レイが好き!
第34話
手拭い


    ピッ

「あれ?」

    ピッ、ピッ

「おかしいな?」

「どうしたの?シンジ」
「いや、それが・・・」

今日は、僕がお風呂当番で、いつものように、湯船を洗って、温度設定を確認し
て、給湯のボタンを押したんだけど・・・

なかなか僕が風呂場から出てこないのを不審そうに、レイが覗き込む。

「なにがあったの?」
「いや、別に、なんにもないんだけど・・・風呂釜、壊れちゃったのかな?」

「でも、昨日は、別になんともなかったわよ?」
「うん、だから・・・変だなと思うんだけど・・・どうしちゃったんだろ?」

    ピッ

僕は、もう一度、給湯のボタンを押して確認する。

「ね?」
「ホント、おかしいわね」

    ピッ

今度は、レイが押してみる。やはり、なにも起こらない。

「やっぱり、壊れちゃったみたいだね?で、どうする?レイ」
「どうするって?」

「今日、お風呂、入りたい?」
「でも、壊れちゃったんでしょ?今日は、もう、遅いし、修理の人も、来てくれ
ないんじゃない?」

レイは、どうするの?という不思議そうな顔を僕に向ける。

「うん、修理は、明日電話して、来てもらうしかないけど。でも、お風呂なら、
別に、銭湯っていう手もあるよ」
「あぁ!そっかぁ!シンジ、あったまいい!」

「べ、別に、そんなの感心するほどのことじゃないと、思うけど?」
「もう!じゃあ、気がつかなかったわたしが、まるで、バカみたいじゃない!」

「あはは、そうは、いわないけどさ」
「でも、そう思ってるでしょ?コイツは、なんにも知らないって!」

レイは、可愛いらしい口をツンと尖らせながら、でも、ちょっと、ホントに、拗
ねたように、そして、ちょっと、寂しそうに・・・

「じゃ、レイは、いかないんだ?僕は、ひとりで、いってこよおかなぁ?」

僕は、それに気づかないふりをして、軽い口調でそういって、風呂場を出る。

「まってよ、シンジ。わたしも、いくんだから!」

レイは、慌てたように、僕の後を追いかけて、出てくる。

「ふふふ、それじゃ、寒くないように、上着をとってきて、僕は、洗面道具を準
備しておくからね」

見計らって、僕は、レイとすれ違うように、風呂場に戻りながら、レイにささや
く。


    ◇  ◇  ◇


「もうすぐ、クリスマスね」

にぎやかな商店街を通り抜けながら、レイが呟く。

「そうだね」

僕は、そっと、レイの方を見て、静かにそれに肯く。レイは、何か思い出し笑い
を浮かべて、そして、呟く。

「うふふっ、2回目のクリスマス」
「うん。2回目」

「あら?でも、シンジにとっては、17回目でしょ?」
「え?ああ・・・うん、でも、2回目だよ」

「うふふっ、そうね」
「うん」

僕は、レイの方を向いて、きっぱりと応える。

そう、2回目だから・・・僕にとっても・・・

僕の腕を掴んで、僕の隣を歩くレイは、1回目の時とは、別人みたいに、見える
けど、でも・・・僕は・・・それがやっぱり、レイだと思うよ。

「今年も、よろしくね。レイ」
「なにを?」

「ふふふ、忘れたとは言わせないよ」
「もう!なによぉ?ちゃんと、いって!」

「あはは、じゃあ・・・マフラー」
「え?・・・も、もう!シンジの意地悪!」

「あはは、だって、レイが、もっと上手につくるから、絶対に外でするなってい
うから、外にしてくの我慢してるんだもん。今年くれないなら・・・」

僕が、にやっと笑って、そういうと、レイは、キッと僕を睨み付ける。でも、僕
が、にっこり微笑みを返すと、レイは、頬をほんのりとピンクにして、僕の腕に
しがみつくように俯く。

「頑張ってる、最中なんだから・・・」
「ふふふ、ありがとう。レイ」

「だから・・・」

レイは、手に持っていたタオルを掴むと、クッと僕の顔を見上げて・・・

「うわっ!な、なにさ?レイ」
「うふふっ、だから、今日のところは、その代わり!」

「で、でも、く、くるしいから・・ちょっと・・・」
「うふふっ、それは、意地悪の仕返しよ!・・さっ、これで、どう?」

レイは、絞めていた手をゆるめると、そっと、僕の襟元に巻いたタオルをマフラ
ー風に絡めて、手を放す。

「う、うん。風がはいってこないから、いいね」
「カッコいいわよ。シンジ」

「そ、そう?」
「とっても似合うわ」

「あ、ありがと・・・」

僕は、ちょっと、照れながら、そう答える。レイが、なんか、急にそんな風に、
真面目に僕のことをカッコいいだなんて・・・そんなこと、いわれたのって・・・
あれ?もしかして、初めて?じゃない?

・・・・でも!

「ふふふ、僕には、なんでも似合うんだよ」
「もう!自信過剰!」

「まーね!」
「・・・・」

えへんと、威張りかえる僕を、レイは、ジトッと、見る。そして、クスッとひと
つ笑って、僕の腕にもう一度、強くしがみつく。

「うふふっ、カッコいー!シンジっ!」


    ◇  ◇  ◇


「まったぁ?」
「う、うん。でも、僕も今出たところだよ」

「よかった・・・」

そういいながら、レイは、僕の手を握る。そして、小さく笑みを浮かべて、僕の
顔を見る。

「さっ、早く、帰って、おこたで、暖まろっ!シンジ」
「うん、そうだね。湯冷めして風邪引かないうちに、帰らないとね」

「うん!」

レイは、そう元気良く返事をすると、僕の手を握ったまま、歩き出す。あたりは、
もうすっかり、暗くなってて、来るときあんなに賑やかだった商店街も、大半の
店がしまって、シーンとしている。

街の明かりも消えて、僕は、空を見上げて呟く

「冬の澄んだ空気は、夜空の星を綺麗に見せるね」
「ふふっ、シンジ、気障!」

「もう!たまには、いいじゃないか。さっきは、カッコイイっていった癖に」
「あら?そんなこといったっけ?わたし」

「ふーん、じゃあ、あれは、僕の空耳だったんだ?」
「うふふっ、そうかもね」

「ちぇっ、どーせ、僕は、カッコイイって程の男じゃないからね」
「うふふっ」

レイは、拗ねた振りをする僕の腕を下に引いた。

「なにさ。レイ」

    チュッ

「カッコいいわよ。冷たいお手手の、シンジさんっ!」

つづく

あとがき ども、筆者です。 さて、開き直り短編集「レイが好き!」復活第一弾です。 いやぁ、こういう次回へ響かない話って、いい!! と、いうわけで、今回のお題は・・・知ってるかな?みんな(^^; ・・・えとね、おーむかしの、フォークソングです。 ちなみに、一応、筆者が何にも見ないで唯一弾き語り(?)できる歌なんですよ。 で、手拭いの色は、とーぜん、赤なんですけど、 ちょっと・・それだと・・・ねぇ?アスカのイメージカラーだし・・・ と、いうわけで、色は伏せました!(・・・なんのことだろ?(笑)) で、クリスマスシーズンですねぇ(^-^)/ クリスマス特集というか、クリスマス関係話かこうかとも思うんですが、 まあ、いまの執筆スピードで、次回がクリスマスに間に合うかというと・・・ と、いうわけで、さてさて、どーなるでしょう? ・・・寂しいクリスマスの話なら、あるいは(<ヲイ!) んじゃ、そゆことで・・・ それでは、 もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。

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