レイが好き!
第参話
登校


「アスカ、おはよう。起きて、朝食の用意ができたよ」

僕が、朝ご飯の用意を済ませて、アスカの部屋へいき、アスカを起こす。アス
カが朝から出勤の時は、いつもそうしているように、アスカの頬にやさしく口
づけをすると、アスカが目をあけて、寝惚け眼で、僕に、朝の挨拶をする。

「ん〜・・・・シンジ〜?・・・・おはよう」
「起きた?」

「うん、起きた。って、シンジ!今何時?」
「7時ちょっと前だけど」

「7時!・・・なんで、もっと早く起こしてくれないのよ!」
「だって、いつもの時間じゃないか」

「今日は早いのよ!いったじゃない!」

たしかに、早番だとはいっていたが、何時に起こせとは聞いていない。てっき
り、いつもの時間だと思っていた。僕は、アスカに悪いことをしたと思って謝
った。

「ごめん。いつもと同じだと思ったから」
「アンタばかあ〜!ちゃんとアタシを起こすってのもあんたの重要な役目じゃ
ない。しっかりしてよね!バカシンジ!」

アスカは、焦りながら、起き上がり、洗面所に走っていった。僕は、アスカの
あとについて、洗面所の入口までいき、顔を洗ってるアスカの背中に話かけた。

「ア、アスカ、朝ご飯どうするの?」
「そんなの食べてる時間ないわよ!作っちゃたんなら、あの子でもさそえば?」

「あ、綾波を?」
「アンタばかあ〜?アンタはあの子の保護者なのよ!そのくらい、あったり前
じゃない」

「で、でも、起きてるかなあ?」
「起こしてあげれば?おはようのキスでもして」

「そ、そんなあ」
「まったく、なに、ウジウジしてんのよ!アタシには出来るんでしょ!あの子
もこれから家族なのよ!してあげなさいよ!わかった?」

「わ、わかった・・・・でも、鍵がないよ」
「はい、これ」

そういうと、アスカは一つの鍵を僕に渡した。

「これ、なに?どうして、アスカがもってるの?」
「前、いつでも独立できるようにって、所長がくれたのよ」

「そうだったんだ」
「そうよ」

「で、でも、なぜ、アスカはいままで、このうちに住んでるの?」
「アンタばかあ?その方が楽だからに決まってんじゃないの!」

「そ、そう」
「そうよ。と・に・か・く!早く、あの子、起こして、ここに連れてくんのよ!
いつまで、ボケボケっとしてんのよ」

「わ、わかったよ」

アスカに強くいわれ、僕は、綾波の部屋へ向かった。『あの子もこれから家族
なのよ!』そんなアスカの言葉を反芻しながら。

綾波の部屋の扉の前につくと、右手に握りしてめいた鍵を鍵穴に差し込み、鍵
を右に回そうとした。しかし、鍵はびくともしない。『アスカ、間違えたのか
な?』一瞬、そんなことを思ったが、あのアスカがそんな間違いをする訳がな
い。

僕は、鍵をそのまま抜いて、ノブを回してみた。すると、昨日と同じように、
カチッと音がして、ドアが開いた。

「開いてる」

とにかく、綾波を起こしに、中へ入ると、綾波は、ベッドにうつぶせになって、
小さな寝息を立てて、まだ寝ていた。

僕は、綾波のそばまでいき。その寝顔をじっと眺めた。

『なんて、穏やかな寝顔なんだろう』

しばらく、眺めた後、僕は、自然に、綾波の顔に、自分の顔を近づけ、唇を綾
波の頬にあてた。

「おはよう、綾波」

綾波は、そのままの体勢で、静かに目をあけて、横をむき、僕をみた。

「・・・・碇君・・・・どうして、ここにいるの?」
「ご、ごめん。驚かせっちゃったよね」

「・・・・そんなことはないわ」

確かに、綾波の表情からは、驚きの表情は読みとれなかった。しかし、不思議
そうに僕の顔を見つめていた。僕は、自分のとった行動を思い返し、焦ってし
まった。

「あ、あの、その・・・・綾波を朝ご飯に誘おうと思って、そ、それで、起こ
しに来たんだ。・・・・もう二人分作っちゃたし、ア、アスカが今朝は食べず
に、いくって言うから、その、もったいないし・・・・そ、そうじゃなくて、
綾波は、また、朝ご飯、あの薬だけなのかなって思って、それって、なんだか、
その・・・・僕もまた綾波と食事がしたいって思ったし・・・」
「・・・・」

「ご、ごめん。何いってんだか分かんないよね。僕」
「ううん、そんなことないわ」

そういうと、綾波は、立ち上がり、玄関の方に歩きだした。僕は、ぼっとして、
綾波のいく方に振り返り、綾波の背中を見つめていた。

「・・・・朝ご飯・・・たべるんでしょ?」

僕が、動かないのを不思議に思ったのか、綾波は、上体だけ、振り向いて、小
ごえでいった。

「う、うん」

そうか、綾波は了解してくれたんだ。そう思うと、僕は、急いで、綾波を追い
かけた。

玄関をあけ、入ろうとすると、ちょうど、アスカが、真っ赤なスーツをきて、
出かけるところだった。

「あら、うまくやったんだ。よかったね、シンジ」
「うん、ありがと」

僕が、お礼をいうと、アスカは綾波の方を向いていった。

「アンタがレイね」
「・・・・はい」

「ふーん、まあ、みれるじゃない。まあ、このアタシにかなうオンナは、地上
にはいないけどさ」
「・・・・」

アスカはちらっと、からかうように僕の方を向いて、そういうと、真剣な表情
になって、綾波にむきなおり、いった。

「レイ!いいこと、これからは、分かんないことや困ったことがあったら、な
んでも、シンジに相談すんのよ!」
「・・・・はい」

「アンタは、社会のこと何にも知らないんだから、何かするときは、かならず、
シンジに相談してからすんのよ!」
「・・・・はい」

アスカのそんな言葉に、綾波は、いつもの、無表情で、小さく答える。

「はい、はい、ってホントに分かってんでしょうね?」
「・・・・わかったわ」

なんで、アスカは綾波のこと、こんなに親身になってくれんだろう?僕は、な
んとなく、不思議に思っていた。すると、突然、アスカは僕の方に向きなおっ
た。

「ま、いいわ、じゃ、後はシンジにまかせたから」
「う、うん」

「ちゃんと、あのこと言うのよ」
「わかってるよ」

「それじゃ、行くわ・・・・あー、もうこんな時間!急がなきゃ!」

アスカはそれだけいうと、慌てて駆け出して、行ってしまった。後には、当た
り前だが、僕と綾波が残った。

「ごめんね。アスカってなんだが、強引でさ」
「・・・・そうね。・・・でも、悪い人じゃないみたい」

「そりゃあ、アスカはいい人さ。僕のこともいつも心配してくれるし、それに、
綾波のことも心配してくれてるみたいだし」
「・・・・そうね」

「さあ、ご飯冷めちゃうから、早く食べよう。それに、アスカじゃないけど、
僕達も、急がなきゃ、もう、あんまり時間ないよ」
「・・・・そうね」

綾波は『そうね』しかいわず、動かない。なにか、考えているようでもある。
しかし、確かに、急がないと僕達も遅刻してしまいそうだ。僕は、綾波の手を
引きながら、ダイニングへ向かった。

ダイニングに入ると、僕は、ふと、自分が綾波の手を握っているのに気づいた。
綾波は、自分の手を握っている僕の手をみながら、つぶやいた。

「・・・・碇君・・・・手」
「あ、ああ、ご、ごめん。つい、なんだか・・・」

慌てて、僕は、綾波の手を離した。

「・・・・謝ることはないわ」
「そ、そう?」

「・・・・そう・・・・ただ、碇君の手に握られるの、二回目っておもって・・・・」

そういうと、綾波は、少し下を向き、黙ってしまった。下を向いてしまったの
で、良く分からなかったが、綾波の白い顔に一瞬、なにか赤みがさしたような
気がしたが、なんだか、綾波が恥ずかしがっているというか、照れているよう
な様子を示しているのが、僕にはわかって、それが、なんだかとてもほほえま
しいような感じがして、僕は嬉しかった。

「さ、さあ、食べようよ」

ちょっと、そんな綾波を見つめてしまったが、時間がないのを思いだし、とに
かく、食事をはじめることにした。

食事を終えると、僕は、食器を、流しへ運び、食器を素早く洗いだした。

「綾波、学校の準備はいいの?」
「・・・・ええ、わたし、まだ、教科書ないもの」

それは、そうだ。綾波は、なぜか、既に、制服を着ているし・・・・そういえ
ば、昨日、うちに来た時も制服だったし、制服のまま寝ていた。綾波は、制服
以外の服を持っていないのだろうか?そんなことを考えながら、食器を洗い終
った。

「じゃ、じゃあ、もう行こうか、急がないと遅刻だよ」
「・・・・そうね」

「じゃあ、綾波は、自分の鞄をとりにいっといでよ。玄関のまえで待ってるか
ら」

僕は、今日の授業を確認して、教科書を鞄に詰め込んで、急いで玄関をでると、
既に、綾波は鞄をもって待っていた。

「ごめん、またせっちゃって」
「・・・・そんなことないわ」

僕が、鍵をとりだし、鍵をかけると、それをみて、綾波も自分の部屋の玄関に
鍵をかけた。綾波は、本当に社会のことを何一つ知らないようだ。なぜ、そん
な育てられ方をしたのか分からないが、一ついえるのは、これからは、僕が、
綾波にいろいろなことを教えて、綾波を守ってやるんだ。そうしなければいけ
ないんだということだ。

「じゃ、行こうか」
「・・・・うん」

そう答えると、綾波は、僕の腕に両手を巻き付けて、しがみついてきた。

「ど、どうしたの?綾波」
「・・・・昨日・・・・見たの・・・・二人が・・・・たのしそうだったから
・・・・」

「二人って、トウジたちのこと?」

確かに、あの二人なら、いつもこんな感じかも知れない。

「・・・・碇君は、たのしくないの?」
「そ、そんなことないよ。綾波と腕を組んで歩けるなんて、とても、うれしい
よ」

「よかった」

「で、でも、それじゃあ、歩きにくくない?」
「そんなことないわ」

とは、いうものの、歩くスピードは僕の普段の半分以下だ。今日の遅刻がこれ
で、確定した。しかし、僕は、綾波に腕を組まれて、舞上がってしまい。そん
なことはどうでも良くなっていた。それに、不思議と周りの目というものも気
にならなかった。ただ、嬉しかっただけだ。

『ああ、僕はなんて幸せなんだろう!』


    ◇  ◇  ◇


結局、僕達はいつもの電車・・・昨日、綾波をはじめて見た電車・・・には乗
り遅れた。それどころか、3本も後の電車で学校へ向かった。今日の一時間目
は、ミサト先生の授業だ。30分も遅れて、二人で教室に入って行ったら、なん
といってからかわれるかは、目に見えている。

「あ、綾波、完全に遅刻だね。今日は」
「・・・・そうね」

「そ、それでさ、どうせ、一時間目は遅刻だから、一時間目はさぼっちゃって、
二時間目から出るということにしない?」
「碇君がそういうなら、そうするわ」

「それじゃあさ、ちょっと、話したいこともあるし、そこの喫茶店にはいって
二時間目まで、時間をつぶそうよ」

そういって、学校のすぐそばにある喫茶店に綾波を連れて入った。アスカにい
わせると僕は、綾波の保護者なんだそうだが、いきなりこれでは保護者失格か
も知れない。でも、今日は、遅刻するのはしょうがないし、綾波に、あのこと
をいわなければならないから、しかたがないだろう。

「おう、ジンジ君じゃないか!最近どうしたの!みなかったじゃない?っと、
今日は、オンナづれか。やるじゃないのー!朝帰り?」
「そ、そんなんじゃないってば。マスターってば、すぐ人をからかうんだから」

「ごめん、ごめん、今日は、おとなしくしとくよ。俺はそんなに野暮じゃない
し。でも、あとで聞かせろよ」
「マ、マスター!」

そいうと、マスターは、逃げるように、カウンターの奥へ引っ込んでしまった。
ここは、僕達が、とくにトウジたちが授業をさぼって溜る場所になっている。
マスターがいい人で、制服で平日の昼間に来ても、『そうだよな、学校退屈だ
ろ、うちは、教師は立ち入り禁止だから、いくらでも、遊んでけ、ただし、金
も落して行けよ』といって、見逃してくれる。もとツッパリだそうだが、いま
はそんな感じには見えない。気のいいオジさんという感じだ。そんな、訳で、
僕達は、学校をさぼってよくここへ来ていた。といっても、僕がミサトさんの
授業をさぼるのははじめてだったが。

「シンジ君、今日は、何にする?いつもの?」
「それじゃ、チョコレートパフェ、あ、綾波は何にする?なんでもおごるよ」

「・・・・碇君と同じもの」
「じゃ、チョコレートパフェ、二つお願いします」

「チョ・コ・パ・フェ・2、と・・・・ところで、シンジ君、良かったわね。
可愛い子じゃない。大切になさい」
「レ、レイコさんまでー」

注文をとりに来たレイコさんは、最後に、ウインクをしながらそういって、去
っていった。レイコさんは、マスターの奥さんで、元レディースで『剃刀のレ
イコ』といえば、誰もしらないものはなかったという人らしい。しかし、僕に
は、レイコさんがそんな恐い人だったなんて、信じられない。一体いくつなの
か分からないが・・・そんなに若くはないはずなのだが・・・とっても、若々
しく美人で、それに、とっても優しい。

この二人と話すのも楽しいので、僕は、よくここへ来るのだが、今日は、失敗
だったかも知れない。他の店へいけば良かった。まあ、それでも、注文のチョ
コレートパフェを持って来た後は、それこそ、野暮な真似はしないつもりなの
か、カウンターの奥へ引っ込んでくれた。しかし、きっと、聞き耳をたてて、
話を聞いてるに違いない。そういう人達だ。まあ、きかれて困ることはないの
だが。

僕は、チョコレートパフェを一口食べて、綾波の反応をみた。綾波はきっと、
こういうものをはじめて口にしたのだろう。すこし、おどろいたような顔をし
て、それから、少し笑みを浮かべて僕を見た。

「おいしい?」
「うん、とても・・・こんなの、はじめて」

そうだ、僕は、綾波に話さなければ、ならないことがあったんだ。でも、なん
て切り出そうか?

「・・・・碇君・・・・話って何?」
「うん、実は、アスカが、僕に、綾波のことを守れっていうだ。も、もちろん、
僕も、綾波のことを守ってあげたいと思ってたんだけど。もちろん、その、綾
波がそんなの迷惑だっていうなら・・・・」

「そんなことないわ・・・・わたしには、碇君しか・・・頼る人がいないもの」
「それじゃあ、僕が綾波を守っていいんだね?」

「うん」

「そ、それで、綾波を守るなら、一緒に住むべきだって、アスカが言うんだ。
ほんと、強引で困っちゃうんだけど」
「・・・・わたしが、碇君と、一緒に住むの?」

「べ、べつに嫌なら断ってくれてもいいんだ。どうせ、隣なんだし・・・・た
だ、僕も、あんな、何もない部屋で、綾波がひとりで、くらしてるのって、な
んだが、さみしいんじゃないかと思って・・・・」
「・・・・さみしい?」

「そう、綾波は、一人で、ずっとひとりでいたら、誰かそばにいて欲しいって、
思うことない?」
「・・・・わからないわ?・・・かんがえたことなかったから」

「そう・・・で、でも、一人だと、病気になったり、何か困ったことが起こっ
た時とか大変だろ。それで・・・もし、よければ、うちにこない?」
「・・・・碇君が、そういうなら、そうする」

「ほんと!うれしいな、綾波とすめるなんて!・・・・で、でも、そうだ。今
日、午後、生活用具を買いにいくって約束してたけど、どうしよう?うちには、
大抵のものはそろってるし、必要なくなっちゃったね」
「・・・・覚えててくれたの?」

「あ、当たり前じゃないか。そうだ、綾波がうちにくるお祝いになにか買って
あげるよ。綾波は、何か欲しいものある?」
「・・・・分からないわ」

「そうだ、ちょっと気になってたんだけど、綾波って、制服以外の服って持っ
てないの?」
「・・・・そうね。これしかないわ」

「じゃあ、服を買いにいこうよ。それから、綾波も料理、楽しいっていってた
し、エプロンも買おう。それから、綾波もこまごまと必要なものはあるだろう
し、とにかく、買いものには、いこうよ。僕も考えておくから、綾波も何が必
要か考えておいてね」
「わかったわ」

「僕の話っていうのは、そんなとこ。綾波はなにかある?」
「・・・・碇君、優しいのね。わたしのためにこんなにかんがえてくれて・・・」

「と、当然じゃないか!僕は、綾波が・・・・好き・・・・なんだ・・・から」

最後の方は、なんだか消えかかりそうな声になったが、一度、いってしまった
ことなので、なんだかふっ切れて、僕は、そういえた。

「『好きなんだから』、か・・・青春だねえ」
「マ、マスター」

突然、後ろから声がして、振り返ると、マスターがニヤニヤして立っていた。

「照れなくったって、いいんだぞ、シンジ君。人を好きになるというは素晴ら
しいことなんだ。なっ、レイコ」

最後の台詞は、カウンターの奥にいる奥さんに向けたものだ。

「なにー?、なんだってー?」
「レイコ好きだよ〜!」

「もう、バカね!そんなことより、シンジ君、二時間目始まるわよ。別にさぼ
るならそれでもいいけど、どうするの?」
「えっ、もうそんな時間ですか?」

僕は、時計をみて、時間を確認すると、慌てて立ち上がった。

「おはよーさーん、おお、シンジ、やっぱりここやったか」
「ト、トウジ、それに、洞木さんも」

「俺も来たぞー、家に電話しても誰も出ない、自殺でもしたんじゃないかって
心配したんだぞ」
「ケンスケまで」

店を出ようとしたところで、みんなが入って来た。そんなに、僕はみんなに心
配をかけたのだろうか?そんなに、昨日の僕は普通じゃなかったのだろうか?

「そやけど、わいらのとりこしぐろうやったみたいやな」

トウジは綾波の方をちらっとみて、僕にいった。僕達は、僕と綾波は、来る時
と同様、腕を組んで、立っていたのだ。

「ち、違うんだよ、トウジ」
「ほたら、なにが違うんか説明してもらおやないか。まあ、立ち話もなんやし、
ちゃーでもしばきながら話しょーや。マスター、おはようさん」

そういうと、洞木さんをつれて、トウジはカウンター席の方へ歩いていった。
しかたがないので、僕も、綾波をつれてついていった。ケンスケもそのあとか
らついてきた。

「ああ、また、賑やかなのがきたな。3バカトリオ勢ぞろいじゃないか。おは
よう、ヒカリちゃん、大変だね、いつも、こんなの相手で」

「おはようございます。マスター」
「マスター、そりゃーないで」

洞木さんは、マスターのお気に入りで、マスターは、洞木さんに話す時は突然、
優しい口調になる。ケンスケは、なにかお目当てのものを探すようにすこし、
キョロキョロしている。

「これで、2時間目もさぼり決定ね。商売繁盛でいいわ」

レイコさんが、カウンターの奥から顔を出して、声をかけると、ケンスケの顔
が輝く。ケンスケのお目当てはレイコさんなのだ。実は、レイコさんの現役当
時の写真など、ケンスケはいろいろ持っている。

「お、おはようございます。レイコ様。その後、お変りありませんか?」
「おはよ、ケンスケ君。このレイコ様に変化があるわけがないだろ!」

レイコさんも、そんなケンスケに一応、乗ってくれる。昔の血が騒ぐのか?声
まで変わる。ケンスケは、それに嬉しそうに答える。

「御意、まさしく、その通りであります。常に、お美しいレイコ様!お声、あ
りがとうございます。」
「よろしい。じゃあ〜、みんな、何にするの?水だけじゃダメよ!」

レイコさんは、突然、崩れるように可愛い声になって、注文を取り出す。よく
やるよ、まったく。

「わいは、ほたら、氷いっとこかな、レモン白玉や」
「わたしは、フルーツパフェ・デラックス、おごってくれるわよね、トウジ?」

さすがアスカの親友、最近、洞木さんもアスカに似て来た。

「おお、ヒカリのためならなんだってするで」
「わー、おとこらしい。最高!トウジ君」

これは、レイコさんのお言葉。商売繁盛で結構なことですね。

「俺は、じゃあ、レイコ様のコーヒーをお願いします」
「ぼ、僕は、もう一辺、チョコレートパフェ」
「わたしも・・・」

「シンジ君は、ほんとに好きね、チョコパフェ。あなたも、そうなの?」

レイコさんは、僕をみて、その次に綾波をみてそういった。

「・・・・はい」

「・・・ほんとに好きなのね・・・・シンジ君のことが」
「レイコさん!な、なにいいだすんだよ」

僕が、反論しようとすると、ギロッとレイコさんは僕をにらんだ。こ、恐い。

「まあ、まあ、そのくらいで。はい、ヒカリちゃん、フルーツパフェ・デラッ
クス」
「感激!早いですね。マスター!」

「そ、ヒカリちゃんはボクのお気に入りだからね。何でも一番だ」
「マスター、奥さん睨んでますよ」

「あ?ああ、まちがえた。ヒカリちゃんは2番、一番はレイコ」
「このっ・・・・はい、ケンスケ君、コーヒー」

カウンターの裏で、なにが起こったのかは、推測のいきを出ないが、レイコさ
んが、マスターの隣にきて、足で何かしたらしい。マスターは、痛そうな顔に
なって、それとは対照的にレイコさんはすっきりした笑顔で、ケンスケにコー
ヒーを渡した。

「ありがとうございます。謹んで、賞味させて戴きます」

「はい、チョコパフェ2つに、かき氷レモン白玉」

注文の品が行き渡ると、マスターもレイコさんも、コーヒーを自分用にいれて、
僕達の話しにくわわるスタンバイをすると、まず、マスターが口火を切った。

「さてと、じゃあ、ボクたちの新しい仲間を紹介してくれないか」
「ああ、あいつは昨日転校してきたんや」

「トウジ君はいいの!おとなしそうな子ね。あなた、お名前はなんていうの?」

「・・・・綾波・・レイです」

こういう時は、レイコさんが完全に仕切ってしまう。綾波は、緊張しているの
か、僕に見せるような、和んだ表情は見せず、無表情で、答える。

「ふーん、レイちゃんか。レイコも、レイちゃんだし、レイちゃんてのは綺麗
な子ばっかりなんだな」
「もう、ばかね!・・・で、シンジ君と一緒にくらすのね?」

「・・・・はい」

「「「えー!?一緒に暮らす!?」」」

綾波が、冷静に、表情をかえずにそう答えると、トウジたちの驚きの声が重な
る。僕は、慌てて、トウジたちに説明する。一応、納得してくれたようだ。

「シンジ君のことが好きなのね?」
「・・・・たぶん、そうだと思います」

「分からないの?」
「・・・・はい」

「ふーん、ま、いいわ。で、シンジ君は、レイちゃんが好きなのね?」

僕は、綾波がなんてこたえるのか、ドギマギしながら見ていたが、突然、令子
さんは僕に会話をふって来た。

「えっ、あの、えと・・・」

僕は、真っ赤になって下を向いた。すると、レイコさんは、綾波にむかって尋
ねた。

「シンジ君は、もう、好きだっていってくれた?」
「・・・・はい」

「そう、じゃ、もういいわ。私の聞きたいことは終ったわ」

そういうと、レイコさんは小声で、僕にいった。

「ちょっと、変わってるけど、素直ないい子じゃない。守ってあげるのよ」
「は、はい」

僕は、綾波がレイコさんに褒められたのが嬉しかった。『素直ないい子』こん
な、短時間にレイコさんは、あの無表情の綾波から、それをよみとったのだ。
それに、綾波は、僕が守る。それは、間違いない。

「わ、わい、もうしゃべってもいいやろか?」
「いいわよ、トウジ君」

「おおきに、ほんなら、おまちかねの、シンジがどないして、昨日あれから綾
波とこんだけ親密になったんか聞かせてもらおやないか」
「そ、そうだよ、シンジ、あれから何があったんだよ?」

「そ、それは・・・・」

僕は、かいつまんで、余りいいたくないことは、裸をみたとか、キスをしたと
かはいわずに、あったことを話した。

「へえ、それじゃあ、碇君、綾波さんに料理つくってあげたんだ」
「そ、そんな、大したもんじゃないよ。それに、綾波も手伝ってくれたし」

「でも、すごいわよ。トウジにも見習ってもらいたいものね」
「そ、そんな、わい、料理なんてようせんで。それに、ヒカリの料理が最高な
んやからそれ以外のもんは、食われへん体になってもうとるし、なっ、ヒカリ」

「トウジ・・・」「ヒカリ・・・」

「はい、はい、分かったから、二人でやってろ!それより、シンジ、今日の午
後は、デート・・・まあ、シンジのいい方をすれば・・・買いものだろ?明日
は、なにかあるのか?」
「いや、別になにも考えてないけど。」

「それじゃあさ、歓迎会やろうよ。綾波の」
「歓迎会?」

「いいわね、相田君にしては、さえてるじゃない?やりましょう。碇君のうち
でやりましょう。久しぶりに、アスカにも会いたいし。アスカったら、このご
ろ忙しくて、つき合い悪いのよねえ。明日は、日曜だし、うちにいるんでしょ?」
「う、うん、たぶん」

「じゃ、決定ね。私、ケーキ焼いて持ってくわ。そうね、碇君のうちに11時集
合で、お昼ご飯を食べながら、ってのはどう?」
「11時やったら、昼飯には早うないか?」

「ばかねえ、碇君に準備全部やらせる気?料理作ったり、いろいろ、準備する
のよ。ね、碇君、どうかしら?」
「う、うん、いいんじゃない?」

「綾波さんも、いいわね?」
「・・・・碇君がそういうなら」

しばらく、黙っていた綾波は、洞木さんにそう聞かれると、小さな声で答えた。
そんな綾波から洞木さんは何か読みとったのか、一瞬、考えた後、続けた。

「・・・・なんだ、やっぱりそういうことなの、まあ、いいわ」
「ヒカリ、どういうこっちゃ?」

「いいのよ!トウジは!ところでさ、私たち、綾波さんにまだ自己紹介してな
いんじゃない?」

「そういえば、そうやな、友達やねんから、そういうことはきちっとしとかな
ほな、わいからいくで、わいは、鈴原トウジ、部活はバスケット部や、一応、
強いんやで、うちとこのチーム。ほいで、趣味は、なんやろ?やっぱし、食う
ことかな?好きなもんは、ヒカリや。以上や」

「・・・・」
「つ、次はケンスケ、やらんかい」

「あ、ああ、俺は、相田ケンスケ、写真部所属、趣味は、やっぱり写真。好き
なものは、いろいろあるけど。ミリタリー関係とか。そ、そうだ。シンジにや
った綾波の写真、俺がとったんだぜ、けっこう、うまくとれてるだろ?」
「・・・・そう」

「あーあ、あんたたち、もっとゆうことないの?私は、洞木ヒカリ、ヒカリっ
て呼んで、あなたのことは、これからレイって呼ぶわ。いいわよね。」
「・・・・いいわ」

「一応、今までは、この4人で、中学の時は、アスカ・・・しってるでしょ?・・・
もいたから5人で、いろいろ遊んでたの。まあ、馬鹿ばっかしてんだけどね。
まあ、親友よ。私とトウジは恋人同士だけどね」
「・・・・そう」

「碇君の恋人なら、これからは、レイも私の親友なのよ」
「ほ、洞木さん、恋人って!」

「碇君には、いってないの!いい、レイ、確かに、碇君は、悪い人じゃないし、
頼りにしてもいいかもしれない。でも、碇君は、オトコだから、オンナの子の
ことは、わからないと思うわ、だから、そういうことで、なにか相談があるな
ら、私にしてね。友達なんだから」
「・・・・わかったわ」

「じゃ、握手しましょ、よろしくね」
「・・・・よろしく」

洞木さんの差し出した手をどうしたらいいのか分からないように綾波はみた後、
僕の方をみた。僕は微笑みかけて、うなづくと、安心したように、手を差し出
した。その手を洞木さんが握る。女の友情って奴がめばえつつあるのかもしれ
ないが、僕にはそんなことは分かりっこなかった。

「じゃ、3時間目が始まるわ。いきましょ」
「あの、ヒカリちゃん、ボクたちは自己紹介しなくていいのか?」

マスターがすがるような目で見ている。

「いいのよ、レイ、マスターとレイコさんよ。これでいいでしょ!トウジ、お
勘定まかせたわよ!」

そういうと、レイの手を握ったままレイを引っ張りながら、でていってしまっ
た。後に残ったのは、男3人と、レイコさんの手でひらひらと揺れているレシ
ート。

結局、3人で、割り勘ということになった。

「とほほ、なんで、俺まで、」
「あほー、友達やないか、なんでもわけあわな」
「そうだね。トウジいいこと言う」

「俺は、コーヒー一杯だけのはずだぞ!それに洞木はトウジの、綾波はシンジ
の彼女じゃないか!それに、なんで、チョコパフェが4つなんだよ!」

そんな、ケンスケの声が聞こえたが、僕も、今日は、買物しなくちゃいけない
し、敢えて、無視させてもらった。

つづく

あとがき どうも、筆者です。3話目です。 読んでくださってありがとうございます。 だんだん、らぶらぶになってきましたね。 『筆者はなんて幸せなんだろう!』 本格的な、らぶらぶまで、あとちょっとです。(たぶん。そうだといいな) しかし、タイトルは『登校』なのに、結局、学校にたどり着かずに 次回に続いてしまった。そして、おそらく、次回は放課後から始まるだろう。 筆者の学校嫌いにも困ったものだ。 ところで、今回の話は、喫茶店がでてきます。 喫茶店に入るところで、突然、思いついたことです。 やはり、このまま、学校にいきたくないという思いが、 筆者の深層心理にあるのかもしれません。 でも、なぜ、あんなキャラクターがでてきてしまうのだろう? 今後も、あの人達はでてくるだろうか? 登場人物が好き勝手に動き回るどころの話ではありません。 登場人物が自己増殖をはじめてしまいました。 実は、皆が集まってる喫茶店に、 あやうくミサトさんが登場してしまうところでした。 あそこに、ミサトさんまで来てしまったら、きっと、一人ずつ喋るなんて 不可能だったろうな。それでなくても文章力が・・・・ レイコさんがしきってくれて、本当によかった。 (うーん、登場させても、レイコさんに仕切らせれば、 それでよかったのかもしれない。 でもまあ、今回はこんなところで・・・) 全国三千万のミサトさんファンの皆様には申し訳ありませんが、 結局、この物語では、ミサトさんはチョイ役のようです。 でもまあ、ミサトさんはそうやって、影からシンジ君を見守るっていうのが いいのかもしれない。 (でてくると、うるさいし・・・あ、ごめんなさい、冗談です) そんな感じで、次回へ続きます。 多分、放課後からです。さあ、お買い物だ! それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。

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