本作は、梶原一騎原作「愛と誠」の(特に結末に関する)ネタバレを含みます。ご注意を
レイが好き!
第37話
愛と誠
「おはよ、シンジ」
「おはよう、アスカ・・・・・・・・どうしたの?」
「朝から何よ?その驚愕の目は?」
「だって・・・」
「あら!おはよっ、アスカ。今日って、もしかして、雨降るの?」
「・・・」
今日の朝食当番のレイは出来あがった料理をテーブルに運びながら、驚いたように
アスカに問いかける。
僕は、言葉につまるアスカにスクリと笑いを漏らしながら、立ちあがり、レイを手伝う。
「もう、レイは、ひどいなぁ。アスカだって、たまには、早起きする日だってあるさ」
「うふふっ、でも、今日は日曜日なのに、ねっ、アスカ」
「・・・わかった。もう一辺寝る!」
むっとした顔で、なげ捨てるように、そういって席を立ちかけたアスカをレイが
楽しそうになだめてる。
僕は、残った料理を次々にテーブルへと運びながら、
そんな珍しい日曜の朝の光景を見ていた。
いいな、レイの本当に楽しそうな笑顔。
アスカも表面上、むっとした顔を作っているけど、でも、レイとの久しぶりでの
じゃれあいみたいな、軽い調子のやり取り。
仕事も一段落したらしく、ようやく、ゆっくりできる休日に、早起きしてきた
アスカの気持ちがなんとなく分かるような気がする。
きっと、レイもそんなアスカを分かるから、
だから、こうして、本当に楽しくじゃれあえるのかな?
「ちょっと、シンジ!なに、ニヤニヤしながら、みてんのよ!
朝ご飯並べおわったんなら、とっとと、報告して、とめなさいよね。
アンタがとめなきゃ、レイのおしゃべり、とまんないじゃないの!」
「うふふっ、それじゃ、いただきましょっか。ねっ、アスカっ」
「うっさいわね。あとで、見てらっしゃいよ、レイ。
たっぷりお返ししてあげるからね」
捨て台詞のようにそういうアスカに、僕とレイはにっこりと微笑みをなげて、
そして、久しぶりの3人そろった朝食をとった。
◇ ◇ ◇
「ところでさ、こんなの業者の人からもらったけど、アンタたち、行く?」
「なに?」
「うーんとねぇ、なんか、大昔の映画のリバイバルみたいよ」
「ふーん」
朝食の後片付けをしてリビングへ入ると、アスカが映画の招待券を2枚差し出した。
僕は、それを受け取って、まじまじと眺める。
なんか・・・濃そうな・・・映画・・・その・・・イラストだけだけど・・・
「アスカ、行かないの?」
「アタシは行かないわよ。こんなクっサそうなの。アタシはもっと、こう・・・
アクションで、どたばたで、コメディーが入って・・・・んで、ついでに、
ちょっと、ロマンチックで・・・っていのが、好きだわ」
・・・なんか、それって、あんまり・・・一体どんな映画?
「と、とにかく、これ、僕とレイに見にいけってこと?」
「そうよ。べつに、嫌なら、捨てるだけだけど」
「どうする?レイ」
「そうねぇ・・・どうしよっかぁ?シンジ」
「う、うん・・・レイが行きたいなら・・・」
「うふふっ、わたしも、シンジが行くっていうなら・・・」
「僕はレイが・・・」
「わたしはシンジが・・・」
そういって、レイは、僕を見つめる。
僕を見つめてるレイの真っ赤な瞳には、レイを見てる僕の顔があって、
そのレイの瞳の中の僕の瞳には、レイの可愛い笑顔が映ってて・・・
「「どうしよっかぁ・・・」」
僕とレイは、お互いにおでこをくっつけあって、つぶやきあう。
「「・・・・」」
パンッ!
突然、アスカが僕達の顔をすぐわきで手を撃ち合わせる。
その音に、僕達は驚いて、アスカの方をみる。
「決定!アンタたちは、これから、とっとと支度をして、この古臭い映画を見に、
一刻も早く、アタシの目の前から消えうせること!」
「「・・・はい」」
◇ ◇ ◇
「はは、ちょっと、さっきは、まずかったね」
「ふふふふ、そうね」
そういって、レイは僕の腕にしがみつくように、腕をまわして、僕に笑いかける。
僕は、さっきのアスカの目の前でしてしまった状況を、改めて客観的に思いかえして、
今更ながらに、照れてしまい。ごまかすように映画のチケットを確認する。
「愛と誠か・・・」
「うふふ、凄そうな題名ね」
「う、うん・・凄いっていうか、なんていうか・・・」
この額に傷のあるいかにも不良という感じの少年。
そして、いかにも清廉華麗ないいとこのお嬢様風のこの少女。
それで・・・
『愛は平和ではない。愛は闘いである』
・・・うーん、このコピー・・・
「まっ、まあ、とにかく、その昔、大ヒットした映画だそうだから、
一辺ぐらい、見とくのも悪くはないよね」
「うふふっ、そうね」
◇ ◇ ◇
「・・・うーん」
「・・・」
僕は、うなりながら、映画館を出た。
レイは、僕の後から、無言でついてくる。
「うーん・・・とりあえず、喫茶店でも・・・」
「・・・」
僕達は、ほぼ無言のまま、映画館の近くの喫茶店にはいる。
注文をする時に、レイの様子が変なのに・・・僕も変と言えば変だけど・・・
気付いて、問いかける。
「どうしたの?レイ」
「・・・うん」
・・・泣いてる?
そうか・・・一途な無償の愛というのは、あんなにクサく演じても、やっぱり、
感激なのかな・・・レイにとっては・・
確かに、早乙女愛の自己犠牲の報われることのない愛・・・それをあだでかえす
『いらない人間』大賀誠・・・でも、本当はその大不良のこころの中にも早乙女愛への
・・・しかし・・・ふたりがそれを認めあえた時には、すでに・・・
それまで、映画の中の台詞回しや設定の時代錯誤さなんかに、うなりっぱなしだった
僕も、レイの涙を見て、ようやく、映画が訴えている真実について、考えはじめた。
そして、やはり、あのラストシーンは・・・
「なんで、殺す必要があったのかな?」
僕は、ぼそりとつぶやく。
「え?」
レイが、そのつぶやきに反応して顔を上げる。
「だから、なんで、ハッピーエンドで、めでたしめでたしじゃだめだったのかなぁと
おもってね」
「ハッピーエンド・・・じゃないの?あれ」
「う、うん、まあ、あれもハッピーエンドのひとつの形かもしれないけど・・・
たしかに、あのまま生きてるよりは・・・生きてたら、色々と法的にも罰せられる
だろうし・・・やっぱり、ああしかないのかなぁ・・・」
レイは、僕の台詞をキョトンとしながら、聞いている。
「死んだの?誰が?」
「だから、大賀誠だけど?」
「え?」
「あれ?」
まさか・・・だって、明らかに・・・・あれぇ?
「もしかして、今まで気付いてなかったとか?」
「なんで?なんで、彼が死ぬの?」
・・・・うーむ、どういう見方をしてたんだろう?レイって・・・
「だって、砂土谷にさされたじゃない。それで、警察の鑑識かなんかが、
凶器の刃物に残った後を見て、刺された者は助からないとかなんとか・・・」
「ダメ!」
「だめっていったって・・・」
「だって、だって・・せっかく、ふたりが分かりあえたのに・・・」
「そ、そうだけど・・・」
そんなこといったって・・・どうにも・・・それに映画なんだし・・
「分かんないわよ!だって、最後まで、生きて、立って、あるいてたもの!」
レイが突然、強い口調で叫ぶようにいう。
「でも、最後、目、閉じたよ?」
「あ、あれは、気持ちよかったのよ!最愛の人の胸に抱かれたら、誰だって、
目ぐらい閉じるもの!」
「まあ、確かに、ぼかされていはいたけどね。その辺は」
「そうよ!きっと、早乙女愛の手厚い看護で大賀誠は一命をとりとめるのよ!
絶対そう!」
「・・・でもさぁ・・・あれって、助かったら、助かったで、その後、絶対、
刑務所いきでしょ?・・・幸せになっていけるのかなぁ?・・・あの後」
「幸せよ!」
レイは、きっぱりとそう断言する。
うーん、そういう幸せもアリといえば・・・アリだけど・・・
現実って、そういう・・・・うーん、そういえば、そもそも映画なんだけど・・・
「ふふふ、そういえば、レイ、泣きやんだね?」
「うんっ!あの後のふたりの幸せを考えたら楽しくなってきちゃった」
「すっごい、波乱に満ちた人生だろうね。あの後も」
「そう。結婚しても、騒ぎばっかり起こす乱暴な旦那さんを優しく理解して、
支えて行くのよ。きっと」
「うーん、なんか、早乙女さん、それで、幸せなの?って感じだけどね」
「だって、愛してるんだから。それでいいんだもーん。ねっ、シンジ」
「え?・・・あ、はい。たぶん」
「もう!たぶんじゃないの!」
「あはは、でも、やっぱり、僕は、あの後、大賀誠は死んだと思うんだけどね」
「も、もう!せっかく、人が楽しく想像してるのに!」
「現実を見なさいっ、レイさん」
「もう」
もうの3連発で、すっかり、可愛らしく頬を膨らしながらレイがすねる。
「ごめん、映画の受けとめかたはいろいろだからね。
レイがそう思うなら、それが正しいよね。だから、ごめん」
僕は、そんなレイに神妙に謝る。
すねてるだけのレイなら、いつものことだけど・・・なんだか、
やっぱり、今日のレイは、少し違うような気がして・・・
さっきの涙が効いてるのかな・・・・
「でもさぁ、岩清水君って、哀れだよねぇ?」
「あら?でも、命を投げ出してもいいぐらい好きな人がいるっていうのは、
幸せだわ」
「まったく、レイにかかったら、みんな幸せになっちゃうよ」
「いいじゃない?それで」
「そうかなあ・・・だって、完全な片想いなんだよ?」
「愛は闘いなのよっ。彼なら、そのうち、大賀誠を打ち負かすすべをみつけるわ」
「はははは、一体、レイって、どっちの味方なのさ?」
「わたしは、愛するもののみかたなのよ」
レイは、そういって、にっこりと微笑む。
つまり、全部、自分の投影ということなのかな?
まあ・・・つまり・・・
「ところでさ、僕は死ねないからね」
「うん、シンジは死なないわ。わたしが守るもの」
「違うよ」
「なにが?」
いつもの台詞を否定されて、不思議そうにレイは、僕を見つめる。
僕は、すぅっとひとつ息を吸いこんで、静かにささやく。
「綾波レイ。君のために、僕は死なない」
にっこりと微笑む僕をレイは涙目で見つめる。
「ふふっ、先に死んだら、絶対泣くからね、レイは」
「泣いたりなんかしないもーん」
つづく
あとがき
はい、筆者です。
はい、途中、訳分かんなくなりました。
・・・・うーむ。
あらゆる物語は、その後ってのが気になるよね?
シンデレラとかもさ。
で、例えば、シンデレラで言えば・・・口説きたいねぇ、その後のシンデレラ(笑)
「ふふっ、王子様との何不自由のない生活・・・君はそれで幸せかい?」(にやり)
とか思うわけですけど・・・・(いきなり、あとがき脱線だな)
とゆわけで、もとに戻して(?)
ちなみに私が梶原一騎氏の某名作漫画を拝読したのは、
もう、かれこれ7、8年程前になります。
んで、それ以来、ほとんど思い出すこともなかったんだけど・・・
なんでしょうねぇ?
ふと、頭の中で渦を巻くのですよ。
「高原嬢のフルネームはなんだったか?」
という疑問が、です。(みんなもあるよね!こういうこと!・・・ない?(汗))
で、最近、そういう疑問は、仕事中であろうがなんであろうが、
(というか、主に仕事中、行き詰まった時なんですけど・・・・)
調べることにしてます。
とりあえず、某チャットあたりに書くと答えがかえってくるんですよねぇ・・・
ども、ありがと >某Sとし様
で、WEB上にそういうコンテンツがそれなりにあるらしいということで、
早速、いろいろと、seekしてみまして・・・
いやぁ、楽しいねぇ、WEBって。
ちなみに、当初目的のコンテンツは結局眺める程度で、連載漫画とか、
読みふけってしまうあたり・・・(仕事中?)
で、今回のお話は、つまり、それだけ(おいおい)
ぢゃねぇ
それでは、
もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、
そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、
また、次回、お会いしましょう。
つづきを読む
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