レイが好き!
第九話
お小遣い


「やあ、いらっしゃい」
「マスター、奥いいかしら?」

「別にかまわないけど、どうしたの?」
「あとで、カウンター、行くわ。だから、ちょっと二人にして」

レイは、いつもの喫茶店に入ると、いつものようにカウンターにはいかず、奥
のテーブル席へ歩きだした。いったい、どうしたのだろう?僕は、レイのあと
に、ついていった。レイは、一番奥のテーブルの席にすわったので、僕は、そ
の向かいに座ろうとする。

「シンジ、こっち」

レイは、自分のとなりの席を軽く叩きながらそういう。

「う、うん」

僕は、レイの態度がおかしいのが気になったが、いわれる通りに、レイのとな
りに座った。

「どうしたの?レイ」

僕が、そう聞くと、レイは、突然、大粒の涙を流しながら、僕の膝に崩れ落ち
た。

「ど、どうしたの?」

僕は驚いた。さっきまで、あんなに明るかったのに。おびえるように僕にしが
みつきながら、レイは泣いている。泣いている理由は僕にはなんとなく分かる。
恐かったんだ。いくら、レイが強くても、ひとりじゃ、人は生きて行けない。
レイは、こうして、僕にすがって、泣いてくれる。こういう時は、僕がレイを
守るんだ。

「いいよ。泣きたい時は、泣いていいんだよ。僕の前で、強がったりしなくて
いいんだからね」

僕は、レイの頭と背中に手をやって、暖かく、レイを安心させるように、優し
くそういった。レイは、そのまま、泣きじゃくっていたが、しばらくすると、
気持ちの整理がついたのか、それでも、泣きながら、声にならない声で、つぶ
やいた。

「わたし・・・・わたし、恐かったの・・・・シンジが・・・・わたしのこと
を知って、どう思うかって・・・・シンジが、わたしから、逃げていくんじゃ
ないかって」
「そんなこと、あるわけないじゃないか」

僕は、静かに、それに答える。

「ううん、わかってる。わかってたはずなの・・・・シンジを信じてたはずな
の・・・・でも、恐かったの」
「僕はレイのことを愛している」

「ううん。シンジは、いつでも、誰にでも、やさしいもの。だから・・・・」
「違うよ。確かに、僕は誰も傷つけたくないと思って、行動してきたけど、レ
イは、特別なんだ」

「わたしが特別?」

レイは、顔をあげて、涙を拭きながら、僕の顔を見た。

「わたしは・・・・生まれが特別だから?」
「ちがうよ。なにいってんだよ。そういうことじゃないよ。レイは、僕にとっ
て、特別な存在だってことだよ」

「レイは、僕が、いままでの生きてきた中で、はじめての、僕の愛する人なん
だ。だから、特別な存在」
「シンジ・・・・」

「だから、レイがそんな風にして、生まれてきたからって・・・・確かにそれ
は、僕には想像もつかない程、悲しいことかも知れないけど・・・・レイは、
僕にとっての唯一の特別な存在。それは、変わらないよ」
「シンジ・・・・こんな、わたしのどこがいいの?」

「僕にはわからなかった」
「わからなかった?」

「うん、でも、いまはちょっと分かったような気がする」
「・・・・」

「きっと、レイは、僕にはないものを持ってるから、僕はレイに惹かれるんだ」
「シンジにはないもの?」

「そう、僕にはないもの・・・・レイには、勇気があるよ。そして、とっても
強い人間だよ。僕もレイのようになりたい」
「わたしはシンジのような優しい人になりたいのに」

レイは、そういうと、僕の目をみて、クスッとわらった。僕もレイの目をみな
がら、笑って、レイに話しかける。

「ホント、レイは勇気があるよ。屋上で、うちあけるのも勇気がいっただろ?」
「でも、シンジを信じていたから、シンジを愛しているから・・・・だから、
話すことが、わたしの愛のかたちだと思ったから・・・・だから、ホントよ。
わたしは、シンジを愛しているわ。いまは、自信をもって、そういえるわ」

「ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして!さっ、マスターがお待ちかねよ。いこ!」


    ◇  ◇  ◇


「あれ?もういいの?」

僕達が、カウンターの席につくと、マスターは、まちかねたように寄ってきて、
からかうようにそういった。僕が口を開きかた時、レイがそれより早く、マス
ターに答えた。

「うん!いっぱい泣いたら、すっきりしちゃった」
「そう、よかった。話はすんだんだね?」

「そうね。済んだわ。お互いの愛を確認しあってね」

そういうと、レイは悪戯そうに僕の顔を見た。

「レイちゃんもいってくれるねー。それにしても、シンジ君もすみに置けない
な、こんなかわいい子、泣かして、愛を確認するなんて」
「マ、マスター!」

「そ、わるい人なの!」
「レ、レイまで!」

ふたりして、僕を責めたてる。それに、なんなんだ。このレイの変わり身は!
本当に、レイは強い人間だ。それにくらべて、僕は・・・・

「じゃあ、重罪人には罰を・・・はい、これ、チョコパフェ・デラックス、も
ちろん、シンジ君のおごりだろ?」
「わー、すごい。マスター作って、待っててくれたんだ」

「そうだよ。早く、レイちゃんと話がしたくてね」
「ありがとう。マスター。シンジ!いつまでも、くらい顔してないで、シンジ
も食べましょ」

「う、うん」
「だから、くらい顔しないでって、いってるじゃない!」

「うん、ごめん」
「謝っても、ダメ・・・・罰が必要だわ・・・・」

レイは、そういうと、僕の頬に、唇で軽く触れた。僕の顔はみるみるうちに、
真っ赤になっていった。

「レ、レイ!」
「罰よ、罰。ほら、明るくなったじゃない。効果満点ね。ネッ、マスター?」

「う、うん。でも、明るくなったっていうか・・・・赤くなったっていう方が
いい感じだね」

マスターは、笑いながら、そういった。レイもニコニコしている。

「うふふ」

「うふふじゃないよ。ひどいよ。突然こんなことして」
「でも、嫌じゃなかったでしょ?」

「それは・・・・・そう・・・・で、でも、人前でなんて!」
「あれ?シンジ君は、僕を、そんな風にみてるんだ。悲しいなあ、ボカァー」

マスターは、悲しそうな顔を装って、僕をみる。レイは、楽しそうに、僕を見
ている。こんな風にされたら、僕には答える言葉がないじゃないか!

「ひ、ひどいよ!ふたりして、僕をからかって」
「ごめん、ごめん。つい、幸せそうだから。からかってみたくなるんだよ。そ
れに、レイちゃんをひとりじめしちゃってさ。僕もレイちゃんが好きなのに」

「ホント?マスター。わたしもマスターが好きよ」
「じゃあ、シンジ君に飽きたら、僕のところへおいで、かわいがってあげるか
ら」

マスターは、ニコニコしながら、レイの方を見て、そんなことをいう。冗談だ
と分かっているのに、僕は、なんだか無性に腹がたってきた。

「マスター、そんなこと、いっていいんですか?」
「いいの、いいの。今、うちの奴、友達と遊びにいってるから」

「そうですか、じゃあ、今日のお礼に、レイコさんにお伝えしておきます。マ
スターの言葉を」
「か、勘弁してよ。シンジ君。シンジ君がいうと、本気にするだろ。うちの奴」

「あれ?マスター、冗談だったんですか?・・・レイ、勘弁してあげていいと
思う?」

僕は、レイの方を見て、そういった。レイは、少し考えたあとにこういった。

「そうね、シンジの好きにすればいいわ」
「レイちゃん、そんなー」

「でも、わたしがシンジに飽きるなんてありえないわ」

そう、僕は、その一言が聞きたかったのだ。人のこころなんて、いつだってか
わるけど・・・・なんの保証もないけれど・・・・でも、安心できる。僕は、
マスターの方に向きなおった。

「そうですね。レイに免じて、勘弁してあげます」
「助かるよ。恩に着るよ、シンジ君」

「じゃあ、今日は、マスターのおごりということですね」
「ひどいなあ、シンジ君。いつから、そういう人間になったの?」

「冗談ですよ。でも、ちょっとサービスして下さいよ。今日は、これから、銀
行にいって、お金おろそうと思ってたから、あんまり持ってないんですよ」

そうなのだ。突然、あんな高いものを、おごらされても、ない袖は振れないの
だ。まあ、マスターも商売で・・・・本当にそうなのか疑問だけど・・・・や
ってるわけだから、そんなに強くはいえないんだけど・・・・

「そうか、わるかったね。じゃあ、今日は特別に、レイちゃんの分は、僕のお
ごりっていうことにしよう」
「ダメです。レイの分は、僕がおごります。マスターは僕におごってください」

「うーん・・・わかったよ。今日は、シンジ君の勝ちだ。二人分ただにするよ」
「さすがー、マスター。太っ腹!やったね。レイ」

「うふふ。ありがとう。マスター」
「だめだよ。おだてても、そんな目で見ても、今日だけだからね。もう負けな
いぞ。それに、レイコにばれたら、なんていわれるか・・・・とほほ」

「自業自得だよ。ねっ、レイ」
「そうよねっ」

僕達は、笑顔で見つめあった。レイは、本当に楽しそうな笑顔だった。それか
ら、僕達は、しばらく、談笑しあってから、店をでた。


    ◇  ◇  ◇


「はい、これ、レイの分」

僕は、銀行で、お金をおろすと、レイにそういって、小遣いをわたした。

「うん・・・・これ、自由に使っていいのね」
「そうだよ。レイは、もう何に使うか決めてるの?」」

「うん。まだ、何を買うかは決めてないわ。でも、何に使うかは決まってるの」
「そう。はじめての小遣いで、レイが何するのか興味あるな」

「でも、秘密。いまは、教えてあげない」
「ちぇっ、けちだなあ、レイ」

「うふふ。そう、わたし、けちだから・・・・だから、不必要なことには、お
金、使わないわ」

レイの意味深な言葉に、なんとなく、何に使うのか想像できた。でも、レイを
がっかりさせることもないし、違ってたら、僕もがっかりしてしまうので・・・・
そうすると、レイもきっと、気をわるくするだろうから、僕はそれ以上聞かな
いことにした。

「まあ、いいよ。もう、レイのお金なんだから、自由に使えばいいんだから・・・・
それから、僕に気を使うことはないからね」
「シンジ、わたしがお金、何に使うか、わかったのね?」

「う、うん。なんとなく、想像できるけど・・・・でも、はっきりとはわから
ないから」
「もう、つまんないの!じゃあ、他のことに使っちゃおうかな?」

「そ、そんな。ホントにわかんないから」

本当に、レイの考えは複雑だ。僕は、自分が想像したことにだんだん自信がな
くなってきた。

「うふふ。冗談よ。でも、はっきりはいわないわ。答えがわかるまで、ドキド
キしててね」
「もう、意地悪だな。レイは」

やっぱり、僕の想像はきっと正しいと思える。でも、レイは、そんな僕の考え
がわかるように、意地悪にそんなことをいう。ホントに、にくらしい・・・・
悪戯な天使だ。

「あらっ、今ごろ、わかったの?」
「そう、遅ればせながら、ようやくわかったよ」

いままで、陽気に、喋っていたレイは、そんな僕の言葉を聞くと、急に、悲し
い瞳で、僕をみつめだした。

「わたしのこと・・・・嫌いになった?」
「そ、そんなこと、あるわけないじゃないか」

突然のそんなレイの変化に、僕は慌てた。レイは、勇気があって、強い人間だ。
でも、本当は、ガラス細工のように繊細で壊れやすい。レイの勇気は、僕の愛
が作り出しているんだ。だから、それが、不安になると、きっと、全てが崩れ
だしてしまうんだ。

「じゃあ、愛してる?」
「あ、あたりまえだよ」

「ちゃんといって、わたしの目をみて」
「あ・・・・」

いいかけて、僕はレイの顔が、さっきまでの悪戯そうな顔になってるのに気づ
いた。

「・・・・その手にはのらないよ。もう、僕はレイがズルイ女だって、わかっ
たんだから」
「もう・・・・言ってくれてもいいじゃない。減るもんじゃないんだし」

「ダメ。そんなに、大安売りしてると、値打ちがなくなっちゃうよ。今日は散
々いったからね」
「けちねぇ、シンジ」

「そう、僕もけちなんだ。だから、一日一回まで、そう決めた」
「じゃあ、明日の分でいいから、今、言って」

「だーめ、今日は何回、言ったと思ってるの?もう、一週間分ぐらい言っちゃ
ったから、一週間お預け」
「えー、シンジ。そんなのずるい」

「これで、おあいこだよ」
「でも・・・・」

レイは、残念そうな顔で、僕をみる。そんな、顔して見つめられたら、僕には、
レイの頼みを断ることなんてできない。やっぱり、ズルイ女だ。

「わかったよ。レイ。さっきのは、開店大売出しの、特別大サービスだったか
ら、ノーカウントにしてあげるよ」
「ホント!ありがとう。シンジ、だーい好き」

そういうと、突然、僕に抱きついてきた。そこで、僕ははじめて、まわりの状
況に気がついた。ここは、まだ、銀行の中だ。比較的、静かな銀行のなかで、
さっきから、僕達の声だけが、こだましていた。通りすがりのお客さんはもち
ろん、フロアー係の行員さんまで、たちどまって、僕達を見ている。

「レ、レイ・・・・みんなが見てる」
「・・・・」

そういうと、レイは僕を放し、僕達はふたりで、真っ赤になって、逃げるよう
に、銀行を出た。僕は、歩きながら、レイに話しかけた。

「まいったね。いつのまにか、全員が僕達のこと見てたよ」
「うふふ。そうね」

「うふふじゃないよ。半分はレイのせいなんだからね」
「わたしは、シンジが一緒なら、どんなことになっても平気だもの」

レイだって、真っ赤になって、黙り込んだくせに。シレッっとそんなことをい
う。ホントに、にくったらしい・・・・かわいい・・・僕の小悪魔だ。

「あ、ありがとう」
「どういたしまして・・・・さっきは、うまく逃げられちゃったけど、うちに
帰ったら、ちゃんと、いってね」

「な、なにを?」
「とぼけてもダメよ。約束してくれたじゃない、一日一回、言うって」

「違うよ。一日一回まで、っていったんだよ。最高で一回、言わない日もある
ってことだよ」
「そんなのダメ、一日一回、必ずいうこと。今、約束して!」

この瞳だ。僕はこの瞳に弱いんだ。強気の口調とはうらはらの悲しみの瞳。何
度、この瞳のために、余計なことを口走ってしまったことか。そして、いまも、
その瞳に負けてしまう。

「わ、わかったよ・・・・で、でも、いまは、ダメだよ。うちにかえってから
ね。ふたりっきりの時にいうから・・・・」
「うれしい!シンジ、だーい・・・・」

「ダ、ダメだったら、町中なんだから、抱きつかないでよ。恥ずかしいよ」
「つまんないのー。じゃあ、ふたりっきりになったらね」

レイは、僕に抱きつきかけて・・・・僕の言葉で、それを中断して、僕の腕を
つかみなおし、頭を腕にすりよせながら、そう、答えた。

うーん、ふたりっきりになるのが、恐い・・・・楽しみでもあるが・・・・恐
い。僕は、そんな状況で理性がたもてるだろうか?しかも、うちに帰れば、お
そらく・・・・きっと、今日もアスカは遅いだろうから・・・・ふたりっきり
だ。どうしよう?


    ◇  ◇  ◇


「「ただいまー」」

誰もいないはずのうちに、そういって、僕達は帰って来る。それは、もう、習
慣化された言葉だった。待ってる人に言っているのではない。僕達をまってい
る家に『ただいま』なのだ。でも、今日は返事があった。

「おかえり、シンジ、レイ」
「あれ?アスカ、今日は早いんだね」

今日は、なぜだか、アスカが僕達を出迎えてくれた。こんなに早く帰っている
のは、本当にめずらしい。月に一度くらいだ・・・・月に一度、そうか、今日
はアスカも、給料日だ。

「おかりなさい。レイ」
「ただいま、アスカ」

僕は、少し、ほっとした。とりあえず、これで、ふたりっきりにはならない。
レイは少し、不満そうに僕の顔を見たが、しょうがないわねというような顔つ
きで、アスカに、挨拶をした。

「ちょーっと、レイ。そんな、露骨に、嫌な顔しないでよ・・・・アタシだっ
て、たまには、早く帰って来たっていいでしょ?」
「そうね。でも、嫌じゃないわよ。もちろん、シンジとふたりっきりになれな
いから残念だけどね。ねー、シンジ」

「え、う、うん」
「あら?シンジもそうなの?あたしには、なんだか、ほっとしてるようにみえ
るけど」

アスカは、僕の方をみて、そう聞く。レイも僕の顔をのぞき込む。

「そうなの?シンジ」
「え、いや、そのー・・・」

「レイ!あんまり、苛めちゃーダメよ。今日あたり、理性のタガが、ぶっ飛び
そーで、恐かったのよねー?シンジ」
「ア、アスカ!苛めてるのはどっちだよー」

「アンタばかあ〜?ふ・た・り・で苛めてるんじゃない。そんなのもわかんな
いの?ねー、レイ」
「うふふ」

レイとアスカは、ニッコリと顔を見合わせる。ああ、僕はなんて、女運が悪い
んだ。はたから、みれば、こんな美女に囲まれて暮らしてるなんて、なんて、
うらやましいと思うに違いない。そんな人には、一度、代わって欲しいものだ。

「もう、いいよ。好きにしてれば・・・・僕なんか、どーなったっていいんだ」
「あら、そんなことはないわ。シンジが元気ないと、わたし、悲しいもの」

「あ、ありがとう。そういってくれるのはレイだけだよ」
「うん。元気だして、シンジ」

「そうよ。元気そうなシンジじゃないと、苛めがいがないじゃない。元気だし
なさいよ。バカシンジッ」

一応、ふたりして、僕を元気づけてくれる。こうして、僕は何とか持っている
のかもしれない。

「ところで、アスカ、なんで、こっちの部屋にいるの?まだ、夕ご飯にはだい
ぶ早いよ」
「そう、それよ!発表することがあるのよ。ちょっと、ふたりともついてきて」

そういうと、アスカは、歩きだした。僕達はアスカのあとについていった。そ
こは、父さんの部屋だった。壁に見慣れない真新しいドアがついている。

「こ、これ、もしかして」
「そうよ。あけると、アタシの部屋なの・・・・突然、開けないでよ。着替え
てるかもしれないんだから!」

「そ、そんなことはしないけど・・・・一体いつの間に・・・なんで、こんな」
「アンタばかあ?一体なんで、アタシが今日、こんなに早く帰ってきたと思っ
てんの?」

「じゃあ、今日、昼間に開けたの?これ。アスカが?」
「大工さんよ。そんなの決まってるじゃないの。アタシは立ち会ってたのよ。
で、場所的には、ここしかないのよ。なんとか、ローカでつなぎたかったんだ
けどね。まあ、所長はめったに帰ってこないんだし、いいわよね」

「って、いうか、もう作っちゃったんじゃ。どうしようもないじゃないか」
「まあ、そうだけどね。で、これが、鍵、一つ渡しておくわ」

「う、うん」
「さっきも、言ったけど、突然開けないでよ!」

「わかってるって」
「心配だわー、夜中、目をあけたら、シンジにのしかかられてたりして・・・・」

「ア、アスカ!」
「大丈夫よ。アスカ、シンジは、そんなことはしないわ。わたしにならするか
もしれないけど・・・・」

「レ、レイ!」
「あら、大した自信ね、レイ。そうなのよね、そっちの方が実は心配なのよ。
鍵つけなきゃダメね、レイの部屋も」

「あら!でも、鍵なんかかけないから、ネッ、シンジ」
「まるで、待ってるみたいね」

「まるで・・・・じゃないわ」
「レ、レイ!・・・・」

「まあ、アタシは、別にどうだっていいんだけどね。でも、その年で、子ども
育てるのって、大変よ。きっと。くれぐれも気をつけてね」
「わかってるわよ・・・・うふふ」

だめだ。早くとめなきゃ、話がどこまでも発展していってしまう。ほっとくと、
ふたりで、いつもこんな話をしているのだろうか?

「な、なに、いってるんだよ。アスカもレイも。僕達はまだ、高校生じゃない
か。まだ、早いよ。そんなの。もっと、健康的な、健全な話をしようよ」

「あら?この年代の健康的な・・・一般的な会話だと思うけど?」

本気で、アスカはそう考えているのだろうか?あるいは、この年代の女性とい
うのは、もしかすると、こんなことばかり話しているのだろうか?僕には、女
性は、どうもわからない。分からないことだらけだ。

アスカとレイは、このあともえんえん楽しそうにおしゃべりを続けた。僕は、
とてもついていけないけど、この場を離れるというのもなんだかためらわれた
ので、からかいの種になりながら、ふたりの話をうわのそらで聞いていた。

つづく

あとがき どうも、筆者です。 うーん、しかし・・・・これが、レイでしょうか? まあ、かわいい女の子には違いないとは思うんですが・・・・ こういうレイもかわいいとは思うんですが・・・・ で、今回の話ですが、 前半は、前回の続きで、後半にようやくお小遣いの話になって、 終盤は、アスカがでてきて、むちゃくちゃという感じです。 壁に穴開けてとなりの部屋とつなぐって・・・・どこかで聞いたような・・・・ ほんと、女の子はよく分かりません。 レイもころころ性格が変わります。 我々、男性にとって、女性は永遠に神秘の存在なのでしょう。 というところで、次回の話ですが、 そろそろ、碇ゲンドウ氏を登場させるべきかもしれませんが、 もう少し、このレイで、書き進めたいとも思いますし、 どうしようか、迷っています。 それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。

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