レイが好き!
第16話
大スキ!


「レイ!いいかげんにしなよ。まだ怒ってるの?」
「そんなことないわ。怒ってなんかいないもの」

「じゃあ、なんで、そんな顔してんのさ」
「べつにいいじゃない。わたしがどんな顔してても・・・・もともと、こんな
顔なんだもの」

「やっぱり、怒ってるじゃないか」
「そんなことないわよ!シンジが悪いんじゃない」

つまり、怒ってるってことじゃないか。確かに僕が悪かったんだけど、すぐに、
ちゃんと謝ったじゃないか。それで、許してくれたじゃないか・・・・まあ、
そのあと、また、つっかかっちゃて、もう一辺、怒らせっちゃったのが、決定
的に僕が、悪かったんだけど・・・・でも、それだって、ちゃんと、謝ってる
んだから・・・・

「僕は、ちゃんと、謝ったじゃないか・・・・もう、すぐ拗ねるんだから」
「わたし、すぐ拗ねるんだもの。そういう女なんだもの!」

「わ、悪かったよ。だから、拗ねないでよ。僕が悪かったから、ごめん」
「シンジは別に悪くないわ。それに、謝ってもらったって、怒ってなんかいな
いんだから、関係ないわ」

「もう、だいだい、いつも強情なんだよ、レイは。怒ってるなら、怒ってるっ
ていえばいいじゃないか」
「なによ。シンジなんか、わたしの気持ちも知らないで!」

「なんだよ。レイこそ、僕の気持ちも知らないくせに。僕はレイのこと、いつ
も、考えてるのに」
「わたしは、シンジの気持ちなんて分かんないもの。シンジみたいに人のここ
ろを思いやるなんてできないもの!」

「もういいよ。勝手に拗ねてればいいだろ!さっ、掃除、つづけよ」
「ふん、知らない!」

とにかく、今日は大晦日で、僕達は朝から大掃除をはじめて、それぞれ、別の
ところを分担して、掃除していたのだが、昨日から僕達は顔をあわせるたびに、
こんなことをいいあって、仲直りできずにいた。だいたい、レイがおかしいん
だ。僕は、ちゃんと、謝ってるってのに・・・・

でも、ホントは僕が悪いんだ。最近、僕は、レイの挙げ足とりばっかりしてる
ような気がする・・・・言葉じりをつかまえて、からかってばかりいる。レイ
もたのしそうに、それに答える時もあるけど、ホントは傷ついていたんだ。レ
イは、ひとことひとことを、まだまだ、考えながら・・・・模索しながら・・・・
そして、素敵な女になろうとして、いってるんだ・・・・僕のために・・・・

『そんなの変だよ・・・・そんなの』

でも・・・・レイは、まだまだ、自分に自信がもてないのかもしれない。だか
ら、必死に自分を演じてるんだ。僕に好かれようと・・・・でも、おかしいよ、
そんなの。もっと、僕には、素直に接して欲しいよ。別に、そんなの演じなく
ても・・・・僕は・・・・

僕は、レイの方の見た。レイも僕の視線に気づいたみたいだが、フン!という
感じで、顔を背けて、自分の部屋に歩いていった・・・・ホント、もっと、素
直になってほしいのに・・・・

「たっだいまー。帰ったわよ」
「ア、アスカ。早かったんだね。もう、帰って来ちゃったの?」

僕が、そんなことを考えていると、突然、アスカがスキーから帰って来た。予
定では、あと、三日は、いってるはずだったのに・・・・どうしたんだろう?

「なによー、そのいい方。あんたたち、ふたりにしとくの心配で、早く帰って
来たってのに・・・・それに、シンジがいないとつまんないんだもの」
「え?」

それって・・・・もしかして・・・・アスカは・・・・

「からかいがいのあるおもちゃがいないとね。やっぱり、シンジを一日一回は
からかわないと、張りがでないのよね、一日が」

・・・・そういうことか・・・・まかさ、アスカが僕なんかをねえ・・・・と
にかく、僕の考えなんて気にもせず、アスカはうっぷんを晴らすようにつづけ
た。

「ヒカリなんて、鈴原にべったりで、アタシの相手なんて、全然してくれない
のよ」
「へー、でも、洞木さんらしいじゃない」

「そりゃー、そうがないわよ。あのふたりはいっつもそうだから・・・・でも、
だからって、なんで、アタシが相田なんかの相手しなきゃなんないのよ!」
「・・・・ケンスケだって、いい奴だよ」

「なによ、あんなカメラオタク!アタシの相手なんて百万年早いわよ!」
「そ、そう?」

ケンスケとアスカ・・・・そういえば、あんまり似合わないな・・・・ケンス
ケには悪いけど。

「そうよ!アタシの相手できる男なんて、この地上には存在しないかもね」
「・・・・」

「なに黙ってるのよ!」
「で、でも、それじゃあ、アスカ、どうするの?」

「しょーがないじゃない。世の中、バカばっかりなんだから!だいたい、だら
しなさすぎるのよ!男なんて・・・・せっかく、アタシがゲレンデに、この美
しい姿を現してやってるのに、誰も、声かけてこないのよ!」

そんなことを怒ってるのか、アスカは。でも、あんがい、綺麗な人には、声か
けづらいんだよね・・・・まあ、僕には、どんな人にでも、そんなことする勇
気、ないけど・・・・レイにだって、アスカが、ああ言ってくれなかったら・・・・

「アスカがあまりにも美人だから、声かけづらかったんだよ。きっと」
「な、なによ・・・突然。照れるじゃない」

「へー、珍しいね。照れるの?アスカが?」
「うっさいわね。アンタがそんなこというからでしょ!」

この調子で、レイのことも、同じように茶化してしまうから、怒られるんだな・・・・
全然、僕は、反省してないんだ・・・・でも・・・・ううん、やめなきゃ。少
なくとも、レイに対しては・・・・うん、もう、からかわない。

「なによ。どうしたの?シンジ、なんだか元気ないじゃない」
「そんなことないよ。べつに・・・・何でもない」

「ふーん・・・・で、レイは?」

アスカは、僕の顔をのぞき込んで、なにか少し考えたあと、そう僕にきいた。
僕は、表情をなるべくださないように、平静を崩さないようにして、それに答
えた。

「ああ、元気になって、今は、自分の部屋、掃除してるんじゃない?」
「ふーん・・・・そういうことか」

アスカは、あいかわらず、僕の顔をのぞき込みながら、そういった。僕って、
そんなに、顔にでやすいんだろうか?

「そういうことじゃ、ないよ!・・・そうだ、アスカも自分の部屋、掃除しな
よ。せっかく、帰って来たんだし・・・・アスカの部屋もまた、ちらかってる
んだろう?」
「なによ!アタシにやらせる気?」

「あたりまえじゃないか。アスカの部屋だろ?」
「そんなことより、シンジ!せっかく、アタシがレイとふたりっきりにさせて
あげたってのに、なにやってたのよ!・・・・隠したってダメよ。レイを怒ら
せたんでしょ?アンタ」

「わ、わかる?」
「わかるわよ。アタシをなめないでね!」

やっぱり、なんて僕は、顔にでやすいんだろう?それとも、アスカが凄いのか
な?

「う、うん。実は、困ってるんだ。僕はちゃんと謝ってるのに、許してくれな
くて」
「アンタばかあ?一度でダメなら、なんどでも謝るのよ。アンタ好きなんでし
ょ?レイのこと。許してもらいたいと思ってるんでしょ?」

「う、うん」
「じゃあ、こんなとこで、掃除なんてしてないで、さっさと、レイの部屋にい
って、許してくれるまで、謝ってくるのよ。ほらほら、はやく行きなさい!」

「う、うん・・・・ありがと、アスカ・・・・そうだね。謝って来るよ、もう
一度」
「がんばってね」

アスカは、優しく僕を見ながら、そういってくれた。うん、アスカに言われる
となんだか元気がでてくる。今度は、レイも許してくれそうな気がする。

・・・・しかし、アスカにはうまく逃げられてしまった。どうせ、後で、僕が
やらされるんだろうなあ・・・・掃除・・・・


    ◇  ◇  ◇


「あの・・・・レイ、ちょっといい?」

僕は、レイの部屋のドアの前で、中にいるレイに声をかけた。しかし、中から
の返事は帰ってこない。

「・・・・入るよ、レイ」

僕は、レイの返事を待たずに、レイの部屋に入っていった。レイは、ベッドの
上にうつぶせになって、横になってる。僕は、ベッドの横に座って、そして、
手をついて謝る。

「ごめん、レイ。もう二度と、レイのことからかったり、茶化したりしない。
僕は・・・・気づかなかったんだ、レイがホントは、まだ、自分に自信がもて
なくて、いつも不安だったってこと。だから、あんなこと、いってしまって・・・・
本当に、ごめん、レイ」

レイは、まだ、何も答えてくれない。僕は、おそるおそる顔をあげて、レイの
方をみた。レイは、ベッドにうつぶせになって・・・・・涙?

「レイ・・・・どうしたの?泣いてるの?」
「ごめんなさい、シンジ・・・・わたし・・・・嫌な女だわ・・・・シンジは、
こんな子嫌いになったでしょ?」

レイは、枕に顔をうずめたまま、泣きながらそういった。僕が、レイを嫌いに
なるなんて・・・・そんなこと・・・・

「ばかだなあ、そんなことあるわけないじゃないか。だから、泣かなくてもい
いんだよ。嫌いになんてならないよ。それに、本当に僕が悪かったんだから・・・・」
「ううん、シンジは悪くないわ。いつも、わたしのこと考えて、愛情をこめて、
からかってくれるのに・・・・わたし、ばかみたいに、ひとりで拗ねちゃって・・・」

「うん・・・・でも、拗ねてるレイも可愛かったよ」
「もう・・・・そんなことばっかり、いうんだから・・・・うふふ」

ホント、僕は、全然反省してないや。でも、レイは、笑ってくれる。よかった。
本当によかった。

「やっと、笑ってくれたね。ホントは、笑顔のレイが一番好きなんだ、僕は」
「うん、わたしも・・・・だから、困ってるシンジは・・・・ごめんね、シン
ジ」

レイは、ようやく、僕の方へ向けて、微笑みながら僕に謝った。謝るのは、僕
の方なのに・・・・でも、この笑顔を・・・・レイの微笑みをまた、見ること
ができて・・・・本当に、よかった。

「うん、もう、いいよ、そんなの。ありがとう、レイ」
「うん、シンジこそ」

「もう、レイをからかったりしないからね」
「あら?じゃあ、わたしは、がんばって、シンジをからかうようにするわ」

そういって、レイはいつもの・・・・悪戯そうな瞳をきらきらとさせて、僕を
見つめた。僕もレイを見つめる。

「うふふ・・・・仕返ししてあげなきゃ」
「もう・・・・許してくれたんじゃなかったの?」

「ダメ!・・・・それとこれとは別なの」
「そんなあ」

「・・・・いいわ。じゃあ、かわりに、シンジ、わたしのお願いきいてくれる?」
「うん・・・・きいてあげる。なに?」

「あててみて・・・・正解だったら、許してあげる」

そういって、レイは、僕の目の前で、じっと、僕の目を見た後、ゆっくり目を
閉じた。クスッ、なんて、わかりやすい答え・・・・そんなことしなくたって、
いいのに・・・・レイって、なんて・・・・

「じゃあ、自信ないけど、あってたら、ホントに許してね」
「もう・・・・は・や・く・!」

「うん」

僕は、レイのすこし、拗ねてとがった・・・・でもかわいい・・・・口に唇を
重ねたあと、ゆっくりと、名残惜しく、僕はレイを放して、レイに答えがあっ
てるかどうか確かめた。

「どう?あってた?」
「さあ?・・・・どうかしらね」

「そ、そんなのズルイよ!あってたら、許してくれるっていったのに・・・・」
「うふふ・・・教えない。仕返しよ!」

「もう!ホントに、レイって・・・・」
「そう、ズルイ女なの」

「ううん・・・・かわいいよ」

「・・・・ばかねっ」
「ううん、ホントにそう思う。好きだよ、レイ」

「うん、わたしも、とっても、とっても、とっても、大スキよ。シンジ!」

レイは、ベッドから、僕の方にダイブして、僕の胸に抱きついて来た。僕は、
驚いて、レイを抱き止めようとしたが、そのまま、後ろにつき飛ばされてしま
った。

「ごめん、シンジ。いたかった?」
「う、うん。でも、大丈夫。レイは軽いから」

「うふふ・・・・ありがと」
「う、うん・・・・そうだ、アスカが帰って来たよ。僕達のことが心配で早く
帰って来てくれたんだって」

「うん、さっき・・・・知ってる・・・・シンジが励まされてたもの」
「う、うん。聞こえてたんだ」

「うん、だから・・・・わたし、アスカみたいになりたい。ううん、きっと、
アスカ以上の女になるんだもの。だから・・・・」

そうだね。僕は、アスカに頼りすぎかもしれない。僕がアスカに相談してるの
って、きっと、レイはいい気持ちではみてないんだろう。僕なんか、レイがほ
かの男と話をしれるだけでも、嫌なんだから・・・・僕って、なんて・・・・
ごめんね、レイ・・・・でも、僕は、明るく、レイに答える。

「うん・・・・でも、それって、むずかしいよ。アスカって、あんなんなん
だよ?」
「うふふ・・・・そうね」

「ちょーっと、アンタたち!いつまでも、戻ってこないと思ったら、アタシの
悪口いってたわけ?せっかく、仲裁にきてあげたのに!」
「ア、アスカ!・・・ごめん。でも、そういうわけじゃ、ないんだ。その、ア
スカみたいになりたいね。っていってたんだ」

「さっきのセリフのどこがそんな褒め言葉だったのよ!いい?罰として、アン
タ達で、アタシの部屋、掃除すんのよ!わかった?」
「えー!ひどいよ。そんなの」

「なによ!シンジ、アタシにそんなこといえる立場?」
「う、うん。さっきは、ありがとう・・・・でも!・・」

「わたしからも、ありがとう、シンジを助けてくれて。だから、お礼にわたし
たちも、手伝うから、一緒に掃除しましょ?少しは、掃除するくせつけなきゃ。
ダメよ、アスカも」
「分かったわよ。レイがそういうなら、アタシもやってあげなくわないわよ。
でも、教えてよね!アタシ、掃除なんてしたことないんだから」

アスカは、レイに優しくそういわれると、頬を少し赤くして、そんな風に答え
た。それにしても、いままで、一度も掃除したことないって・・・・アスカっ
て、いったい?・・・・アスカが自分の部屋に向かった後、レイは小声で僕に
話かけて来た。

「うふふっ、うまくいったわね。シンジ」
「う、うん・・・・でも、なんで、アスカは、レイのいうことはあんなに素直
にきくんだろう?」

「だって、わたしはアスカのお母さんなんだものっ!」
「そ、そうだったね」

「・・・・きっと、慣れてないのよ・・・・あんな風にいわれるの」
「う、うん・・・・そうだね」

うん、アスカもずっと、一人で暮らしてきて・・・・僕はいたけど、弟みたい
なものだったし・・・・ああいう風に、厳しく、そして、優しく、いわれるの
はレイにだけかもしれない。でも、レイって・・・・ホント、アスカより、す
ごい女かもしれない・・・・

「すごいね、レイ」
「そうよ。凄いの、わたし」

「うふふ・・・好きになったでしょ?シンジ」
「うん、大スキ!」

つづく

あとがき どうも、筆者です。 いやー、凄いですね。レイって、ホント、強い子だわ。 あんな風に、泣いてたのに、すぐ立ち直って、あんな風になるなんて。(筆者も驚き!) ほんと、「大スキ!」 でも、アスカが帰って来てくれてホントによかった。 実は、アスカ抜きで話を一回書いたんです。 そしたら、いつまでたっても、仲直りしないんです。 いくら、レイが突然、表情をころころかえるといっても、 仲直りさせるには、ちょっと・・・・いろいろ、むづかしかったんです。 で、アスカ様にすがってしまったわけです。 ホント、書きなおす前は、凄く、真剣に、レイが怒っちゃうんだもん。 それなのに、シンジはあいかわらず、余計なことばっかりいうし。 こまったもんです。このふたり。(いつまでたっても終わらんー・・・・って感じで) でも、ホント、仲直りしてよかった。 そもそも、なんで、喧嘩させたのかがよくわかんないんですよね。 なんとなく、書き出したら、前回のをひきずってて、 こんなのになっちゃいました。 というわけで、まだ、年内なわけです。 まあ、書きはじめたのが年内でしたし ・・・・さて、何時頃だったでしょう?・・・ヒント「大スキ!」 (こんな単語で、著作権もなにも、ないですよね?) で、次回は、たぶん、三人で初詣・・・・かな? それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。

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