こ。」

 そう言ってレイはシンジの手を握り引っ張るように歩き出した。

「ちょ、ちょっと、綾波。」

「え、な〜に?」

「・・・・・手・・・・・」

「碇君は私と手を繋ぐの、イヤ?」

 レイはしたからシンジの顔を覗き込む。
 シンジは顔を赤くして、困ったような顔をしていた。

「別に・・・・・イヤじゃ・・・・・ない・・・・・・けど・・・・・」

「けど?」

「ちょっと・・・・・恥ずかしいかな、なんて・・・・・綾波は平気なの?」

「うん・・・・・・・・・・だって碇君だもん・・・・・」

 最後の方が囁くような声になってしまいシンジの耳には届かなかった。
 シンジは聞きなおした。

「え、何?」

「何でもないの!」

 そう言って繋いだ手に更に力を入れシンジを引っ張る。
 何となくすれ違う人に見られているようで、赤くなってしまうシンジだった。

「わ、わかったから、そんなに引っ張らないでヨ〜」

 シンジはレイに引かれるままついて行った。
 レイはシンジと繋いだ手の感触に浸っていた。

(また碇君と手を繋いじゃった・・・・・それに碇君の手って、暖かい・・・・・
・・・・・ずーっとこうしていたいな〜・・・・・)

 そんなレイの希望も家に着いたため終わってしまった。

「ただいま〜。お母さん、碇君迎えに行って来たよ〜。」

 レイが声をかけると母親が出てきた。

「いらっしゃい。貴方がシンジ君?」

「はい。今日はお招き頂いてありがとうございます。」

 シンジは少し緊張気味に挨拶をした。
 そんなシンジを見てレナはニコニコしながら言った。

「そんなに固くならないで、リラックスしてね。」

 レナはシンジを見ながら言った。
 そう言われてもシンジはレナが自分の事を観察するように見ていたので、
 余計固くなってしまう。
 レナの視線に気づいたレイが母親を窘める。

「お母さん、碇君が余計緊張するでしょ!」

「え、ああ、ごめんなさい。ついどちらに似てるのかなーって思って。
・・・・・シンジ君てユイに似てるのね。」

「え、父さんの事も知ってるんですか?」

「勿論。ユイの事も、ゲンちゃんの事も良く知ってるわ。」

「げ、げ、ゲンちゃん?・・・・・それって父さんの事ですか?」

「そうよ。シンジ君のお父さんのニックネームよ。
私もユイも、それにキョウコも皆、ゲンちゃんって呼んでたの。
知らないの?」

「はい。」

 シンジは愕然としていた。
 あの父親が、『ゲンちゃん』と呼ばれていたなんて。
 どう考えても、想像もつかなかった。

 シンジが固まってしまったので、会話が途切れたのでレイが口を挟んだ。

「お母さん、こんな所で話してないで中に入って貰ってよ。」

「そうね。もう少しで終わるから、レイ、貴方がシンジ君を案内しなさい。」

 レイは頷いて、シンジに声をかけた。

「碇君、碇君てば。」

「え、な、何?」

「中に入りましょ。」

「あ、うん。わかった・・・・・お邪魔します。」

 シンジはレイの後についていった。

 シンジはレイに案内されリビングにいた。
 少し緊張している様子のシンジを見てレイはニコニコしていた。
 レイの視線に気づいたシンジはレイに聞く。

「え、何?」

「ううん、何でもない。」

 そう答えるが、表情を見れば笑っているように見える。

「だったら・・・・・どうして笑ってるんだよ。」

 少し拗ねたようにシンジは言った。

「だって・・・・・固くなっちゃって・・・・・碇君、可愛い♪」

「か、可愛いって・・・・・そんな事言われても、嬉しくないよ!」

「あ、ゴメンね。気を悪くしちゃった?」

 慌ててレイはシンジの顔を覗き込む。
 いきなり至近距離にレイの顔が現れたので、シンジは焦った。
 おもわず顔を背けてしまう。
 それを見て、怒らせたのかと思いレイが謝った。

「ごめんなさい。怒らないで・・・・・碇君、怒らないで。」

 レイの声の中に、悲しい響きがあったのでシンジはまた焦ってしまった。
 レイを見ると俯いている。

「ち、違うよ。怒ってないよ。」

「・・・・・ホントに?」

 レイは顔を上げてシンジを見た。
 その瞳は少し潤んでいるようにシンジには見えた。

「うん。・・・・・急に綾波の顔がアップになったから焦っちゃって・・・・・」

「・・・・良かった・・・・・碇君が怒って帰っちゃうかと思ったから・・・・・
・・・・・私ったら・・・・・可愛くないよね・・・・・
・・・・・折角来てもらったのに・・・・・ゆっくり話しが出来ると思ったのに・・・・・
・・・・・私・・・・・碇君に嫌われちゃうって・・・・・そう思ったら悲しくなっちゃって・・・・・」

 シンジはレイの呟くような言葉を、思わず聞き返した。

「えっ?」

 シンジの少し驚いたような声を聞き、レイは自分が何を言ったのか思い返し、
 顔を真っ赤にして俯いてしまった。
 シンジが怒っていいない・・・・・そう確認してホッとした時に出たレイの本音だった。

「そんな事・・・・・ないよ。綾波は・・・・・可愛いと思うよ。」

 シンジも真っ赤になりながら言った。

「・・・・・エヘヘヘヘ・・・・・ありがとう・・・・・碇君。」

 二人はちょっとの時間みつめあって、また真っ赤な顔をして俯いてしまった。

 そんな時、レナが紅茶を持って入って来た。

「あらまあ、お邪魔だったかしら?」

 シンジは恥ずかしさで余計に顔を赤くした。
 レイは母親を真っ赤な顔をして睨んでいる。

「何か、貴方達って、お見合いの席にいるみたいね♪」

 この母親、レナもシンジの両親と同じような性格らしい。
 自分の子供をからかうのが、大好きなようだ。

「お、お母さん!」

「ハイハイ、な〜に?レイちゃん。
そんなに怖い顔してると、シンジ君に嫌われちゃうわよ〜♪
ネ〜、シンジ君。シンジ君も怖い娘って、嫌いよね〜♪」

「お、お母さん。もう、いい加減にして!」

 レイは母親にそう言って、再び睨んだ後、シンジを見た。
 シンジはボーっとレナを見てる。
 それをちょっと不思議に思ったレイはシンジに声をかけた。

「碇君、どうしたの?」

 シンジはレイに声をかけられて、レイの方を向いた。
 それまではレナをじっと見ていた。
 照れたように笑いながらシンジは喋った。

「さっき、綾波のお母さんを見た時思ったんだけど、
家の母さんに似てるって、そう思った。
それに、今の話し方なんかもそっくりだなって。」

 シンジの話しを聞いていたレナが、シンジに向かって話した。

「シンジ君、やっぱり私とお母さんて似てると思った?
私とユイは、キャンパスで双子みたいって言われてたのよ。
あの頃、顔だけじゃなくて性格も似てるって言われてた。
その上、男性のタイプも。」

「えっ?」

 シンジはレナが何を言いたいのか、すぐにはわからなかった。
 そんなシンジを楽しそうに見て、レナは続けた。

「私も、ユイと同じでゲンちゃんが好きだったの。」

「と、父さんを?」

「そうよ〜。私もユイも、シンジ君のお父さんみたいに、
可愛い男の子が大好きだったの♪」

 シンジはレイナの言葉を疑った。

(か、可愛いって?・・・・・父さんが?・・・・・)

 シンジは毛に出してレイナに聞いた。

「家の父さんが、可愛いんですか?
母さんも父さんの事を、可愛いって思ってたんですか?」

「あらやだ、シンジ君知らなかったの?」

「知りませんよ、そんな事。よりによってあの父さんが可愛いなんて。」

 レナは楽しそうに言った。

「あら、そんな事ないわよ。ゲンちゃんて子供っぽくて可愛かったわよ。
それに、レイに聞いたんだけど、シンジ君、キョウコの事は知ってるわよね?」

「はい。幼馴染のアスカのお母さんですから。
・・・・・でも・・・・・顔も殆ど忘れちゃったけど・・・・・」

「実を言うと、キョウコもゲンちゃんが好きだったのよ♪」

「え、え、え〜〜〜・・・・・う、うそ。」

「ホントよ。私達三人の内、誰がゲンちゃんを射止めるかって。
キャンパスじゃあ、賭けの対象にもなったんだから。」

 シンジはショックから立ち直れない。
 あの父が、女性から可愛いと言われ、そんなに人気があった等と、
 どうしても想像できなかった。

 レイも自分の母親から、昔の事を聞いたのは初めてだったので、
 どんな対応をして良いのかわからずにいた。


 レナは固まっているシンジとレイを見ながら微笑んでいた。
 そして二人に優しく声をかけた。

「ほらほら、レイにシンジ君。紅茶が冷めないうちに皆で飲みましょ。
その後は、少ししてからお昼ね。」

 レイとシンジはそう言われて、紅茶に手を伸ばした。

 レナの思い出話しは続いた。
 それはシンジにとって衝撃的な話しばかりだった。
 只、レナによって初めて聞く事の出来た、
 両親の若い頃の話しは、親との距離を縮めた気がした。

 特にゲンドウとの距離を。

 レイにとっても同様で、自分の母親にそんな時代があった事を改めて聞くのは、
 非常に新鮮に感じた。
 今まで、父親との事ですら聞いたことがなかったから。

「貴方達も素敵な恋をして、素敵な大人になりなさい♪」

 レナはそう言って一旦話しを切り上げ、キッチンに行ってしまった。

「ねえ、碇君。」

「ん?何?」

「碇くんのお父さんて、どんな人?」

「ん〜〜今の話しに出てきた、可愛いとか、子供っぽいとかって、
絶対似合わない人・・・・・だと思うんだけど。」

「でも、お母さんの話しだと、可愛い人って言ってたじゃない?」

「そうなんだけど・・・・・今の父さんは誰が見たって可愛くないよ。
前の学校の友達だって怖がってたもん。
後で綾波にも写真見せてあげるよ。前に行った家族旅行のがあるから。」

 シンジは前の学校の友達が家に来た時の事を、思い出してレイに言った。
 レイにしてみれば母親が好きになった人が、どんな人なのか興味があった。
 母親の恋愛対象の人間なんて父親しか知らないし、ましてそれが、
 自分の惹かれているシンジの親であれば尚更だった。

「うん、楽しみにしてる♪」

 レイの楽しそうな声を聞いてシンジは複雑な思いがした。
 ゲンドウの写真を見てレイがどんな反応するかわかるから。
 今までシンジの友達でゲンドウを見て、固まらなかったのは誰もいなかったから。

 レイのニコニコしてる顔を見て少し気が重くなりそうになった時レイナに呼ばれた。

「準備が出来たから、二人ともこっちにいらっしゃい。」

「は〜い。碇君、行こ。」

 レイに促され、シンジは後をついて行った。





 夕方、シンジはレイの家を辞して歩いていた。
 一人ではなかった。
 隣にレイが居た。
 シンジは断ったのだが、どうしてとレイが言ったのであった。
 それに弁当箱を渡さなければならなかった。
 昨日、いつものようにシンジが家に持ち帰ってしまっていたから。

 道中、殆ど会話がなかった。
 シンジが何やら考え事をしていた為であった。
 最初の頃はレイが話しかけ、それにシンジが生返事を返していたのだが、
 シンジの様子にレイが気づくと、話しかけるのを躊躇ったからだった。
 次第に会話がなくなり、ついには一言も発しなくなってしまっていた。

(碇君、どうしたんだろう?・・・・・私がついてきて、迷惑だったのかな?)

 レイはそう考え、次第に気持ちが重くなってきた。

 人を好きになると、その人の行動によって影響される。
 その人の思考を読もうとしてしまう。
 それが楽しい時ならば、自分も幸せな気分になれる。が
 今みたいな時は、悪い方向にばかり考えが行ってしまう・

 レイの心境は、まさにそれだった。

 シンジはその時レイの母親に言われた事を考えていた。
 家を出るときに、レイが送ると言って着替えに部屋に行ってるとき、
 玄関でそれを待っているときに言われた。


    『シンジ君、レイを守ってくれるって言ってくれたんですってね。
    本当にありがとう。
    あの子は私に気を使って言わないけど、やっぱり辛い思いしてるのね。
    以前は従兄妹が何かと気にかけてくれてたけど、その子が居なくなって
    かなり辛い思いしたみたいなの。口には出さないけど・・・・・

    だからシンジ君が言ってくれた言葉がホントに嬉しかったみたい。
    あの時のレイの顔は、多分忘れられないと思うの。

    こうして、会ったばかりのシンジ君にお願いするのは筋が違うかもしれない。
    でも、ゲンちゃんとユイの子供であるシンジ君にお願いしたいの。
    レイの事、よろしくね。仲良くしてやってね。
    
    ・・・・・母親として何もしてやれない自分が情けないけどね。』


 そう言って伏せたレナの悲しそうな顔が思い出された。

 レナの言っていた従兄妹と言うのはカヲルの事だろう。
 レイ自身もそう言ってたから。
 辛い思いというのはレイの人と違う容姿の事であろう。
 レイ本人も、それで苛められた事があると言ってた。
 シンジに自分の容姿の事を聞いたときのレイの顔が浮かんでくる。
 あの時の少し悲しそうな顔。
 あんな顔はレイには似合わない。
 そう思っていた時に言われた辛い思い出。
 レイを守ってくれた従兄妹がいた事。
 でもその従兄妹が今はそばにいない事を聞いた時、自分の口から出た言葉。

    『じゃあ、これからそんな時は、僕が綾波を助けるよ。守るよ』

 あの時のレイの顔は、本当に嬉しそうだった。

 シンジは考えていた。
 レナに頼まれた事を。
 そして今の自分の気持ちを。

 レイを守ろうと今でも思っている。

 その訳を。

(レナさんに頼まれたから?・・・・・それもある。でもそれだけじゃない。
じゃあ、何故?

・・・・・あの時の綾波の悲しい顔がイヤだから。
綾波には笑ってる顔が何より似合うから。笑っていて欲しいと思うから。
笑っている綾波の顔が僕は好きだから。
だから、綾波が何時も笑っていられるようにしたいんだ。

誰かに言われたからじゃなくて、僕がそう思うからなんだ。)

 ようやく自分なりの答えが見つかって、
 ふと気づくと横にいるはずのレイがいなかった。

「あれ?」

 周りを見てみると、数メートル後でレイが俯いて止まっていた。
 レイの顔は見えなかったが、寂しそうな雰囲気だった。

「綾波。」

 シンジの呼びかけにレイはビクッと震えた。
 シンジはレイの側により話しかけた。

「どうしたの?」

「・・・・・ごめんなさい。やっぱり迷惑だったよね。
無理言ってついてきちゃって・・・・・」

 とても悲しそうな声だった。
 聞いているシンジも辛くなりそうな声だった。

「どうして?」

「・・・・・だって・・・・・話しかけても・・・・・聞いてないみたいだし・・・・・
それに・・・・・碇君、ずっと黙って考え事してるから、私邪魔みたいで・・・・・」

 そう言ってレイは顔を上げたが、
 その顔はシンジの見たくない悲しみが張り付いた顔だった

 シンジはその顔を見て、自分を詰った。
 笑っていて欲しいと望んだ自分が、レイに悲しい思いをさせていた。
 やりきれない思いで一杯になった。

「違うんだ。違うんだよ。」

 そう言ってシンジは首を振った。力一杯。
 シンジは言葉を選びながら話した。
 自分の思いが正確に伝わるように。

「さっき帰る時、綾波のお母さんに言われたことを考えてた。」

「・・・・・お母さんに?・・・・・お母さん、何て言ってたの?」

「僕が守るって言ったのを、綾波、お母さんに言ったんだって?
その時の綾波の顔がホントに嬉しそうだったって。
そう言って御礼を言われた。

私には言わないけど、きっと辛い思いをしてるって。
以前は従兄妹に。
そして今は僕に。
頼む事しか出来ない自分が情けないけどって。

だから考えてたんだ。今の自分の気持ちを。
その答えを。」

「・・・・・答え、出たの?」

「うん。出た。」

「・・・・・どんな答え?」

 レイは心配そうな顔でシンジを見つめた。
 その赤い瞳は不安という波に揺れていた。
 シンジは思った。

(綾波にこんな顔を、こんな瞳をさせちゃダメだ。)

 と。
 だから言った。シンジに出来る最高の微笑みを浮かべて。

「僕が綾波の笑ってる顔が好きだから。
綾波には悲しい顔なんて似合わないと思うから。
綾波には何時も笑っていて欲しいとおもうから。
誰かに頼まれたからじゃない、自分でそうしたいから。

だから僕に出来る事を自分の意思でしようって思った。」

 それを聞いてレイはまた俯いてしまった。
 レイを見てシンジは続けた。

「・・・・・それなのに・・・・・今そう決めたばかりなのに、
綾波に悲しい顔させちゃったね。・・・・・ゴメンね。」

「そんな・・・・・事・・・・・ない。
そんな事ないよ・・・・・だって今私、すっごく嬉しいもん。
碇君にそう言って貰えて、すっごく嬉しい。」

 レイは泣き笑いといった顔をしていた。
 その赤い瞳からは止めど無く涙が零れていた。

「あ、綾波。ど、どうしたの?なんで泣いてるの?泣かないでヨ。」

 シンジは焦ってしまった。
 笑って欲しかったのに、泣かせてしまったことに。
 どうして良いのかわからないシンジは、只、オロオロするばかりだった。
 そんなシンジを見てレイが言った。

「嬉しいから・・・・・嬉しくって泣いてるの。
・・・・・ありがとう、碇君。・・・・・・・・・・私・・・・・碇君が・・・・・好き。」

「え!?・・・・・今なんて言ったの?」

 レイはシンジの目を言った。

「私は碇くんの事が好き。」

 あまりに突然で、想像も出来なかったレイの告白に、シンジは呆然としていた。
 それでも何か言おうと、言葉を捜しているとレイが抱き着いてきた。

 シンジはレイの行動によって、完全にパニック状態になってしまった。

 レイは、只、焦っているシンジの顔を覗き込むと静かに言った。

「いいの・・・・・今はいいの。只、碇君に私の気持ちを知っていて欲しかっただけ。
・・・・・私の気持ちを伝えたかっただけだから。・・・・・今はそれだけでいいの。」

 そう言ってレイは笑った。
 それはシンジの見たかった顔だった。

 その顔は今まで見た、どんな物より綺麗な物にシンジには思えた。

(この顔を曇らせるような事をしてはいけない。)

 シンジにはそう思えた。

「ありがとう、綾波。」

 シンジはそう呟くようにいった。
 それしか思いつかなかったし、
 それがこの時には一番あっているように思えたから。

「・・・・・うん。」

 レイはシンジの言葉を聞いて、胸が熱くなった。
 そしてシンジの胸に顔を埋めながらまた涙した。

 そんなレイをシンジは躊躇いながら、優しく抱きしめながら言った。

「明日、綾波さえ良ければ、何処か遊びに行こうか?」

「・・・・・うん。」

 レイはそう返事しながら小さく小さく呟いた。

「何時か、ちゃんと返事してね。♪」

 その声は届いたのか、それとも届かなかったのか、シンジは何も言わなかった。
 只、レイを抱く力が少し強くなっただけだった。



  コメント      だらだらと続いてしまったこの話しも      漸く一段楽しました・・・・・ヤレヤレ。      『……ってまさか、このまま終わりって事ないわよね』      ん、この声は?・・・・・もしかして・・・・・アスカ?      『このアタシが全然出てないじゃないの!!』      『ふふ、僕も出さないつもりかな?』      アスカ、怒らないで・・・・・・      カヲル君、目が笑ってない・・・・・(A^^;;)      ………一応、これってLRSだから・・・・・      『だ・か・ら〜、な〜に?』      (こ、怖い)ちゃ、ちゃんと出します・・・・・いえ、是非出て下さい。      『よろしい!次からちゃんと書くのよ!カッコ良く!』      と、言う事ですのでしばらく続きそうです。      もう少しお付合いください。<って、何やってんだか(A^^;;)
……苦情、罵倒、悪口、感想等なんでも受け付けしています。(必ずお返事は致します。) 次回『-IF- 14 二人の転校生』でお会いしましょう。
     では、また。v(^_^)/~

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