レイが好き!
第13話
電話


「シンジ・・・・」
「なに?・・・レイ」

長いキスのあと、僕達は、黙って、お互いを見つめていたが、不意にレイが口
を開いた。

「シンジ・・・今日は、いつもと違うわ」
「そ、そうかな?」

「うん、だって、いつもなら、みんなの前で、あんなにべたべたしたら嫌がる
のに・・・・今日はいいの?」
「・・・・そうだね。今日は、クリスマスイブだから・・・・なんだか・・・・
いいかな?って・・・」

「そう・・・・でも、わたしは、いつもの・・・・みんなに気をつかって・・・
誰にでも優しいシンジが好きだわ。今日のシンジは、なんだか・・・・」
「自分勝手?」

「ううん、そんなことは、ないわ・・・わたしも嬉しいもの・・・でも・・・」
「うん、レイのいいたいこと、分かるよ。そうだね。なんか、僕らしくないも
んね」

「ううん、シンジが変わっていくのは、当たり前だから・・・・一緒に成長し
ていくんだから・・・だから、どんな、シンジでも・・・・それが、シンジら
しいから・・・」
「いいんだよ、無理しなくても。そうだね。せっかく、みんなで、パーティー
なのにふたりで抜け出して来ちゃって、良くないよね。こういうの」

「そうね。ごめんなさい。わたしが誘ったから・・・・」
「そうじゃないよ。ふたりで・・・・その・・・・ふたりっきりになりたいと・・・
同時に思ったんだろ?・・・・いいよ。さあ、リビングにもどろ!」

「そうね」
「・・・・でも、なんだか、戻るの照れ臭いね。どんな顔してはいっていこう
か?」

「うふふっ、なんだか・・・・いつもの、シンジに戻ったみたい」
「レイは、困ってる僕がいいわけだ?」

「そうかもね・・・・さっ、とにかく、行きましょ!」

レイは、クスッっと、微笑むと、僕の腕を引っ張って、リビングへむかった。
僕は、レイにひきずられるように、ついていった。


    ◇  ◇  ◇


「あら?アンタたち、もう、戻って来ちゃったの?」

僕達が、リビングに戻ると、アスカが残念そうに話かけて来た。

「う、うん。ごめん、なんか、僕達だけ、勝手にいなくなっちゃって」
「ごめんなさい・・・」

「ざーんねんね。もう少しして、ふたりがベッドイン!ってあたりで、突入し
ようと思ってたのにね」
「ミ、ミサトさん!何、いってんですか!・・・その・・・ベッド・・イン・・・
だなんて・・・」

僕は、ちょっと、想像してしまって・・・顔が真っ赤になってしまった。レイ
も真っ赤になってる。しかし、このふたりなら・・・その・・・僕達が・・・
ベッド・・イン・・・なんて・・・ことは・・・とりあえず・・・ないけど・・
・・とにかく、このふたりなら、ホントに突入してきかねない。僕は寒気を感
じた。・・・なんて・・・悪趣味な・・・僕は、ちらっとケンスケを見た。

「お、俺は、別にそんな気はなかったからな!」
「あらー?ちゃんとカメラ用意してるじゃない?」

確かに、ケンスケは、首から愛用のカメラをぶら下げて、突撃体勢は万全とい
う様子だ・・・しかし、まさか、ケンスケまで・・・・

「こ、これは、ミサトさんが持たせたんじゃないか!お、俺は、そんな悪趣味
じゃないよ・・・その・・・愛しあう場面を・・・なんて・・・」
「・・・分かってるって、ケンスケはそんな奴じゃないよ」

ケンスケの後半の台詞には、少し照れてしまったが、ケンスケは本当にそんな
奴じゃない。悪いのは・・・・

「アスカ!ミサトさん!・・・」
「じょ、冗談に決まってるじゃない。いくらなんでも、しないわよ。そんなこ
と。ね、ミサト」

「そうかしら?アスカは、本気だったみたいだけど?」
「な、なにいうのよ。アタシが冗談でいったら、ミサトが、相田にカメラ持た
せたり、あと、10分たったら行こうとか、具体的に、指示しだしんたんじゃな
い」

「なによ。いいだしたのはアスカじゃない!」
「アタシは、冗談だったっていってるじゃないの!」

とにかく、そういう計画は具体的にあったわけだ。まったく、困ったものだ・・・
しかも、また、けんかをはじめてしまった。もう、勝手にやってれば・・・ど
うせ、すぐ、仲直りするくせに・・・僕が、傍観を決めると、レイが、しかた
ないわねという顔で仲裁にはいった。そっちは、レイにまかせて、僕はケンス
ケに謝った。

「ケンスケ、ごめんな。僕が悪いんだよな。僕達が自分勝手にいなくなちゃっ
たから」
「そうだぞ!この二人の相手をどうやって、俺にしろっていうんだよ!」

「すまん。ケンスケ」
「ホント、なんとか、俺が止めてたけど、今にも突撃しそうだったんだからな」

ありがとう、ケンスケ。しかし・・・・

「ケンスケもかわったな。昔なら、率先して、そういう計画のってたからな」
「まあな、ガキだったよ、俺も。月下の記者なんて、きどって、そんなことば
かりしてたからな・・・まあ、かなり、儲かったのも事実だけどさ」

「うん、僕もだいぶ、その恩恵にあずかってたしね」
「そうだな・・・・最近、俺、ビンボーで、困ってんだ。ちゃんと、芸術写真
をとると、金はかかるくせに、身入りはゼロだからな・・・・そういえば、こ
ないだの、割り勘はひどかった。チョコパフェ代かえせ!」

「そんな昔のこといわれても、もう、忘れたよ・・・まあ、埋め合わせに今度、
おごるから」
「きっとだぞ!コーヒー一杯なんてのじゃだめだからな」

「分かってるって・・・・レイ、けんか、収まったみたいだね」
「うん、大変だったわ。シンジ、知らん顔しちゃうんだもの」

レイは、なんとか、ふたりのけんかをとめて、僕の横に戻って来た。しかし、
ここで、見つめあってしまっては、もとの黙阿弥だ。

「そ、そうだ。ケンスケ、この間の写真持って来てくれたんだろ?僕にもみせ
てくれよ」
「ああ、いいよ、でも、シンジはほとんど写ってないぜ。俺は美しいものしか
撮らないからな」

「い、いいよ。僕だって、自分の写真よりも、レイの写真を・・・・アスカの
写真も見たいし」

「シンジ!いま、慌ててつけたしたでしょ?」
「シンちゃん?私の写真は、どうでもいいわけ?」

一斉に、二人の声が飛ぶ。

「ごめん」

確かに、その通りだったので、僕は素直にあやまった。確かに、今日の僕はち
ょっと、いつもと違って、おかしいのかも知れない。アスカもそれは、感じた
ようだった。

「あら?あっさりみとめるのね。めずらしい・・・もうちょっと、言い訳しな
さいよ。面白くもない」

「そ、そう?」
「もう、いいわよ。さっ、見なさい。言っとくけど、これは、アタシがもらっ
たんだからね。勝手にレイの写真、盗っちゃダメよ」

「わ、分かってるよ。ただ、どんな風か見てみたいだけだよ」
「わたしも、みていい?アスカ」

「いいわよ、どうぞ、レイ。気に入ったのあったらあげるわ」
「うん、ありがとう、アスカ」

ケンスケの写真は、さすがにいうだけあって、どれも、綺麗・・・というか、
印象的で、特に、レイの写真は、なんだか、どれも表情がちがって、その表情
の変化に、レイのこれまでの成長がいっぺんに捉えられているようで、感動的
なまでに、美しく感じられた。

玄関での、みんなを出迎えたレイは、緊張したように、無表情で、その瞳には、
不安が感じられ、それは、お茶をいれに立った時に、すこし、弱まり、みんな
にお茶を配ってるレイは、うっすらと微笑んでいる・・・・はじめて、レイが
笑った時のように・・・・そして、赤木博士の話がでた時のレイは、泣きだし
そうな悲しい瞳で、僕にしがみついている・・・ちなみに、この写真が、僕の
写ってる唯一の写真だ。

そのあと、乾杯して、ビールを飲むレイの表情が、連続写真のように、何枚も
あった。はじめてのものへのとまどいと好奇心。一口飲んで、味わった苦みと
アルコールによる高揚、ほんのり赤くなる頬。ただ、この辺で、ケンスケがミ
サトさんとアスカに取り抑えられたようで、ぶれたアスカとミサトさんのどア
ップがあって、いきなり、次は、ケーキを食べているレイだった。

ケーキを食べるレイは、かなり、ビールをのんで、あの時はそうは思わなかっ
たが、こうしてみると、顔は真っ赤だ。それに、すごく楽しそうにニコニコし
ている。幸せな笑みを浮かべて、ケーキを口にしている。そして、玄関でさよ
ならの挨拶をしている笑顔のレイで終わっていた。

「いいな、すごいよ。ケンスケ!なんか、感動しちゃったよ」
「そ、そうか!そうだろ!俺も、なんか、綾波のこの変化がさっ、なんか、気
に入っちゃっててさ。いいよな、なんか」

「う、うん・・・・レイは、どう思う?」

僕は、黙って、じっと、写真を見ているレイに感想を聞きたくて、レイの方を
向いた・・・・これは、そんなに不自然じゃないよね・・・・

「不思議な感じ・・・・わたし・・・これは、わたしだけど・・・・わたしじ
ゃないみたい」
「き、気にいらなかった?」

ケンスケは不安そうにきいた。僕には、レイの言うことがよく分かる。レイの
瞳には、そんな驚きが・・・純粋に、不思議がっているっているのがよくわか
った。なぜなのかも、僕には分かる。

「ううん。そんなことはないわ。ただ、不思議な感じ・・・」
「そうだね。レイはホントに変わったからね。だから、そう感じるんだよ。き
っと」

「そうね・・・・わたし・・・・こんな・・・だったのね」
「そう、ホントに、純真無垢だったよ」

「シンジは・・・昔のわたしのほうが・・・よかった?」
「僕は、いつでもレイが好きだよ。昔も今も・・・そんなの比べられないよ。
僕にとって、いつでも、レイはレイだもの・・・」

「ありがとう、シンジ・・・・嬉しい・・・」
「うん・・・・レイ・・・・今もホントに素敵だよ・・・・」

「シンジ・・・・」「レイ・・・・」

僕達は・・・やっぱり、見つめあってしまった・・・・・う、うっ、みんなの
視線が・・・・痛い。僕は、三人の鋼鉄で出来たような視線を感じて・・・・
レイから目を逸した。

「あの・・・ごめん」
「はあー、もう、いいよ。俺そろそろ帰ろうかなー?」

ケンスケは、呆れながら、時計を見てつぶやいた。

「そうね、私も、あんまり長居しちゃ、悪いしね」
「ちょ、ちょっと、アンタたち!アタシひとりで、どうしろってのよー!」

「アスカも帰ればいいじゃない。自分の部屋に」
「なんで、このアタシがシンジなんかに気使って、帰んなきゃなんないのよ!」

「じゃ、ふたりのおもり、してれば?」

そういうと、ミサトさんは、ケンスケをつれて、帰ってしまった。ちょうど、
電話がなったのは、その時だった。


    ◇  ◇  ◇


「はい・・・碇です」

電話に出たのは、レイだった。僕は、ミサトさんとケンスケを見送ってから、
リビングに戻ると、レイは、緊張しているのか、昔の無表情な顔で、電話に向
かって返事をしていた。ここからは、瞳の奥は覗けない。こんな時間に、いっ
たい、誰から何だろう?

「・・・・はい」

『            』
「・・・・はい」

レイは何回目かの『はい』のあとで、レイは、うつむいて、僕に表情を読まれ
ないようにして、受話器を僕に差し出した。

「誰?」
「・・・・」

レイが答えないので、僕は、とりあえず、受話器を受け取った。

「はい、もしもし、代わりました。どちら様・・・・」
『私だ』

「と、父さん!・・・・」

その声は、紛れもなく父さんの声だった。なぜ、父さんが今ごろ電話なんかか
けて来るんだろう?それに・・・レイとどんな会話をしたんだろう?僕は、父
さんに聞きたいことが沢山あるはずだ・・・・しかし、僕は、『父さん』とい
ったあと、口を開くことが出来なかった。父さんは、相変わらず、冷たい声で
つぶやくように続けた。

『どうだ、変わりはないか?』
「・・・うん」

父さんが僕に話かける時は、いつも、こんな声だった。仕事で、忙しくて、滅
多に話さないから、たまに喋ると、お互い照れてしまうのかも知れない。でも、
僕は父さんの考えてることは、分からないから・・・もしかしたら・・・いや、
でも・・・

『レイは元気か?ちゃんと、やってるか?』
「・・・うん」

レイの話になると、父さんの声が優しいトーンに変わった。そして、すまさそ
うな声に変わって、父さんは、こんなことをいった。

『・・・そうか・・・すまん』
「・・・うん」

僕には、何が『すまん』なのか、実は分からなかった。いつもいないことが?
それとも、クリスマスイブのなに帰れないことが?・・・それとも、レイを勝
手に引き取ったことに?・・・レイをたったひとりで社会に放りだしたことに?
・・・・それとも・・・レイを・・・作ってしまった・・・ことに・・・・そ
れでも、僕は『うん』としか、答えられなかった。

『レイを・・・頼むぞ』
「・・・・うん・・・・父さん」

『なんだ?』
「・・・うん、きっと、僕がレイを守ってみせるよ」

『そうか』
「う、うん。ぼ、僕は、レイを愛してる・・・・だから・・・・ありがとう」

『そうか』
「う、うん」

今度は、父さんが『そうか』としか、いわない。僕はいったい何に『ありがと
う』なのだろう?・・・父さんが電話してきてくれたことに?・・・父さんが
謝ってくれたことに?・・・『レイを頼む』といってくれたことに?・・・レ
イを引き取ってくれたことに?・・・・それとも・・・・レイを・・・・・

父さんは、いつもの静かな口調にもどって、今、ドイツにいて、正月も戻れな
いこと・・・しばらくは、日本には戻れないことをつげると、電話を切った。
僕も受話器をおいたが、しばらく、電話器をじっと見つめた。

それから、僕は、まわりを見た。アスカは、優しく微笑みながら、僕を見てい
る。レイは、僕のシャツの裾を握り締めて、うつむいている。

「レイ、どうしたの?」
「アンタばかあ?どうしたのじゃないわよ。自分がなにいったのか覚えてない
の?」

僕は、さっきの・・・僕が父さんに言った台詞を思い出して、真っ赤になって
しまった。まさか、僕が父さんにそんなことをいうなんて・・・レイは、頬を
ピンクにそめて、僕の顔をのぞき込んだ。

「ありがとう、シンジ。わたし・・・嬉しかった。シンジが、お父さんにあん
なこといってくれて・・・・」
「う、うん・・・でも、僕がレイを守りたいのは、ホントだから・・・今の僕
じゃダメかもしれないけど・・・愛してるから、レイを・・・・」

「ううん、そんなことはないわ。いつも、シンジの言葉がわたしを守ってくれ
るわ」
「レイ・・・・」「シンジ・・・・」

「ちょーっと、アンタたち、アタシもいるんですけど・・・・」
「ご、ごめん」

「まあ、シンジにしては、立派だったわよ。所長にあんなこと言えたなんて、
はじめてじゃない?」
「う、うん、そうだね。僕も・・・驚いてる」

「これで、アンタたちも、親公認ってことね・・・でも、いい?アンタたちは、
まだ高校生なのよ。レイは、赤ちゃんも同然なんだからね!節度をもって行動
しなさいね。わかった?」
「うん、アスカ、ありがとう・・・・」

親と言っても、僕の父さんひとりしかいない。アスカがお母さんのような、お
姉さんをやってくれてるんだ。そして、アスカも、こんな僕達を応援して、や
さしく、見守ってくれる。本当に、アスカ、ありがとう。

「ありがとう、アスカ。本当に・・・・」
「いいわよ。もう・・・照れるじゃない。アタシ、お風呂入るわ。沸いてるん
でしょうね!」

「う、うん。一応、セットしといたから・・・沸いてると思うけど・・・」
「そっ、じゃ、いいわ・・・・がんばってね」

そういうと、アスカは、意味ありげに、ウィンクを僕にして、リビングをあと
にした。すると、レイが静かに話かけて来た。

「シンジ・・・・」
「な、なに?」

「ここ、かたずけなくちゃね」

僕は、リビングの惨状を見渡した。確かに、その通りだ。しまった。さっきの
ウィンクはこれだったんだ。アスカめ!逃げんたんだ。そんな、僕の表情をよ
みとって、レイは続けた。

「うふふっ、アスカはそんなこと考えてなかったわよ。優しいもの」
「そ、そうかなあ?逃げたとしか思えないけど・・・・」

「アスカにかたずけさせる気なんて、なかったくせに」
「そ、そんなことは、ないよ。アスカもたまには・・・いつまでも、こんなん
じゃ・・・・・・・うん、そうかもね」

レイが、嘘つき!という目で僕をじっとみるので、僕もそれを認めて、クスッ
と笑った。ホント、僕はこの目に弱い。

「じゃあ、かたづけましょ!シンジ、食器運んで来て、わたし、洗うから」
「う、うん」

そういうと、レイは、手近の皿を何枚かもつと、台所の方へむかった。僕は、
床の上の食器を重ね、危なっかしく、流しまで、運んだ。何往復かして、とり
あえず、食器がなくなると、ゴミ袋をもって、空き缶の回収にかかった。それ
にしても、あいかわらず、一体、この大量のビールがどこへ消えてしまったん
だろう?女体の神秘だ。アスカや、ミサトさんの体型を思い浮かべながら、僕
の頭には、まえも浮かんだ、そんな疑問が沸いてきた。

「リビングは終わったよ。そっちはどう?」
「うん、もうちょっと」

「じゃあ、待ってるよ」
「あら?手伝ってくれないの?けちねぇ!」

「そうだよ。レイの食器洗ってる後ろ姿、みてるの楽しいもん」
「もう、ばかねえ!・・・エッチ・・・うふふ」

僕は、そんな会話をしながら、実は、レイの後ろで、お茶を準備していた。今
日は、ケーキをたべたから、紅茶かな?あのカップで・・・・

「終わったわ、シンジ。お待ちどうさま」
「うん」

レイも僕のそんな気配を当然、感じている。だから、食器を洗い終わって、振
り向くと、テーブルについた。テーブルの上には、ふたつのカップ。

「さあ、レイ、どっち、とる?」
「こっち!」

レイは、片方のカップをさっと、自分の前に引き寄せた。そうだろうな。とは、
思っていたんだけど・・・・

「でも、アスカがでてくるかもよ?」
「そしたら、さっと交換しましょ!」

まったく、なんて・・・・かわいいんだ、レイは・・・・

「レイ、さっき、緊張してたね。電話のとき」
「うん。だって、シンジのお父さんなんだもの・・・」

「あれ?あったことないの?研究所とかで・・・・」

言ってしまって、僕は、後悔した。レイは、昔のこと、触れられたくないはず
だ。そんな僕の心配を打ち消すかのように、レイは明るく答える。ホント、レ
イも強くなった。

「ううん。はじめてよ。ちっちゃい時にあってるかもしれないけど、最近は、
時々、電話から洩れる声を聞くだけだったわ。いっつも、赤木博士とけんかし
てたのよ。わたしのことで」
「そ、そうなんだ・・・で、どうだった?何、話したの?今日は」

「うん、優しい・・・シンジと同じように・・・優しい声だったわ。学校には
慣れたかって、シンジが優しくしてくれるかって・・・」
「そ、そう・・・・僕も、今日は、父さんの優しい声が聞けて、嬉しかったん
だ。あんな声、滅多にきけないもの・・・なぜ、父さんは、レイのことになる
と、あんなに優しい声になるんだろう?」

「さあ?・・・・でも、きっと、シンジと一緒よ」
「え?・・・・それって・・・・」

父さんもレイを愛してるってこと?

「やさしいのよ、きっと。シンジには・・・本当の息子には照れ臭いのよ」
「そ、そうかもね」

そういう意味か。僕は、ちょっとほっとする。でも、父さんもきっと、レイを
愛してると思う。僕とは別な意味で・・・だって、父さんの声は本当に、優し
かったから・・・

「大丈夫よ。シンジ、わたしは誰から愛されても、わたしが愛してるのは、シ
ンジだけよ」
「ありがとう、レイ」

「うふふ。どういたしまして、さっ、お茶、冷めちゃうんじゃないの?」
「そ、そうだね」

僕達は、お互いに顔を見合わせて、クスッと微笑むと、お茶を一口飲んだ。

「あらー?アンタたち、それ、わざとやってんの?」
「ア、アスカ!」

アスカは、音もなく、パジャマ姿で僕の背後に現れた。僕達が、普段とは、逆
のカップをつかって、お茶をのんでるのを目ざとく見つけて、そんなことをい
ってきた。

「アンタは『レイのもの』で、レイは『シンジのもの』な訳ね・・・」
「そ、そんな、ちょっと、間違えただけだよ・・・・ねっ、レイ。そうだよね」

「うふふっ」

つづく

あとがき どうも、筆者です。 やっぱり、みんな、明るく楽しい一家ってのがいいですね。 みんなが他を思いやって・・・・ ゲンドウ氏も、いいお父さんですよ。やっぱり。 ただ、愛情表現が苦手なだけで・・・・照れ屋なんですよ。 シンジも、高校生なんだから、それぐらい、理解しているし・・・・ と、いうわけで、予告通り、電話かけさせました。 『嗚呼アスカ様』第壱話を書いたあと、だいぶ落ち込んだんですが、 アスカ様のなぐさめもあって(?)、元気にらぶらぶを書きました。 タイトルは『電話』です。(・・・なかなか、かかって来ませんでしたが・・・) 前回が『雪』だったので、雨冠が重なっちゃって、いまいちですが、 まあ、こんなもんでしょう。(そのうち、突然かわるかも・・・) で、話の方ですが、 きっちり、この間のつづきから始まってます。 やっぱり、クリスマスで、どうかしてたんですね。 シンジがあんなわけないですもん。 で、気をとりなおして、リビングに戻って、 ちゃんと(?)、みんなに冷やかされて・・・・ いやー、ケンスケいいやつですね(アスカ様とくっつけちゃおうかな?・・・って) で、『月下の記者』ってなんのパクリだかわかります? 『月下の棋士』じゃないですよ ・・・ヒント『耳エヴァ』(メールの返事、本当にありがとうございます) そういえば、先日、はじめてのファンレター(?)メールをもらいました。 とっても、嬉しかったです。おもわず、仕事場から返事をだしてしまったり・・・ ほんと、単なる URL の問い合わせのメールだったんだけど、 つづきを読みたいって、書いててくれたし、 嬉しかったです。ホントに読んで下さってる人がいるんだって。 アクセスカウンタなんて、表紙だけ見ても増えますからね。 あの、すいません。脱線してますね。・・・とにかく、ありがとうございます。 で、みんなを帰して、ようやく、電話です。 ホントは、もっと、レイの秘密を喋って欲しかったんですけど・・・ まあ、今回は、このくらいでいいでしょう。 しかし、当分、帰って来ないみたいですね。なんて親だ、まったく・・・ で、最後は、ちゃんと、アスカ様にちゃちゃいれさせて・・・(って・・・) ほんと、『うふふ』じゃないっての! かわいくて一途で、ちょっと悪戯で、小憎らしい・・レイ、 元気で明るく、そして、優しい・・お姉さんのような・・アスカ、 そんなふたりに囲まれて、幸せに、そして、男らしく成長していく・・シンジ。 そんな、三人をこれからも書いていきたいです。 たまには、増刊号なんかで、違った三人を書きますが、 とにかく、『レイが好き!』は、この路線ですすみます。 これからも、応援よろしくお願い致します。 そして、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。

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