レイが好き!
第14話
お散歩


冬の晴れた日、僕は、こんな日が好きだ。

もともと、どちらかといえば、暑いより寒い方が好きだし、それに、冬は、空
気が澄んでいて、そして、空が・・・・空の青さが・・・・どこまでも続いて
るような気がして・・・・僕は、そんな空が好きだから・・・冬のこんな日は、
とっても好きなんだ。

「今日は、とってもいい天気だね。レイ」

僕は、レイを誘って散歩に出ていた。のどかな河川敷の枯れ草の小路を歩きな
がら、僕は、レイに話かけた。レイも、北風を爽やかにその小さいからだに受
けながら、・・・・ほんのすこし、寒そうに・・・・でも、気持ち良さそうに
僕の腕を掴んで、僕のとなりを歩いている。

「ごめんね、散歩なんて誘っちゃって・・・・寒い?」
「ううん・・・・ちょっぴり・・・・でも、こうすれば・・・平気」

レイは、僕の腕に身をすりよせて、嬉しそうに、僕の顔を見ながら答えた。そ
うだね。僕も、とても暖かいから・・・・レイの暖かさが伝わってくるから・・・・

レイとふたりっきりになるのは、どれくらいだろう?いや、確かに、ずっと、
ふたりでいる。でも・・・こうして、レイとふたりなのは・・・なんだか、久
しぶりなような気がする。なにもせず、ふたりっきりなのは、本当に久しぶり・・・・

「レイ、冬、好き?」
「・・・・そうね、好きだわ」

「どうして?」
「そうね・・・・うふふ・・・・あててみて!」

レイは、悪戯そうな瞳で、僕をみつめながら、そんなことを言う。ホントに、
それくらい・・・・レイの考えてることぐらい・・・・僕に分からないと思っ
てるんだろうか?・・・・いや、分かってるんだな!ホント、レイは・・・・
なんて・・・・

「さーて、どうしてかな?僕には、分かんないや」
「もう、シンジの意地悪!」

「ハハハハ・・・それは、お互い様だよ」
「もう!・・・知らない」

ホント、レイってなんて・・・・可愛いんだ・・・・レイは、僕の腕を放して、
僕のすこし前を歩く。空いろの髪が揺れて、僕が買ってあげた空色のスカート
が北風になびく。アスカにもらったブルージーンズのジャンパーを着てるから、
今日のレイは、全身、空色・・・・澄みきった、今日の空のような・・・・

「シンジ!わたしのこと、みてるでしょ?」
「う、うん」

レイは、突然、振り返ってそんなことを聞いた。そう、僕はずっと、レイを見
ていた。振り返ったレイは、いつもの悪戯な瞳で・・・・それだけが、空とは
違う・・・・僕に話かける。

「いーっつも、みてる」
「う、うん」

「ダメよ!そんなんじゃあ。もっと、まわりを見て、そして、強くなってくれ
なくちゃ!ネ、シンジ」
「う、うん」

その通りだ。僕は、もっと強くなって・・・・そして・・・・レイを守らなく
っちゃ。レイを見つめて、そして、自分の心の中に閉じ籠ってしまうのは、僕
の悪い癖だ。

「もう。下向くんじゃなくて、まわりを見るのよ」
「う、うん」

僕は、顔をあげた。でも、まわりは見ずに、レイの顔を見たのだった。

「だめね。シンジ」
「うん」

「いいわ。シンジはわたしがまもるもの。だから、シンジは、ずっとわたしを
見ていて」
「ダ、ダメだよ。そんなんじゃ!僕は・・・・」

それじゃダメなんだ。僕は・・・僕は、レイを守るんだから・・・・レイを守
れるような、しっかりとした男になるんだから・・・・だから・・・・これじ
ゃダメなんだ・・・・分かってるんだから・・・・だけど・・・・

レイは、そっと僕の腕に両手をからめて、優しい瞳で僕を見つめてくれる。あ
りがとう・・・・こんな僕で・・・・ホントに、ありがとう。でも、僕は・・・・
強くならなくちゃ・・・・本当に・・・・

「ううん。嬉しいの・・・・その方が・・・・ホントは」
「で、でも・・・・」

「あら?そんなにわたしを見つめるのが嫌なの?」
「・・・・」

「嫌なのね!」
「そ、そんなことあるわけないじゃないか!」

「でしょ?じゃ、ほら、笑って・・・いつものように、優しく」
「うん」

本当にありがとう、レイ。本当に僕はレイに守られてるんだと思う。僕はレイ
に守られるに値する男なんだろうか?でも、僕は、レイが好きだから・・・・
せめて、これ以上、レイに心配かけちゃいけないんだ。ホントは、僕がレイを
守らなくちゃいけないんだから・・・・

「うん、ありがとう、レイ。これからも、よろしくね」
「そうよ。それが、わたしの生きがいなんだからね。シンジがわたしを必要と
しなくなったら、わたし、生きていけないもの」

「そ、そんなこと・・・・おかしいよ、そんなの!」
「あら?どうして?ホントにそうなのよ、わたし」

真っ赤な瞳をキラキラさせながら、レイは、こんなことをいってくれる。でも、
それじゃあ、ダメなんだよ・・・・レイ・・・・ホントはね。でも・・・・ホ
ント、なんて、優しいんだ。フフフ・・・凄いよ、レイは。

「ありがと、じゃあ、これからも、一杯心配かけるね」
「わたしこそ、ありがと・・・・うふふ」

「いえいえ、どういたしまして」
「もう!すぐ、調子にのるんだから!」

「ハハハ・・・・レイもだよ」
「うふふ・・・・そうかもね」

僕達は、馬鹿みたいに、ふたりして、笑いながら腕を組んであるいた。他人に
は、どう見えるだろうか?きっと、呆れるに違いない。でも、こういう馬鹿み
たいなのも・・・・いいな・・・僕はそう思う。


    ◇  ◇  ◇


「レイ、見てごらん!」

「・・・・きれい・・・・」

僕達のゆく手に、開けた原っぱが広がった。夏なら緑が美しいであろうその草
原が今は、荒涼と冬の太陽のもとで、黄金に染まっていた。

「ホント、綺麗だね・・・・金色だなんて、不思議・・・・」

「わたし、見てくる!」

レイは、僕の腕を放して、駆け出していった。僕は、まだ、黄金の草原を感激
しながら見つめていた。レイが僕の視野に入ってくる。

『なんて、綺麗なんだ・・・・レイ・・・・』

『青き衣をまとった天使・・・・光輝く金色の大地へ降りたった天使・・・』

レイは、金色の草原を風に揺られながら歩く・・・・両手をひろげ・・・・ま
るで、天使のように・・・・青き衣の天使のように・・・・・

僕が、ぼーっと、みとれていると、レイは、僕の方をみて、手を振った。スカ
ートが風に揺れる。

「もう、シンジ、遅い!」
「ごめん、なんだか、あんまり綺麗で、ずっと、向うから見ていたくて」

「わたしから離れちゃだめじゃないの。わたしを守るんでしょ?」
「う、うん。ごめん・・・・でも、近くから見ても・・・綺麗だね」

「そう、太陽の光が反射して、それで、金色なのね」
「うん・・・・でも、僕がいったのは、そのことじゃないんだけどね」

僕が綺麗だといったのは・・・・その金色の野に降りたった・・・・青い服の
天使・・・・のことだったんだけどな・・・・レイは、不思議そうに僕を見る。

「ううん、いいよ。わかんないなら・・・・」
「なんなの?シンジ、意地悪」

「ううん、ほんとうに、なんでもないから」
「そう?・・・・でも、本当に、近くで見ても綺麗よ」

「そうだね」

僕の視線は、まだ、レイだった。レイも、なにか気づいたかも知れない。でも、
レイは、本当に、この光景に感動しているようで・・・・また、草原のなかへ
歩きだした。

レイは、ずっと、研究室の中で育った。だから、こんな、なんでもない・・・・
ううん、決してなんでもなくはないけど・・・・自然な景色が・・・信じられな
いくらい・・・感動なんだ。わかるよ・・・・すごく。でも、僕の感動は、やっ
ぱり、レイを通したものかも知れないけど・・・

レイは、黄金の草原をすこし歩くと、倒れるように、草原にうつぶせになって、
じっとしている。僕は、そんなレイの方に歩いていった。

「レイ・・・・泣いてるの?」

レイは、草原にうつぶせになって、涙を流している。レイの涙が大地に吸い込ま
れていく。それは・・・・とても、綺麗で・・・・

レイは、そのまま、顔だけ僕の方をむいて、小さくつぶやく。

「うん・・・うれしいの」

なにが?・・・僕は、そう思ったが、なんとなく、レイの気持ちが分かるような
気がして。なにもいわず、レイのとなりに座って、そんなレイをずっと見ていた。
僕も・・・・うれしいから・・・・何が、なのか分からないけど・・・・

僕は、ずっと、レイを見ていた。


    ◇  ◇  ◇


「シンジ・・・・寒い」

レイが、小さくつぶやくまで、僕達は、その草原でじっとしてた。そうだね。
もう、帰らないと・・・・

「うん・・・・もう、戻らないとね、アスカがまってる」
「帰りたくない・・・・わたし」

「ダメだよ。そんなんじゃ・・・・それに、風邪引くよ」
「ううん、ホントは帰らなきゃって、思ってる・・・でも・・・そうね、また、
来ましょ!約束よ!」

「うん。また来ようね。いつでも、レイが来たくなった時に、僕はいつでも、
レイについてくるから」
「うん、じゃ、帰りましょ!」

レイは、にっこりと、涙を拭きながら元気に立ち上がると、僕の腕を引っ張っ
て歩きだした。ほんとにまあ、なんて、変わり身の早い。

「シンジ!わたしが寒いっていったんだから、優しく抱いてくれなきゃ、ダメ
でしょ?なんで、そこで、アスカが出てくるのよ!」
「え?ああ」

「え?ああ、じゃないわ。ホントに、わたしを守る気あるの?シンジ」
「それ、ホントに知りたい?」

僕も、大分いじわるになったかもしれない。でも、そこで、暗くなってしまっ
てはいけないと思うから、僕としては、精一杯の意地悪のつもりなんだけど・・・・
まあ、レイも分かってくれると思うけど。

「知りたいようでいて、知りたくないってのが、乙女心ってものなのよ」
「お、乙女心って・・・・」

だめだ。レイにはやっぱりかなわない。しかし、どこで、いったいそんな・・・・
それに、この感じ・・・・まるで、アスカ・・・・

「シンジ、約束おぼえてる?」
「うん、だから、また来るって・・・・」

「それじゃなくて、もっと、前の・・・・一日一回って」
「う、うん」

「じゃ、いって」
「だから、そんなの、いってなんていわれて言うもんじゃないって、教えたじ
ゃないか」

だから、その代わりに見つめるんだって・・・・僕は、レイの悪戯な瞳を見つ
めながらそう答えた。レイもそんなことは・・・・そのつもりで、僕が見つめ
てるんだということは・・・・百も承知なのに・・・・納得してくれない。い
や、僕を苛めてるんだ。

「ダメよ。誤魔化されないわ。今日は」
「なにが?」

「いつもいつも、見つめて誤魔化すなんて、卑怯だわ」
「それでいいっていったじゃない。あの時」

「そうだったかしら?」
「そうだよ。何もいわなくてもわかりあえるって・・・それがいいって。それに、
レイは、ホントに強いから、そんなのいちいち確認しなくたって、大丈夫だろ?」

「だめなの・・・わたし、甘えんぼだから・・・だから、いってほしいの・・・
ダメ?」

わっ、わっ、なんだ、突然。今度は、甘えんぼモードなの?それに、この目は
だめなんだって・・・僕は・・・・

「ダメじゃ・・・・ない」

な、なんて、僕は・・・・ホント・・・・弱すぎるよ。もっと強くなりたいの
に。でも・・・・レイもホントは不安なのかな?そうだね。たまには・・・・
ホントにいつも、僕が守ってもらってるから・・・・たまには、僕が・・・・

「あー、もう、じれったいわね。さっさといいなさいよ!」
「だめよ、アスカ。もうちょっと、黙っててくれないと。ほら、シンジ、言え
なくなっちゃったじゃない」

あれ?いつの間に、アスカが?そういえば・・・うちの玄関だ。レイは・・・
レイは・・・?僕は、ついに気づいた。

「ひ、ひどいよ!レイ。アスカがずっと見てたの、知ってたんだね?」
「なに言ってんのよ。ひどいのは、アンタでしょ?かわいそうに。ね、レイ」

「そうなの。わたしって・・・・かわいそう・・・・」

ひどいよ。ホントに、レイって・・・・なんて・・・・

「ごめんね、シンジ・・・・うふふ」

なんて・・・・かわいい・・・・残酷な天使・・・・青き衣の・・・・

つづく

あとがき どうも、筆者です。 ほんと、内容ありません。 でも、いいのです。 レイが幸せなんだから・・・・ 筆者は、それで、幸せなんです。 ちゃんと、アスカ様にもちゃちゃを入れさせたし・・・・ で、もちろん、お気づきでしょうが・・・・ 『その者青き衣(ころも)をまといて金色(こんじき)の野におりたつべし』 なのです。 しかも、『泣いてるの?』『うん・・・嬉しいの』 なのです。 単に、それが、やりたかっただけなのです。 (なんのことか分からない人は、筆者にメールでお問い合わせ下さい。 丁寧に、解説して差し上げます。) で、結構、苦労したんです。 冬に金色の野ってのもね・・・あれって、ホントは、小麦畑なんですよね。 でも、それって、たぶん、秋だよね。菜の花ばたけは、春だしね・・・・ 空色の髪はいいとして・・・スカートは偶然、前に、空色のを買ったし、 (これは、おお!いいぞ!と思ってしまいました。) 上着は、アスカのお下がりのジージャンなんです。ちょっと寒そうだけど・・・ やっぱ、無理あるかなあ・・・・? いいのです。 次から、ちゃんとやるから、たまにはこういうのも・・・(ごめん、開きなおりだ) それに、いい雰囲気だったでしょ? なんだか、意味深で・・・・ いろいろ、今、レイが、あるいは、シンジがなに思ってるのかってのは、 それなりに、考えながら書いたんですよ。ホントに。 でも、アレです。全部、説明してしまうと、つまんないんですよ。 その辺は、筆者の文章力のなさだと思うんですけど、 今回は、なんだか分かんないけど、いい雰囲気ってので、やってみました。 (ホント、あらためて読み返すと、わけ分かんないですよ) (だから・・・何が嬉しいねん!何が!・・・) とにかく、ふたりの会話を書くのが単純に楽しいんです。 それだけなわけです。 で、本当は、時期的には、トウジのお誕生日なんですけど、 それやりだすと、また、パーティーになっちゃうし・・・・ クリスマスと兼ねればよかったんだけど、 あの時は、まったく、気づいてなかったし・・・・(って・・・) まあ、ヒカリちゃんと仲良く二人で、過ごしてるんでしょう。 と、いうわけで、誕生日特集はやりません。 それに、それやると、話的には、レイの誕生日って奴をなんとかしないと だめでしょ?なんとなく、そうなりますよねぇ。 で、こんなところで、それやりだすと、あとで、矛盾が一杯出て来そうなんで、 だって、はっきりしてるはずじゃないですか、その日付は。 だから、今は、まだ、決めたくないんです。 僕が思うに、シンジの誕生日付近、つまり、6月頃かな?というところなんですが、 ユイさんの動きに無理がありそうで、いろいろ考えてますが、結論は出てません。 ところで、一般に、レイの誕生日っていつってことになってるんだろう? その・・・アニメ版とか、いろんなところとかで・・・ あと、ユイさんの命日もできれば、知りたいんですけど・・・ 誰か知りませんか? 筆者のデータベースでは、(主に、「会員制 EVA ルーム」 より) アスカ asuka 2001/12/04 シンジ shinji 2001/06/06 トウジ touji 2001/12/26 カオル kaoru 2000/09/13 ゲンドウgendou 1967/04/29 冬月 kouzou 04/09 リツコ ritsuko1985/11/21 ミサト misato 1985/12/08 加持 kaji 1985/06/17 マヤ maya 1991/07/11 日向 makoto 02/13 青葉 sigeru 05/05 ケンスケkensuke2001/09/12 ヒカリ hikari 2002/02/18 っていう感じになってるんですが、どうなんでしょうか? もちろん、生まれた年は、ぼかして書きますけど・・・・ だって、現代の話なんだから・・・・筆者がミサトさんより歳上だなんて・・・! いや、下手すれば、ゲンドウ氏よりも・・・・(嘘です) すいません。ぜんぜん、あとがきじゃないですね。それに、なんて長いんだ。 とにかく、次は、ちゃんと書きます。だから・・・・見捨てないで・・・・ それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 ホントに、ちゃんと、書きますから・・・・ また、次回、お会いしましょう。

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