レイが好き!
第15話
生きる


「残念やな、シンジ」
「う、うん・・・・でも、ほっとけないから」

「いいんだよ、コイツは・・・・幸せそうな顔しやがって・・・まったく」
「そ、そんなことないよ・・・・そんな、幸せだなんて・・・・不謹慎だよ」

「ほら、アンタたち!いつまでやってるのよ。電車、遅れるわよ」

「そうね。じゃあ、碇君。レイによろしくね」
「う、うん。ありがとう、洞木さん」

「ほらほら、早く!・・じゃ、シンジ、あと、まかせたからね」
「う、うん」

「いい?アタシがいないからって、決して、欲情の波に押し流されちゃダメよ」
「な、なにいってんだよ。アスカ!」

「レイを押し倒しちゃダメよ、ってこと」
「ア、アスカ!」

アスカは、最後にそういって、ウィンクをひとつして、みんなと出かけていっ
た。


    ◇  ◇  ◇


「アスカ。やっぱり、アスカは、スキー行きなよ」
「なんでよ?レイをほっといて、アタシだけいくなんて・・・・」

「うん、アスカの気持ちも嬉しいけど、でも、あんなに楽しみにしてたじゃな
い。それに、僕と違って、アスカは仕事、あるから、そんなに休めないだろ」
「まあ、そうだけどさ。シンジは、それで、いいの?」

「うん、まあ、僕はそんなにスキー得意じゃないし・・・」
「それに、レイがいないと、か」

「う、うん」
「しょうがないわね。シンジがそこまで言うなら、ふたりっきりにしてあげる
わ」

「ア、アスカ。ぼ、僕は、そんなつもりでいったんじゃなくて・・・ただ・・・」
「分かってるわよ。ありがと、シンジ・・・・じゃ、電話しなくちゃ!」

そういうと、アスカは、ウキウキと携帯を取り出して、洞木さんに電話をかけ
た。やっぱり、アスカは楽しみにしてたんだ。普段、仕事が忙しくて、ストレ
スがたまってるみたいだから、長期の休みぐらい、どこかいって、思いっきり
発散して来て欲しいなと、僕は思ったんだ。

「あ、ヒカリー?うん、シンジがさー、アタシだけでも、スキー行けって言う
のよ」

「うん、なーんか、レイとふたりっきりになりたいんだってさー」

でも・・・・ふたりっきり・・・・そんなつもり・・・・あったかもしれない。
アスカにそういわれるまでは、そんなに意識してなかったのに・・・・でも、
そうかもしれない。アスカは、僕に気を使って、わざとウキウキを装ってるの
かもしれない。優しいから・・・

「違うよ。僕は、アスカのことを思って・・・・」
「うっさいわね。アタシはヒカリと・・・・う、うん。なんでもない。シンジ
がうるさいのよ・・・うん、じゃあ、明日、迎えに来てね」

そういうと、アスカは電話を切った。

「じゃあ、明日、はやいから、もう寝るわ」
「うん」

「ちゃんと、起こすのよ!バカシンジッ」
「う、うん・・・・ありがと、アスカ」

「シンジこそね」

そういうと、アスカは、自分の部屋に戻っていった。僕は、アスカの後ろ姿を
黙って見送った。


    ◇  ◇  ◇


みんなを見送ると、僕はコップに水を一杯もって、レイの部屋に向かった。レ
イは、まだ、熱っぽい顔で寝ている。僕は、コップを机に置いて、レイを見つ
めた。頬がほんのり赤い。僕は、レイのおでこに手をやる。

『まだ、熱があるみたいだ・・・』

レイは、静かに目を開けて、僕の方を向いた。

「ごめん、起こしちゃったね」

レイは、それには答えず、苦しそうに僕を見つめて、かすれた声でつぶやく。

「・・・・シンジ・・・・わたし・・・・死ぬの?」
「ばかだなあ。死ぬわけないじゃないか。ただの風邪だよ」

「・・・・そう・・・・わたし・・・・でも・・・・苦しい」
「そりゃあ、風邪だもん。苦しいさ。でも、大丈夫だよ。風邪なんて、薬飲ん
で寝てれば、必ず、なおるから。ネッ、安心して」

レイは、きっと風邪をひくのが初めてなのかも知れない。もしかすると、研究
室は無菌状態だったのかもしれない。うん、不安なんだよね・・・・レイ。

「・・・・うん・・・・ありがと・・・・シンジ」
「うん、じゃあ、これ飲んで。水、持って来たから」

「・・・・うん」

レイは、ゆっくりと上体を起こすと、僕から薬と水をうけとって、飲んだ。昨
日は、嫌だといって飲んでくれなかったけど・・・・たぶん、レイの食事がわ
りだった栄養剤が連想されるから・・・・僕も、それが分かるから、強くは言
えなかった・・・・でも、やっぱり、苦しいんだろう・・・・今朝は、素直に
薬を飲んでくれる。

薬を飲み終わると、コップを僕に返して、レイは、再び横になった。そして、
僕を見つめる。僕もレイに優しい視線を返す。

「・・・・シンジ・・・・ごめんね」
「いいんだよ。病気の時は、お互い様だよ」

「でも・・・・」

レイの真紅の瞳から一筋の涙がこぼれる。なんで?・・・泣くの?こんなに弱
気のレイ・・・・

「ばかだなあ。泣かなくったっていいんだよ。なんで、泣くのさ?おかしいよ。
そんなの」
「・・・・うん」

「さっ、少し、寝た方がいいよ。僕がおいしいおかゆを用意してあげるから」
「ううん、食べたくない・・・・だから・・・・ここにいて」

「しょうがないなあ、ホントに甘えんぼなんだから」
「うん・・・・だから」

「わかったよ。ずっと、ついていてあげるから・・・・だから、安心して」
「・・・・うん」

僕は、レイのベッドの脇に座って、レイを見守る。寝つくまで、いてあげる。
だから、早く、元気になってね。

「さっ、目を閉じて」

レイは、少し、安心したように目を閉じて、しばらくすると、薬が効いてきた
のか、小さな寝息をたてはじめた。こころなしか、頬の赤みもひいてきたよう
にみえる。僕は、レイの頬に軽く口づけをしたあと、レイの部屋を離れた。


    ◇  ◇  ◇


僕は、台所に行き、レイのためのおかゆを作る。すこし、塩味を効かせて、食
べやすいように。

まだ、目を覚ましていないだろうから、鍋を磁気保温器にのせて、レイの部屋
へ戻る。磁気保温器のコードをコンセントに差し込む。これで、いつ、レイが
目を覚ましても大丈夫。僕は、再び、レイのとなりに座って、レイを見つめる。

うん、さっきより、ずっと顔色がいい。熱も、もう下がったみたいだ。よかっ
た。あとは、ゆっくり、休んでれば、きっとよくなる。

安らかな寝顔・・・・ホントに綺麗な・・・・

僕は・・・・こんなこというと、不謹慎なんだけど・・・・ホントは、幸せな
のかもしれない。レイは、僕の言葉で、安心して、安らかに眠ってくれた。あ
んなに不安な表情だったのに、僕が安心させることができた。こんな僕でも・・・・
こんな時なら・・・・レイを守ることが出来る。僕はいつでもレイを守れるよ
うな、強い男になってみせるからね。

僕は、レイを起こさないように、じっとレイを見つめる。まるで、時のながれ
が止まったように、動くもののない空間。

その静寂は、レイのまぶたの動きでやぶられた。

「おはよ、レイ。すこし楽になった?」
「・・・・うん・・・・シンジ、ありがとう・・・・うふふ」

レイは、やはり、少し良くなったようで、僕に答えると、クスクス笑いだした。
ホントによかった。普段のレイに戻ったみたいだ。

「なにがおかしいの?」
「だって、おはようなんて・・・・もう、お昼なのに」

「そうだね・・・・じゃあ、こんにちわ、レイ」
「うふふ・・・こんにちわ、シンジ」

「フフフ・・・レイ、お昼ご飯、用意してあるよ、食べる?」
「うん、お腹すいちゃったもの・・・・でも、シンジ、わたしが寝てる間につ
くったのね」

「うん、そうだけど?」
「嘘つきね、シンジ」

「なにが?」
「だって、ずっと、わたしについていてくれるって言ったじゃない。それなの
に、わたしを放っておいて、料理するなんて、シンジは、わたしより料理の方
が大事なのね!」

「な、なに、ばかなこといってんだよ。そんなだだっ子みたいなこといって」
「ダメ、許してあげない。シンジはわたしに嘘をついたのよ」

「うん、そうかもしれない。ごめん」
「悪いと思うの?」

「うん、レイが安心して寝てたのは、僕が側にいると思ったからなのに、僕は、
レイを裏切ってしまったからね」
「嘘つき!」

「ホントにそう思ってるよ」
「いいわ。じゃあ、償いに、それ、シンジがわたしに食べさせて」

なるほど、そういうことだったのか。突然、こんなことをいいだすなんて、な
んかおかしいと思ったんだ。レイのころころと変わる瞳が悪戯にキラキラと光
ってる。ホント、レイって・・・・・

「どうしたの?・・・・ダメ?」
「ううん、じゃあ、アーン」

なんて、可愛いんだ。そんなことしなくたって、僕はいつだって、食べさせて
あげるのに。僕は、器から匙で、おかゆをひとすくいすると、フーフーと吹い
て、冷まして、舌で温度を確認してから、レイの口に持って行く。

「どう?熱くなかった?」
「うん、ちょっと」

「そ、そう?ごめん」
「うん、だから、次は・・・・口移しね」

「え?・・・・」

口移し・・・・なんてことをいうんだ、レイは・・・・僕の顔はいま、真っ赤
になってるに違いない。でも・・・・こんな可愛いレイに・・・・口移しでな
んて食べさせてあげることができるなら・・・・僕は・・・・僕は・・・・

「うふふ・・・・冗談よ、シンジ・・・・ありがと、わたしにつきあってくれ
て。あとは、自分で食べるわ」
「う、うん・・・・でも、一回ぐらい・・・・やってみたいな」

「え?」
「その・・・・口移し・・・・」

レイは、赤くなって僕を見つめる。僕も真っ赤になりながら・・・・おかゆを
口に含み・・・・まるで、小鳥のようなレイに・・・・

レイは、僕の口からおかゆを流し込まれると、それを長い間、口の中で転がし、
そして、ゆっくりと飲み込んだ。

「・・・・シンジの・・・味が・・・する・・・・」

レイのそんなつぶやきに僕の顔はさらに熱くなっていった。レイの風邪がうつ
ったのかもしれない。

「ごめんね、シンジ」
「そ、そんな、謝ることはなにもないよ。僕がしてあげたかったんだから・・・」

「ううん・・・・ありがと、シンジ・・・・でも、もういいわ」
「う、うん」

「わたし、また熱でちゃったみたい。なんだかとても熱いもの・・・・頭もぼ
ーっとしてるし」
「うん、僕もだよ。レイの風邪が移っちゃったかもね」

「・・・・ホント?」

僕の言葉を間に受けて、レイは、心配そうに僕をのぞき込んでくれる。僕は、
クスッと微笑みながら答える。

「嘘だよ」
「もう、意地悪・・・・本当に心配しちゃったじゃない。シンジがこんな苦し
い思いするなんて・・・・考えたら・・・・わたし」

「ごめんね。レイがホントになんだか、元気になったような気がしたら、つい、
うれしくて・・・・まだ、治ってないのにね、ごめん」
「ううん・・・・シンジにわたしの風邪が移るなら、それもいいかなって・・・・
少し・・・・思っちゃった。悪い子ね、わたし」

「じゃ、おあいこだね」
「うふふ・・・・じゃ、また、食べさせて・・・・スプーンでいいから」

「もう、あとは自分で食べるっていったくせに」
「だって、わたし、まだ、治ってないんだもーん。はい、あーん」


    ◇  ◇  ◇


レイは、薬というものが本当に良く効く体質なのかも知れない。あるいは、こ
れまで、飲んだことがなかったのかもしれない。それで、特別に効いたのかも
知れない。レイは、その日の夕方には、すっかり元気になって・・・・少なく
とも風邪の症状は収まって、起き上がって来るようになった。ただ、やっぱり、
薬のせいもあるのか、からだは少しだるいようで、リビングでごろごろしてい
る。僕も、特にすることはないので、レイのとなりで、テレビを見ていた。

「シンジー、今日の夕ご飯なあに?」
「うん、そうだね。レイはなにが食べたい?」

「シンジの作るものならなんでも食べたい、わたし」
「もう、欲張りだな、レイは。それじゃあ、なんにもヒントにならないじゃな
いか」

毎回、夕食を考えるのは、実は、結構しんどいんだ。特に、今日は、レイの喜
ぶものを作ってあげたいし、僕は、さっきから、何を作ったらいいか、ずっと
考えてたのに。

「それじゃあ、レイがいままで食べた中で、一番、印象に残ってるたべものっ
て何?」
「そうね・・・・チョコレートパフェ・・・・かしら」

うっ、それは、ちょっと、夕食のおかずにはなりにくい・・・・もう!わざと
言ってるんだな!レイは。

「もう!だから、もっと、夕食のおかずになりそうなものでないの?」
「そうね、じゃあ、冷奴と法蓮草のおひたし」

それはまた、質素な・・・・でも、レイの思いでの料理・・・・僕は、いまだ
に、あの時のことを時々おもいだす。あの時のレイは、指をきっても、不安そ
うな表情もせず、平気な顔をしていたんだ。

「じゃあ、今日は、それね!・・・・そうだね、油っこいものより、いいかも
ね、病み上がりだし」
「うん、シンジ、ありがとう」

「う、うん・・・・それじゃあ、ちょっと、買いものして来るから・・・・す
ぐ、戻って来るから、お留守番しててくれる?」
「うん、わたし、まってるから・・・・シンジを」

「ごめんね、レイ」
「ばかね、シンジ・・・・」

うん、僕は、すこしおかしいかも知れない。でも、今日のレイからは、ホント
は片時も離れたくない。だって、今日のレイは・・・・なんだか、とっても・・・・
かわいい。いや、いつだって・・・・その・・・・そうなんだけど・・・・

「レイ!」

僕は、レイに抱きついた。レイは、すこし、驚いて僕を受け止める。そして、
僕の腕のなかで、小さくつぶやくように言う。

「ホント・・・・シンジは・・・・」
「うん、ばかなんだ、僕は」

「ううん・・・・素敵よ」

うん、そういってくれて、ありがとう。ホントにすぐ帰って来るから、だから・・・・

「うん、じゃあ、いってくるから」
「はやく、帰って来るのよ。わたし、まってるんだから!」

レイを放して、僕がそういうと、レイは、ちょっと拗ねたような声で、元気良
く、僕を送り出してくれた。


    ◇  ◇  ◇


「どう?おいしかった?」
「うん、とっても」

「そう、よかった。でも、もうひとつ用意してあるんだ」
「何?」

「うん、ちょっと待っててね」

レイのリクエストの精進料理のような夕食を食べ終わって、僕は、そういって、
台所へ向かった。冷凍庫から、さっき用意したものをとりだして、テーブルへ
戻る。

「はい、どうぞ、レイ」
「すごい!シンジ・・・・これ、作ったの?」

「う、うん。自己流だから自信ないけど・・・・それに、アイスクリームその
ものは買ってきたものだし」
「ううん、すごい、シンジ!ありがとう」

「うん、よろこんでくれて、嬉しいよ。ちょっと、食べてみて」
「うん!」

レイは、嬉しそうに返事をすると、僕がつくった・・・・チョコレートパフェ
を・・・・スプーンですくって、一口食べた。

「おいしい・・・・シンジ」
「ホ、ホント?よかった。本当に自信なかったんだ」

「ううん、そんなことない。ホントにおいしいもの」

よかった。レイは、本当においしそうに食べてくれる。僕も一口食べてみる。
うん、おいしい・・・・もちろん、マスターのチョコレートパフェには、かな
わないけど・・・・もちろん、アイスクリームそのものなんだから・・・・た
だ、かき混ぜて、ソフトにしただけだから・・・・そんなにマズイわけもない
んだけど・・・・うん、一応、チョコパフェっぽい。

「ホント!おいしいね、レイ」
「だから、そういってるじゃない。信じてなかったの?」

「そ、そういう意味じゃなくてさ」
「冗談よ・・・・うふふ・・・・ありがと、シンジ、わたしのわがままきいて
くれて」

「どう致しまして、これで、貸し一つだからね」
「もう・・・・でも、また作ってね」

僕が照れ隠しにそんな風に答えると、レイは拗ねたように、ホッペタをふくら
ましたが、僕が、見つめているのに気づくと、かわいらしく、元の雰囲気で、
そうリクエストした。僕は、黙って、うなずいた。

「じゃあ、僕は、食器を洗うからね。レイは、リビングで休んでてよ」
「ううん、ここで、シンジを見ていたい」

チョコレートパフェを食べ終わって、僕は食器を流しに運びながらレイにそう
いったのだが、レイは、テーブルから動こうとしない。僕は、食器を洗いなが
ら、なんだか見てられるのが気になって、レイが何を考えて僕を見てるのかを
想像して、なんだか、楽しくなってきちゃって、レイに話しかけた。

「フフフ・・・・そんなに、レイは、僕のお尻を見つめていたいの?」
「あら?いーっつも、わたしの後ろ姿みてると思ったら、シンジはそんなとこ
ばっかり見てたのね?・・・・エッチ!」

「僕は違うけどさ・・・僕は、レイの揺れる襟足とか、小さな背中とか、細い
足首とか・・・全体的なレイの雰囲気が綺麗だなって思って、見てるんだ」
「わたしだって・・・・うふふ」

「フフフ・・・お楽しみのところ悪いけど、もう、終わっちゃったよ」
「もう、もっと、ゆっくり洗ってくれなくちゃ、ダメじゃない」

「僕は、レイとちがって、のろまじゃないからね」
「ひどーい!・・・・うふふ・・・じゃあ、お茶いれて、機敏なシンジさんっ!」

「はいはい、かしこまりました、お嬢様っ」

実は、もうとっくに用意してあるんだけどね、レイ。紅茶をふたついれて、カ
ップをもって、僕は、振り返る。

「はい、いれたよ。リビング行こ!」
「わっ!ホントに・・・・早い・・・・シンジ?」

「フフフ、あとで、種明かししてあげるよ。さっ、リビングで飲もっ」
「うん」

僕は、カップをふたつ持ったまま、リビングに向かうと、レイも僕があらかじ
め全部用意していたことに気づいたみたいで、ニコニコしながら、僕について
来た。

「でもさ、今日は、驚いたよ。レイったら、『わたし死ぬの?』なんて、真剣
な表情で言うんだもん。笑っちゃった」
「もう!シンジの意地悪・・・・ホントに不安だったんだから」

「でも、風邪ぐらいじゃ死なないんだよ。苦しいけどね。わかっただろ?」
「うん・・・・でも、シンジがいなかったら、わたし、あのまま死んでたわ。
きっと」

「だから、そんなことはないんだってば。頑固だなあ、レイは」
「うふふ・・・・そうかもね」

レイは、ニコッと笑ってそういった後、急に真剣な顔つきで話し出した。

「でも、わたし、死ぬのがこわかったわ。前はこんなことなかったのに・・・・
ううん、前は、死ぬってどんなことか分からなかったのかもしれない」
「今は、わかったの?」

「ううん、わからないわ。でも・・・死んだら・・・もう、シンジに会えなく
なる・・・それは、分かるわ・・・だから、死ぬのがこわい」
「そうだね。僕も死ぬのはこわいよ。でも、人はいつか必ず、死ぬから・・・
考えてもしかたないよ・・・だから、精一杯、今を生きなきゃいけないんだ」

「そうね。シンジは強いわ」
「そんなことないよ。レイは、風邪ひいて、ちょっと、弱気になってるんだよ」

「そうね・・・・そうかもしれない」
「そうだよ。普段のレイはとっても強いもの」

「シンジ・・・・死なないでね」
「僕は、死なないよ。レイをまもるから・・・・レイより先には死なない」

「それは、ダメ!」
「どうしてさ?僕が先に死んだ方がいいの?」

「だって、わたしが先に死んだら、シンジ、泣くわ。わたしは、シンジの笑顔が
好きなのに」
「僕が先に死んだら、レイだって泣くだろ?」

「わたしは泣かない。強いもの。だから、笑顔で・・・・ふたりとも笑顔で・・・
だから、シンジは、わたしの胸の中で、幸せな顔で死ぬのよ!」
「・・・・泣くくせに」

「泣かないわよ・・・・もし、泣いたら、シンジのいうことをなんでも聞いて
あげるわ」
「・・・・レイ・・・わかっていってる?・・・・矛盾してるんだけど」

「もう!意地悪」
「ハハハ・・・・だって・・・・ハハハ・・・・」

レイも自分のいった矛盾に気づいたみたいで、真っ赤になって、下を向いた。
でも、そんな、レイが僕は、おかしくて・・・・かわいくて・・・・

「もう!わたしは、真剣にいってるのに!・・・・知らない」
「ごめんね・・・ハハハハ・・・だって、あんまり、真剣なのに・・・・ハハ
ハハ・・・・ごめん、許して・・・・ハハハハ」

「ダメ!許さない・・・・もう!シンジなんか、死んじゃえ!」

つづく

あとがき どうも、筆者です。 題名、なんにしようか考えてます。 「風邪」じゃあ、あまりにもストレートだし、せっかく、出だしでは、 なにが起こってるのか伏せてあるんだし・・・ なんかないかなと思うんですが、「死」じゃあ、あんまりですしね。 とにかく、UP するまでには、考えますが(・・・って、そりゃ、そうか) いやー、早く、学校はじまってくれないと、なかなか、話が書けないんですよね。 せっかく、筆者が休みなのに・・・・ 家で、三人の時の話ってので、パッとしたのが思いつかなくて、 ふたりっきりなら、なんとかなるかなと思って、 アスカ様をスキーに行かせてしまいました。 その、みんなで、スキーへ、あるいは、温泉へってのも 考えたのですが、それじゃあ、また、宴会になってしまいますしね。 まあ、その辺は、春休みかな? で、ふたりっきりの会話ってのは、いくつか思いつくんです。 そのうちのいくつかを書けるだけ書いてみました。 初期の頃は、すぐ黙り込んでしまうので、困ってたんですが、 最近は、レイがよく喋ってくれるし、シンジもそれなりに喋るようになったし、 ホント、このふたり、楽しいです。 しかし、パフェってのは、単なるアイスクリームだったんですね。 結構、単純な食いもんなんですよね、これが・・・・ さて、話の方ですが、 アスカ様がふたりをおいて、スキーへという状況はどんなんかな? と考えると、やっぱり、こうかな?という感じで、書き出しまして、 そうすると、レイはきっと初めてで、不安だろうなと思って、 でも、薬はきっと良く効くなと思って、 で、シンジは気合いいれて、料理を作るに違いない という感じで、書くと、こうなります。 ・・・・我ながら・・・・なんて・・・・ 最後、暗い話題で、アレかなとも思うんですが、 考え付いちゃったんだからしかたがありません。 筆者は、プロじゃありませんから、ストックしておくなんてことはしないんです。 アマチュアは、アマチュアらしく、常に、その時の全てを出して書くんです。 例え、それが、未完成でも・・・・思った通り書いて UP するんです。 それが、素人というものだと、思ってますから・・・・ 決して、開きなおりじゃありません。ホントにそう思うんです。 でね、前回の話(第14話「お散歩」)なんですけど、読み返してみて、 ・・・・気に入らないんです。 だから、そのうち、書き直したいと思ってます。 書き直しのつもりで、増刊号(第六話「青き衣」)を書いたんですが、 ぜんぜん、方向性が違っちゃいましたし・・・・ いろいろ、書き直したい部分は、これからもでてくると思います。 だから、そのうち、書き直します。 でも、それより、いろいろ新たに思いつくから、 そっちも楽しいから、書き直しは「レイが好き!」完結後かもしれません。 (って、それ、いつやねん?・・・・とうぶん、完結する予定なし) そんな感じで、これからも、書いていきます。 次回は、ふたりの初詣かな? それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。

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