レイが好き! 第40話 渦巻き

「うわわわぁ!!!!!」 思わず、叫んでしまった自分の声に、自分自身が驚いてしまう。 僕の腕の中の僕の顔がじっと僕を見つめる。 瞳の奥でふらふらと動く不安を、なんとなく読み取ってしまう。 冷静にならなきゃ。僕は、もう一度、腕の中の自分自身をギュッと 抱きしめる。 「シンジ。痛い」 「え?あ、ごめん」 冷静にならなきゃと頭では思っても、やはり、動転していたみたいだ。 慌てて、僕は、腕の力を緩める。 「ご、ごめん」 「ううん、平気。でも・・・」 「でも?」 「・・・わたしって、小さい」 レイは、そう小さく呟いて、僕から視線をそらす。 小さい?なにが?少しの間判らなかった。 でも、つまり・・・僕がレイになってて、そして、僕が抱きしめている この腕の中の僕が・・・ 「・・・レイ、だよね?」 コクンと僕の腕の中で、僕が肯く。 ◇ ◇ ◇ 冷静にまとめるとこうだ。 階段から僕とレイが絡み合いながら落ちた。 それがきっかけなのかどうかは、はっきりとは判らないが、 その結果、僕とレイの身体が入れ替わってしまったのだ。 僕たちは、判然としないまま、とにかく、落ちたことによる 怪我などがないことを確認して・・・幸いにも、どちらも、軽い打ち身 程度ですんだようだ・・・から、部屋へ戻った。 ◇ ◇ ◇ 「ダメ。ここにいて、シンジ」 レイをソファーに座らせて、僕は、落ち着こうとお茶を入れるためキッチンへ 向かおうとすると、レイが僕の手首を掴んで呟く。 僕は、レイに引かれて、振り向く。レイの瞳から涙がこぼれる。 泣きだしたいのは、僕も同じだけど、そうなんだ。 「ごめん」 そんなんだ。僕は、静かに謝って、そして、レイの隣に腰を下ろす。 「でも、一緒だからね。レイ」 「うん、ごめん、シンジ」 不安で、壊れてしまいそうなレイ。久しぶりに見るレイのあやうい表情だ。 僕は、そっと腕を回して、レイを引き寄せる。 レイは、僕のひざの上に倒れ込むようにして、むせび泣く。 僕のひざ、本当はレイのひざなんだけど、そして、そこに本当は僕の頭が 泣きじゃくりながらうずまる。なんだか、不思議な光景なんだけど、 でも、僕は、そんな僕の頭をそっと撫でる。 落ち着くまで。レイが落ち着くまで。僕も冷静にならなきゃ。 それまで、僕は、優しくレイの頭をさすり続ける。 僕の頭。柔かい髪なんだな、僕って。 レイの頭をさすりながら、自分の頬にかかる髪を左手で摘まんでみる。 レイの髪。そっか・・・こっちがいつもの感触だもんな。 僕は、再び僕のひざの上に視線をうつす。 こんな角度から見下ろす自分の頭ってのも、なんかへんな感じだ。 でも、本来はレイの、小さなひざの上にのっかると、僕って そんなに華奢じゃないんだな。 『わたしって、小さい』 さっきのレイの呟き。 そっか、自分自身って、わかんないもんなんだな。 でもね。 僕は、僕にしがみつくレイを見つめる。 「小さいんだよ・・・僕のレイは、本当に」 「・・・そうね・・」 ◇ ◇ ◇ それから、どれくらい時間が経過しただろうか? お互いにそのまま、時がとまったように身動きひとつせず、時がたった。 僕は、その間、なんとなく、レイを眺めて、そして、 考えつづけた。 なんで、こんなことになってしまったのか? いくら考えても分かりっこない。 でも、その疑問が、とにかく頭を渦巻く。 もちろん、いくら考えたって、わかるわけもないということも、 なんとなく判りはするから、もっと、建設的なことを考えなくちゃ とも思うが、でも、こんな状況になったら、誰だって、 そんなに冷静にはなれないもんだと思う。 ただ、とにかく安心させなきゃ、落ち着かせなきゃ、 このヒトは、僕が守るんだ。 そんな思いだけが、なんとか、僕をその思考の渦巻きの中から 引き上げる。 とにかく、現状は、理解できなくても認識して、 そして、どうすればいいのかを考える。 考えたって、どうしていいのか判らないという、昔の僕のいつもの 答えしか浮かばないのだけれど、 でも、僕がどうにかしなきゃいけないんだという思いが、 もう一度、思考へと僕を戻す。 元に戻るためになにをすればいいか? そんなものは、わかるはずもない。 まずは、こうなった原因を調べなくちゃいけない。 でも、どうやって? もし、ずっと、このままだったら? このまま、僕はレイとして、レイは僕として、残りの人生を送るのか? ・・・ふたりで? レイにはなんて声をかければいいんだろうか? 僕が思考の渦巻きにとらわれている。 不意に僕の視線の先の頭が動いて、こちらを見上げる。
つづく

あとがき はい、筆者です。 大変ながらくお待たせしております。 つづきものなので、なんとか早く続きを書かなきゃと思ってはいたのですが、 なかなか暇が出来ません。 ・・というか、暇になると、他のことしちゃうというか(^^; ゲームとか(爆) いや、まじで、やばいなと思ってましてね。 だって、はやく、この話終わっとかないと、また飽きちゃうもの。 んで、「やーめった」って、夢オチやったら、やっぱ、怒るでしょ?(自爆) とゆわけで、かけたところから、次々に公開しときます。 無茶苦茶短いですが、次回はもっと早くに公開されるでしょうから。 よしっ!次回予告! 題名は、たぶん『ふたりだから』 んで、始めの台詞が『落ち着いた?レイ』です。(きっぱり) とゆわけで それでは もし、あなたがこの話を気に入ってくれて、 そして、もしかして、つづきを読んで下さるとして、 また、次回、お会いしましょう。

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