レイが好き!
第27話
雛祭り


「じゃ、ちょっと、買いもの行って来るからね」
「待って、わたしも、行くわ。準備、手伝うのは、いいのよね?アスカ」

朝、スーパーが開く時間になって、僕が準備のための買いものに出かけようと
すると、レイが僕を呼びとめて、ついて来るといいだした。レイは、そういい
ながら、浮き浮きと楽しそうに、僕の腕にしがみき、アスカの方を向いて、ア
スカの様子を伺う。アスカは、半ば、呆れたように僕達を見ながら、あきらめ
たような口調で、答える。

「ま、そうね。そのくらいは、勘弁してあげるわ。その代わり、パーティーが
始まったら、逃さないからね」
「うふふ、わかったわ。じゃ、シンジ、行きましょ」

昨日になって、急遽決まった雛祭りパーティーを、女の子のお祭りとしって、
レイは、うきうきと楽しみにしているようだ。さっそく、買いものと聞いて、
僕の腕を引っ張って、歩き出す。しかし・・・アスカとミサトさんがそろう
パーティーだ。無事ですむはずが・・・

はぁ・・・。でも、とにかく、レイとパーティーの準備が出来るんだから、そ
れは、楽しいことにはかわりないけど・・・うん、今を楽しまなきゃね。僕は、
レイの方を向いて、レイを見つめる。

「ありがとう、レイ」
「馬鹿ね、シンジ。わたしが、勝手に手伝うのよ。きっと、あしでまといにな
るだけなんだから!」

「そんなことないよ。だって・・・レイと買いものするのって・・・たのしい
から」
「うふふっ、ありがと」

僕が、ちょっと照れながら、レイにそういうと、レイも、少し、恥ずかしそう
に、頬をピンクに染めて、僕に礼をいった。

「う、うん。じゃあ、急がないと、パーティーに間に合わないからね」
「そうね」

そうは、いうものの、やっぱり、僕達は、腕を組んで、なんとなく、今日は、
いつもよりも、ゆっくりと歩いて、スーパーまでの短い道のりを、お互いの温
もりを感じながら・・・その・・・僕は、肘にあたるレイの・・・

「レ、レイ・・・あのさ」
「なぁに?シンジ」

「もしもさ、僕達が、本当に、兄弟だったら、どう思う?」
「そうね。わたしは、嬉しいわ」

「え?」
「だって、兄弟なら、シンジとわたしの絆は絶対に切れないもの・・・」

「そうだね・・・でも・・・」
「でも?」

「で、でも、兄弟じゃなくたって・・・」
「うふふっ、そんなの、あ・た・り・ま・え・!」

「ははは、そうだよね」
「そうよ!」

でも、それじゃあ、兄弟だった場合のメリット、なくなちゃうよ。レイ。そう
だね。レイは、本当の家族が欲しいのかもしれない・・・血の繋がった家族が・・・
でも・・・僕が!・・・僕は・・・いつまでも、レイの本当の家族でいたいか
ら・・・・だから、レイと・・・いつか・・・

「レ、レイ!」
「なぁに?シンジ」

「あの・・・」
「そうね。スーパーに、着いちゃったわね。ごめんなさい。じゃ、わたし、カ
ゴ持つからね」

そういうと、レイは、僕の腕から、手を放し、僕から離れて、入口に積み重な
っているスーパーのカゴをひとつ、手に取った。

「え?・・そんなの、僕が持つよ」
「うふふっ、ありがと。じゃ、お願いね」

そういうと、レイは、悪戯そうに、真っ赤な瞳をキラキラと輝かせながら、僕
の目の前に、カゴを差し出した。僕が、カゴを受け取ると、再び、僕の腕に、
両手で、しがみついて、意地悪そうな顔で、僕をのぞき込む。

「うふふっ、シンジは、わたしがカゴ持つより、この方がいいんでしょう?」
「そ、そんなこと・・・」

「ない?」
「・・・・」

「肘が気持いいでしょ?シンジ」
「な、なに、いってんだよ。レイ」

「うふふっ」

だ、誰に、教わったんだ?いったい・・・また、アスカだなぁ!

でも、確かに・・・その・・・


    ◇  ◇  ◇


とにかく、僕達は、なんとか、買いものを終えて、マンションへかえると、既
に、ミサトさんと洞木さんが、来ていた。僕達が、台所へ、荷物を運んでいる
と、リビングの方から、アスカが顔を覗かせて、声をかけた。

「ちょっとぉ!ずいぶん、遅かったじゃない。もう、はじまってるわよ。レイ、
早く、こっちに、いらっしゃい」
「うふふっ、分ってるわ。アスカ」

レイは、にっこりとアスカにそう答えたが、リビングに行こうとする気配をみ
せない。

「あの、いいの?いかなくて、レイ」
「シンジは、わたしに、早く行って欲しいの?」

そういうと、レイは、僕に目を見つめる。

「そ、そんなことないけど・・・でも・・・」
「うふふっ、用事が済んだら、すぐ行くわ」

「よ、用事って?」
「当ててみて」

レイは、僕の目を見つめながら、悪戯そうな口調で、そういったあと、目を閉
じた。あの・・・レイ?今日は、いったい、どうしたの?

「はやく!シンジ」

ふふふ、でも、綺麗だね。やっぱり、レイは、可愛いよ。こうして、プッとほ
っぺたを膨らまして、拗ねてる姿も・・・・そうだね。今日は、なんて、どう
でも、いいよね。いつだって、僕達は・・・

僕は、レイの腕を掴んで、レイを僕の方に引き寄せて・・・


    ◇  ◇  ◇


「ちょっとぉ、何やってたのよ、レイ」
「うふふ、ごめんなさい。アスカ」

「また、碇君といちゃいちゃしてたんでしょう?」
「こんにちわ、ヒカリ。ミサトさんも、こんにちわ」

「まったく、シンちゃんもやるもんねぇ、可愛い顔して。あんた達、どこらへ
んまでいってんの?」
「あら?ずーっと、この街にいるわよ。わたしたち」

「・・・レイ。あんた、とぼけかたが、可愛すぎるわよ。今日は、とことん飲
んでもらわなきゃね」
「うふふっ」

「で、ヒカリの方は、どのへんまで、いってるわけ?」
「わ、私?・・・私は・・・そんなの、恥ずかしくって、いえるわけないじゃ
ないのぉ!」

「あぁーあ、これは、ヒカリにも、酔いつぶれてもらわないとね。今日は」
「ミサトぉ、アンタ、ホントに、教師なの?」

「なによぉ!免状みせましょうか?アスカ」
「歳、バレるわよ。いいの?」

「と、とにかく、今日は、ぷわぁあっと、いくのよ。ぷわぁあっと!さっ、乾
杯するわよ」
「うまく逃げたわね・・・ま、いいわ。アンタは、ミサトだもんね」

「なによぉ!それ、どういう意味?アスカ」
「そういう意味じゃない!なんか、文句あんの?」

「「なによ、やる気?」」

「ふたりとも」

「「なによ、レイ!」」

「乾杯の用意できたわ」

僕が、とりあえず、4人分のグラスを持って、いくと、なにやら、アスカとミ
サトさんが・・・まあ、予想通りだが・・・そういう状態だった。僕が、ビー
ルをグラスについで、みんなの前に、配ると、レイが、冷静に、二人を収めて、
無事に、乾杯が行われた。

「碇君は、飲まないの?」
「うん、今日は、僕は、みんなの世話に徹することになってるんだ」

「ふーん、そうなの。で、今は、何、つくってんの?」
「雛祭りだから、とりあえず、チラシ寿司をつくろうと思うんだけど・・・で
も、おつまみには、あんまり、合わないような気がして、どうしようかなと思
って・・・」

「でも、いいんじゃない?とりあえず、ご飯、食べておいた方が、酔わないだ
ろうし、それに、他にも、おつまみ風のものも、作るんでしょ?」
「う、うん。それは、もちろん、アスカに、言われてるからね」

「私も、手伝ってあげられればいいんだけどね」
「い、いいんだよ。今日は、女の子の日なんだし」

「そうね、私なんかより、もっと、手伝いたい人もいるしね」
「ほ、洞木さん」

「私なんかと話してて、いいの?さっきから、ずっと、こっちを見てるみたい
よ」
「そ、そんな、べつに・・・」

洞木さんにそういわれて、僕は、慌てて、レイの方を見た。レイは、確かに、
こっちを見ていた。僕が、顔をむけると、レイは、ぷいと横をむいて、ビールを
一気に、飲み干した。

「レイ・・・」
「どうするの?碇君」

「ど、どうするって・・・僕は、別に・・どうするもなにも」
「そうよね。なにもしてないもんね。私たち」

「そ、そうだよ。なに、いってんだよ。洞木さん」
「レイには、あとで、話しておいてあげるわ。じゃ、料理がんばってね」

「う、うん・・ありがと」

僕は、すこし、胸に引っかかりを残したまま、台所へ戻って、料理にとりかか
った。だって、レイだって、分ってるはずじゃないか。僕の気持ちは・・・そ
れに、洞木さんには、トウジだっているし・・・レイがなに考えてるのか・・・
なんとなく・・・わかるような気もするけど・・・


    ◇  ◇  ◇


「あの、これ、一応、最後の料理だけど・・」
「あ、そう、ご苦労さま。じゃあ、シンジも座って、飲みなさいよ」

「う、うん」

僕は、最後の料理を、運んび終わって、アスカにそういわれて、レイに目をや
った。レイは、一瞬、僕と目があって、そして、ぷいっと、そっぽを向く・・・
まだ、怒ってるのかな?僕は、レイのとなりに、腰をおろす。

「あの・・・怒ってるの?レイ」
「・・・・何を?」

「え?別に、怒ってないなら、いいけど」
「怒ってるわ」

「・・・・ごめん」
「謝る必要あると、思うの?シンジは」

「ない・・・ような気もするけど・・・」
「なら、なんで、謝るの?」

「・・・・」

わからないよ、そんなの。でも、レイが不快に思うなら、僕は、謝るしか、な
いじゃないか。だって・・・僕は、レイを不愉快にしたくないんだから・・・
僕は、レイのことが・・・

「ごめんなさい、シンジ」

レイの目から、涙が流れ落ちる・・・なぜ?

「ちょーっと、アンタ達!いきなり、なに、二人で、しんみりと、囁き合って
るのよ!」
「そうよ!よくないわよ。あなたたち!」

「碇君。そういうことは、ふたりっきりになって、やることよ」
「う、うん」

「じゃ、さっさと、レイをつれて、出ていきなさい」
「え?」

「ふたりっきりにさせてあげるって、いってんのよ!そんなのも分んないの?」
「う、うん。じゃあ、わるいけど・・・」

「悪いのよ!だから、さっさと戻って来なさいよ!」
「わかったよ、アスカ。ありがとう、みんな」

僕は、泣いているレイをつれて、リビングを離れた。


    ◇  ◇  ◇


僕は、レイの肩を抱きながら、僕の部屋へ連れていった。今は、めったに見せ
なくなった何もない表情の写真が壁にかかっている。僕は、その真っ赤な瞳を
見つめて、そして、僕が抱えているレイを見つめて、そして、少し、考えた。

レイは、僕の腕の中で、黙って、うつむいている。僕は、そのまま、レイと一
緒に、ベッドに腰をおろしながら、レイに、話しかける。

「やっぱり、僕は、謝るべきだと思うよ。ごめん。レイ」
「ううん、そうじゃないわ」

「わかってる。でも、結果的に、レイを悲しませるなら、僕が悪いんだ」
「優しいわね、シンジ・・・でも、それじゃあ、ダメだから・・・」

「なぜ?」
「だって・・・だって、わたしは・・・」

「いいじゃないか、それが、レイなんだから」
「でも・・・」

「僕は、レイが好きなんだよ」
「うん」

「レイみたいな子を好きになった僕を、レイは嫌いになる?」
「うん」

「どうして?」
「だって・・・わたしは」

「レイだろ?」
「うん」

分るんだよ。嫉妬なんて、したいと思ってするものじゃないんだかね。コント
ロールできるものは感情じゃないものね。だから、それで、自己嫌悪に陥る時
だって、あるよ。そんなの、当たり前だよ。でもね。その嫉妬は、僕のことを
好きだっていうことの証拠なんだよね。だから、僕は・・・

「ありがとう、レイ」
「うん」

「はははは、レイ、さっきから、うん、ばっかりだね」
「うん」

「・・・ごめん」
「ううん、ありがと、シンジ」

「うん」
「今度は、シンジの番ね」

「なにが?」
「うん、っていったじゃない、うふふっ」

「ははは、ようやく、笑ってくれたね。レイ。確かに、さっきまでのレイが、
僕みたいだったんだよ。似て来たね。僕に」
「だって、兄弟かもしれないんだものっ!」

「そんなに、兄弟になりたいの?僕と。それじゃあ、お兄さんって呼んでごら
ん」
「あら?シンジは、弟よ。そんなの決まってるわ」

「なんでさ?」
「だって・・・うふふっ」

「どーせ、僕は、お子様ですよだ」
「だって、シンジは、わたしがまもるんだものっ」

「はいはい、じゃあ、お願いしますね。お姉様」
「うふふふふ。やっぱり、兄弟は嫌ね」

「ははは、どうしたの?今度は」
「だって、シンジには、わたしより、もっと凄いお姉さんがいるもの」

「あっはっはっは、そうだね。確かに、レイは、かなわないかもしれないね」
「だから、わたしは、シンジの・・・・さて、なにに、なりたいでしょう?」

レイは、突然、明るく、悪戯そうな声で、そういいながら、僕の目を見つめた。

「なに?あてるの?僕が?」
「そうよ。あたったら、ご褒美あげるわ」

でも、そんなの・・・

「じゃあ、お母さん」
「はずれ!それは、前に、嫌っていったわ」

「それじゃあ、娘、なんて、どう?」
「もう!シンジ、わざと、とぼけてるのね?」

「だ、だって・・・」
「シンジの意地悪っ!」

「ふふふ、いつものレイに戻ったみたいだね」
「もう!嫌いよ。シンジなんか!」

レイは、ぷっと、頬を膨らますと、ぷいっと、そっぽを向いた。僕は、レイの
ほっそりとした、小さな後ろ姿を見つめる。ホント、こういう仕草が可愛くて、
なんか、つい、わざと、意地悪したくなっちゃうんだよね。それに、やっぱり、
照れ臭いよ。

でもね。僕だって、そうなれたらなと思うんだよ、レイ・・・

「・・・僕も、なって欲しいからね。レイ」
「それじゃあ、ご褒美あげるわ」

レイは、ほっぺを膨らませたまま、こっちに振り返る。

「いいの?もらっても」
「だって、正解だもの。わたしは、シンジがなってほしいモノになりたいんだ
から」

「そ、そう?」
「そうなの!」

そういうと、レイは、僕の唇に、かるく、唇を触れた。

「あ、ありがと」
「じゃ、ちゃんと、わたしに、それ、ならせてね、シンジ」

「え?ああ、そ、それにね・・・」
「なって、ほしいのよね?」

「う、うん。出来れば・・・」
「じゃ、よろしくね。シンジ」

「う、うん」


    ◇  ◇  ◇


「あの・・ただいま」
「なに、やってたのよ。おっそいじゃない」

「まあ、いいじゃないの、アスカ。さあさあ、シンちゃんも一緒に、ぷわぁあっと、
いきましょ。ぷわぁあっとね」

僕達が、リビングに戻ると、いきなり、こんな出迎えを受けて、ビールを渡されて、
乾杯が始まった。僕は、レイの方をちらっと見る。
レイは、さっきまでの余韻が残ってるのか、少し、ぼっとした様子で、
頬をすこし、赤く染めて、片方の手で、僕の袖を掴んでいる。

「レイ?乾杯するよ」
「え?う、うん。そうね」

「はい、これ、レイの」
「ありがとう、シンジ」

「はいはい、いつまでやってんのよ!さぁ、乾杯するわよ」
「ご、ごめん。それじゃあ・・・」

「「「「「かんぱーい」」」」」

はあ、まだ、日は高いというのに、いつまで、つづくのかな?このパーティー。
僕は、ビールを一口飲んで、レイをちらっと、見る。レイと目が合う。

「うふふっ、きっと、朝までよ」
「そうだろうね。たぶん」

つづく

あとがき どうも、筆者です。 大変、長らくお待たせしました。 27話「雛祭り」をお届けしました。 と、いうか、全然、雛祭りじゃないですねぇ・・ これじゃあ、単なる、飲み会だよぉ! ま、まあ、いいじゃありませんか。 だいたい、雛祭りなんて、とっくに終わってるんだし・・・(をいをい!) あぁ、しかし、今回の話って、なんなんだろう? 主題は、いったいなんなの? うーむ、わけわからん話を書いてしまった・・・・ しかも、結局、ゲンドウ氏がお雛様を送って来た理由が・・・(あぁ、どうしよう?) ま、次回以降に、なんとか、するでしょう、たぶん、おそらく、もしかすると。 で、話の方ですが・・・ まず、買いものにいって、兄弟だったらという話をして、 で、雛祭りパーティーがはじまって、 シンジとヒカリが話してるのをみて、レイが嫉妬して、 レイとシンジがふたりっきりになって、 そんで、リビングに戻って来て、乾杯と・・・ ・・・うーむ、やっぱり、わけわからん。 でも、まあ、筆者の書くものですから、きっと、こんなもんです。 さて、次回はどうしましょうか? これから、考えます。 それで、多分、今後、「レイが好き!」は、隔週連載になると思います。 「未来少女レイ」も隔週連載にして、余裕があれば、「嗚呼アスカ様!」と 「アタシはアスカよ!」のどっちかを書くという具合で、書いていこうかと 思ってます。 やはり、初期の頃のあんなペースは長続きしませんでした。 ごめんなさい。皆様。 でも、一生懸命、いつまでも、書き続けますので、 これからも、応援・・・いえ、暖かく、見守り続けて戴くだけで、結構ですから、 末長く、おつきあい下さい。 よろしく、お願いします。 それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。

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