晴れ後くもり時々雨 第壱話 わたしのアスカ!

「ごっめーん、レイ。まったぁ?」 「まったく、しょーがないんだから、アスカは、また寝坊?」 この赤毛の髪の長い綺麗な女の子はアスカ。わたしの中学校からずーっと一緒の一番 仲の良い本当の親友。わたしたちは、念願叶って、春からまた同じ高校に通うことに なった。 今日は、買い物に行こうって、アスカの方から誘ってきたのに、案の上、アスカは、 寝坊して、慌てたそぶりも見せずに、余裕で歩いてきて、とってつけたように、わた しに謝る。 まあ・・・慣れっこなんだけどね・・・ 「だって、アタシ、朝弱いのよね」 「はいはい、分かってるわよ。長い付き合いだもん。アスカとは」 「やっぱり、待ち合わせの時間が早すぎんのよ」 「なに言ってるの、アスカ。10時、噴水前って、アスカが言い出したんじゃない。だ から、わたしは、もっと遅いほうがっていったのに」 「うっ・・・そういう人の過ちをつっついて、楽しい?」 「うふふっ、楽しいわよ。それじゃ、買い物いきましょ」 わたしは、そういって、アスカの腕にじゃれつくように腕を絡める。アスカは、「ア ンタにはかなわないわよ」っていういつもの顔で、わたしに引っ張られて歩き出す。 「あーあ、わたしもアスカとなんかじゃなくて、素敵な彼氏とこうして腕を組んで歩 いてみたいなぁ」 「悪かったわね。素敵じゃなくって」 「あら?素敵じゃないなんていってないじゃない。アスカ。そうね。アスカだったら、 女でも問題ないわよ。わたしは」 わたしは、そういうって、ニヤリとアスカに笑いかける。 「な、なにいってんのよ!バカ!」 「あー!バカってこと、ないじゃない!」 「きっもち悪いじゃない。もう、放してよ、レイ」 「いいじゃない。減るもんじゃなし。けちぃ!」 「アンタ、さっさと、素敵な彼氏とやらでも作って、じゃれあってなさいよね」 「うふふっ、だって、わたしはアスカが一番好きなんだもん!」 「や、やめなさいよ。バカ・・ちょっと」 「あははは、アスカ、顔真っ赤よ?どうしたの?」 そうやって、きゃっきゃと笑いながら、腕を組んでわたしたちは街を歩く。 でも、アスカって、スラッと背も高いし、綺麗な長い髪も素敵だし、誰が見たって、 やっぱり、美人って感じだし・・・きっと、知らないんだろうなぁ・・・わたしがそ んな風に見てるなんて。 あっ、いっとくけど、別に、わたし、そのケは、ないですからね!皆さん。 ただ、やっぱり、憧れちゃうのよね・・・・かなわないもの。 わたしに腕を組まれた反対側の右手で髪をさらっと掻き揚げながら、アスカはわたし の方にむけて、にこっと笑う。 「どうしたの?急に黙り込んで」 「ううん。別に。やっぱり、アスカって綺麗だなって」 「なにいってんのよ?アンタだって、可愛いわよ」 「そうかしら?胸もアスカみたいにないし、それに・・・」 蒼い髪なんて普通じゃないし、それにいっくらブローしてもボサボサのままだし、生 まれつき色素がない瞳も、肌も・・・わたしは・・・ 「レイ!」 「ご、ごめん。うん、それは、言わないけど。でも、やっぱり、アスカは美人だと思 うわ」 「アンタバカァ?そんなの当ったり前じゃない!」 「うふふっ、やっぱり、アスカって凄いわね」 「なにいってんのよ。いまさら」 アスカは右手で、また髪を掻き揚げて、照れたようにわたしから視線を逸らした。キ ラキラと赤い髪に光があたって、やっぱり、なにやっても、さまになるのよね、アス カって。わたしは、なんとなく、ドキッとするのを感じながら、そんなアスカをいっ つも見てきた。 「いっとくけどね。アタシは、アンタが羨ましいと思ってるんだからね」 アスカは、そっぽを向いたまま、ぼそっとそんなことを口にした。 「え?」 「アンタは、素直で可愛い、いい女だっていってんのよ。アタシは、素直じゃないか らね」 「うふふっ、ありがと、アスカ。でも、わたしはアスカは素直だと思うわよ。ただ、 ちょっと、表現の仕方が人と違うだけで」 「どういう意味よ?」 「わたしはアスカの気持ちがわかるってこと。可愛いもの、アスカって。照れ屋でさ」 「う、うっさいわね。アタシのどこが照れ屋だっていうのよ!」 「ほら、そういうところが」 「やったわねぇ!やっぱり、アンタが素直で可愛いなんて撤回するわ。アンタは、意 地の悪い、憎たらしい女よ!」 「うふふっ、アスカのことはなんでもわかるから、なに言われても応えないわよーだ」 「ホント、にくったらしい女ね!アンタって!」 アスカは、わたしの腕を振り払って、スタスタと先に歩いていっちゃう。わたしには アスカの照れてるのが良く分かるから、とっても楽しいんだ。 「あはははは、まーってよぉ。怒んないでよぉ、アスカぁ」 ◇ ◇ ◇ 「でもさ、アスカって、本当にもう少し素直に女らしくしてれば、こんなに綺麗なん だから、すぐ彼氏できるのに」 「なによ。突然」 買い物が終わって、駅までわたしたちは、腕を組んで歩く。わたしは、なんとなく、 そんなことをアスカに話かけた。 「うん、なんだか、もったいないと思って」 「別に、もったいなくなんかないわよ。男と付き合うなんて、面倒くさいだけじゃな い」 「そうかしら?アスカって、誰か好きな人とかっていないの?」 「いないわよ。そんなの」 「それじゃあ、いままでには?」 「いないわよ!うっさいわね!アンタはどうだっていうのよ!」 「わたしもいないわ。でも、高校に入ったら、きっと素敵な彼氏作るのよ!」 「どーやって、見つけんのよ?その素敵な彼氏とやらを」 「それは、運命の神様が導き合わせてくれるまで、待たなきゃしょうがないけど・・・」 「結局、神頼みってことじゃない」 「でも、努力するもの!わたしの良さを、もっと磨いて、そして、待ってれば、きっ と神様だって!」 「はいはい、で、アンタの良さって、なに?」 わたしの良さ?・・・・って、いったい?・・・・なんだろう? グズで、のろまで、アスカに比べたら、何にもできないし・・・ 「・・・・」 「ないの?」 「そ、それを見つけるのが人生なのよ!」 「なーに、人生語ってんのよ。バカね。アンタの良さは、そういうバカみたいに元気 で、バカみたいに素直で、バカみたいに可愛いってとこかしらね?」 「もう!バカバカって、酷いじゃない!だから、わたしは、アスカのこといってるの に。アスカは、彼氏作ろうとは、思わないの?」 「そんなの要らないわよ、別に」 「でも、落ち込んだ時とか、寂しい時とか、誰かに側にいて欲しいとか思わないの?」 「バカねぇ、アタシが落ち込んだり、寂しがったりするわけないでしょ?アンタとは、 違うんだからね!」 「うふふっ、わたしはアスカが分かるっていったでしょ?」 「そうでしょ?なら、分かるじゃない。アタシは別に男になんか頼らなくても、生き ていける女なのよ!」 「うふふっ、そうね」 でも、わたしは知ってる。本当は、アスカって、とっても寂しがり屋で、なにかある と、すぐに落ち込んで、だから、いつも突っ張って生きてるんだって。だから、アス カを支えてあげられるような素敵な人がついててあげたらいいのにって思うんだから。 「それに、アタシが彼氏なんか作っちゃったら、誰がアンタに腕を貸すのよ?」 「うふふっ、わたしの彼に決まってるじゃない」 「はいはい、アンタ、可愛いから、アタシなんかより先に、とっとと、彼氏作って、 アタシなんてさっさと捨てちゃうのよね。どーせ、アタシの腕はそれまでの繋ぎでし かないのよね」 「もう!アスカったら、拗ねないでよ」 「拗ねてなんかないわよ。まあ、そうね。そうなったら、アタシはよろこんで身を引 いてあげるから、せいぜい頑張って素敵な彼氏見つけてみなさい」 そういうとアスカは、にこっと優しくわたしに笑いかける。だから、アスカって好き。 わたしが男で、アスカを支えられるぐらい力があったらって、本当に思うのにな。 「ありがと、アスカ」 わたしは、アスカの腕をぎゅっと、抱きしめて、ありがとをいう。 「ちょ、ちょっと、レイ。いい加減に、それやめてよって・・・」 「いいじゃない、繋ぎになってよ、彼氏できるまでの」 うふふっ、ダーイスキ、アスカ! ◇ ◇ ◇ アスカとじゃれ合いながら、駅までの楽しい道のり。 「もう、アスカってばぁ、あははは」 「いい加減にしなさいよねぇ、レイ!」 バシッ 「いったぁ〜」 わたしを振り解こうとしたアスカの手が、ちょうどすれ違おうとしていた男の子の顔 面にあたる。その男の子は、顔を押さえて、うずくまる。 「きゃっ!大丈夫ですか?」 「そんなに強くはあたってないわよ。それに、そいつが、ぼーっとして、歩いてんが 悪いのよ。ほっときなさい。レイ」 思わず悲鳴をあげて、その男の子を覗き込もうとしたわたしを、アスカはそういって、 肩を掴んで引き戻す。 「でも・・・」 「でも、じゃないわよ。アタシたちが美人だからって、気を引こうってのが見え見え じゃない」 「そ、そうかなぁ・・・」 「当ったり前じゃない。さっ、いきましょ、レイ」 アスカはそういうと、わたしの手を掴んで歩きだしたので、わたしも、男の子の方を 気にしながらも、アスカに引っ張られて歩き出した。 男の子は、口のあたりを押さえて、立ち上がった。 「ちょ、ちょっと、待ってよ。ひどいじゃないか!あんたたち!」 男の子の唇のあたりに、血がついてる。アスカは、立ち止まって、振り向くと、男の 子を睨み付けながら叫んだ。 「アンタに、あんたたちなんて、呼ばれる筋合い、ないわよ!」 「ア、アスカぁ・・と、とにかく、ごめんなさい」 わたしは、アスカの腕をつかんで、アスカを押さえながら、男の子に謝る。 「アンタが謝ることはないわよ。レイ」 「そうだ!君は、悪くない!」 男の子が叫ぶように、そういうと、アスカを睨み付けた。ただ、アスカも負けずに睨 み付けるので、男の子は、気弱に少しひるみながら、口を開く。 「あ、あの・・・一言ぐらい、あやまったらいいじゃないか。人をなぐっておいて・・・」 「なに?アタシが悪いっての?アンタがぼーっとしてたのが悪いのよ」 「僕は、普通に歩いてたよ!あんたの手が突然、僕の顔の前に現れるまではね!」 「オトコなら、それくらい、よけなさいよね!なさけない!」 「なんだってぇ!」 「なによ?やる気ぃ?」 「ちょ、ちょっと、ふたりとも、やめてよ。とにかく!わたしが、ちょっと、ふざけ てアスカに絡み付いてたのがいけないのよ。ね。ごめんなさい。これで、アスカを許 してやって」 「ちょっと、レイ、なにいってんのよ?こいつが・・」 「い、いいから、アスカ、早く」 わたしは、男の子にそういって、アスカを引きずるようにその場を離れようとした。 「待てよ!」 男の子の声にアスカが振り返る。 「なによ!」 「ちょ、ちょっと、アスカぁ・・」 「あんたが何様かしらないけどね、そんな態度で、いつまでもやってける訳がないだ ってことぐらい分かってるんだろ?そうやって、突っ張って生きていくなんて、さっ さと卒業しないと、いつまでたっても、ガキのまま生きていくことになるよ」 男の子はそれだけいうと、くるりと向こうを向いて、歩きだした。 「ア、アスカぁ・・・」 そのまま、追いかけてなぐりかかって行きそうなアスカをわたしはなんとか引き止め ると、アスカに話し掛けた。 「あ、あんなの、気にしなくたっていいわよ」 「別にあんな奴、気になんかしてないわよ。それにしても、偉そうな奴だったわね。 人に説教なんかして。だいたい、あいつだって、十分ガキだったじゃない」 「そうよねぇ。なんだか、真剣な顔して話しだすから、何かと思ったら、あんなこと いいだすんだもんねぇ」 「ほっんと、変な奴だったわ。まったく」 「うふふっ、もう、忘れましょっ!」 「あぁ!もう、こんな時間じゃない!まったく、酷い目にあったわ」 「でも、酷い目にあったのは、たぶん、あっちの方だと思うけど?」 「うっさいわね。ああいう時は、強気でいかないとダメなのよ。足元みられたら、ア ンタなんか、可愛いから、じゃあお詫びに今夜は・・とか、言われちゃうわよ!」 「あら?わたしは相手がカッコ良ければ、それでも、いいけど?」 「いったわねぇ!」 「あははは、嘘よ、嘘!でも、あの男の子、カッコ良かった?わたし、あんまり顔見 てなかったような気がする。ねえ、どうだった?」 「アンタ謝ってばっかりいたからよ。でも、そうねぇ・・・なんだか、頼りなさそう な、なよなよぉっとしたお坊ちゃんだったわね。大体、アタシの手にぶつかってくる ぐらいだから、相当な間抜けなのよ!」 「ふーん、じゃあ、別にいいか、今回は」 「なにが、いいの?」 「え?だから、お詫びに今夜は・・ってのっ」 「アンタ、本気で、そんなこと考えてんの?」 「うふふっ、じゃあ、さっきのお詫びに、アスカに付き合ってあげるわ。今晩とまり にいってもいい?」 「しょーがないわねぇ・・・」 そういいながらも、アスカは、にっこり笑ってわたしに腕を貸してくれる。 「それじゃあ、ご馳走ね!アンタ、つくんのよ?」 「えぇ!!わたし、料理なんて、できないよ」 「ダーメ、泊まるんだったら、代わりに料理。できないなら、このまま、帰宅」 「うーん・・・じゃあ・・・スーパー・・・は、閉まっちゃったから・・とりあえず、 そこのコンビニ入ってこっ!」 まっ、コンビニで、なんかチンするだけのもの買っていって・・ねっ!
つづく

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